41・一度王都に帰ります
「ギャ、誕生日おめでとう」
俺は十時のおやつにケーキを出してやる。
「マサル、あたいは自分の誕生日知らないぞ、なぜ知っている」
「ああ、ギャの付けている首輪に書いてある」
首輪の誕生日は二月一日だ。
「これは奴隷の首輪だ、誕生日が書かれているのはおかしい」
「前にギャの魔力操作で外しただろ、ギャ専用の首輪なんだ。誕生日くらい書いてあっても良いんじゃないか」
「そうか、専用なのか」
ギャは早くケーキが食べたい為か、それ以上深くは聞いて来なかった。
ギャの付けている首輪は、見た目は微妙に違うが、奴隷の首輪そっくりに作られている。
形も微妙に違うが、材質の違いか輝きがまったく違う。
だからボイルさんも気づいたのだろう。
ギャの本名らしき名前と生年月日も掘られていて、まるで身分証明書のようだ。
ギャの生まれた国が何処だかわからないが、そこには奴隷の首輪が無く、身分証明の首輪がたまたまこの形だったのかもしれない。
ギャは今日から九歳だ。
俺も十五歳の時にサメル村に来たが、すでに十六歳になっている。
俺は誕生日の十月十日の夕食を豪華にしたが、ギャは何も気づかなかった。
「マサル、最近は店に行かないが大丈夫なのか」
ケーキを食べながらギャが聞いてくる。
ボイルさんが帰ってからは、薬屋と食堂には朝と夕方に顔を出すだけにしている。
「ああ、もう村の人に任せても大丈夫だな」
薬と食べ物なので、万が一が有ってはいけない、朝晩だけは顔を出しているが、問題は無かった。
「それじゃあ何をする」
「そうだな、兎狩りにでも行くか」
冬でも兎は捕まえられる。
出来るだけ多くの魔獣兎が欲しい。
弁当を持って出かけようとしたとき。
「マサルさんはいますか」
「おお いるぞ」
ロマンヌさんが家に訪ねてきた。
「少しよろしいですか」
「ええ、かまいませんよ」
しょうがない、今日の兎狩りは中止だな。
「父から話を聞きました」
「どんな話ですか」
「今度ズンダダ森にバルノタイザン商会の小屋を作る話です」
「ええ、この前ズンダダ森に行ったら良質の薬草が沢山ありましたからね、姉貴も薬師なのでバルノタイザン商会で製薬会社を作るんじゃないですか」
「ええ、それは良いのですが、小屋を作る職人や大工が大勢村に来るとききました」
「はい、バルノタイザンの屋敷と使用人小屋に泊めるつもりですが」
「それで十分なのですか」
「そう言われると、職人や大工だけなら十分ですが、資材を運んでくる人達の泊まる所が無いですね」
「そうです、それにこれからは村に来る人が増えます。その為には宿が必要です」
「そうですが、俺に何をしろと」
「マサルさんが宿を立てください、資金は当然バルノタイザン商会もちです。マサルさんがムサイさんに言えば、何とかなるのでしょ」
「あのー、貧乏貴族の経営するバルノタイザン商会にそんなお金は無いと思うのですが」
「マサル、けちけちするな、マサルが出せばいい」
「ギャ、無理なことを言うな。ロマンヌさん、材料代だけでは駄目ですか。建てるのは村人がやると言うことで」
「手間賃はどうするのですか」
「ロマンヌさん、それは村が出すと言うことで。今回の話、後々は村にお金が入りますよ」
こうして話がまとまり、村に宿が建つことになったが、宿の資材は俺がだけで出せる訳がない。
これは一度王都に帰って家族に相談する必要があるな。
「ギャ、王都に帰るぞ」
「寒い中の旅だぞ、あたいは嫌だ」
「なら、おいていくぞ、お前ひとりで村で生活できるのか」
「・・・・・・難しい二択だな」
結局ギャは王都に一緒に行くことになった。
「それではロマンヌさん、一度王都に行ってきます」
ロマンヌさんに挨拶をして村を出る。
ギャは毛布にくるまってロバの引く荷車に乗せている。
王都までの食事もすべて異次元鞄に用意した。
来る時のようなことが無ければ五日、無理すれば四日で王都に帰れるだろう。
サメル村は標高が高く寒い。
王都に向かって坂を下りて行けば、だんだんと温かくなる。
雪が積もることも無いので、旅は順調に進み四日目の夜には王都に着くことが出来た。
「マサル、これがマサルの家か」
ギャは俺の家を見て驚いている。
シルバー爵とはいえ、降爵 の時にスチール爵級の屋敷に越している。
貴族としてあまりにみすぼらしくて驚いているのか、貴族の屋敷を知らずスチールクラスでも立派に見えたのか、どっちなんだ。
「マサル、奴隷商にいた奴隷から聞いた貴族の屋敷と違うな」
どうやらみすぼらしさに驚いたようだ。
「見た目は関係ないぞ、要は中身だ」
「オー」
そして屋敷に入ると。
「マサル、中もすごいな」
ギャよ、中身とは見た目の事じゃないぞ。本質とは何か、どうやって教えれば良いんだ。
とにかく帰ってきた、そして気づく。
家族にギャをどう説明するんだ。




