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40・ボイルさん達が帰っていきます

「マサル、寝坊したぞ」

「しょうがないだろ、昨日帰ってきたのは日が暮れてから三時間後だ」


「そうだったな、ギャはマサルにおぶられ寝ていたから着いたのに気づかなかった」

「ああ、そのままベッドに寝かせたからな」


「それでマサル今日はどうする、マサルが狩った猪をもらえないのか」

「ああ、必要な肉は解体の時にもらったろ、あれで十分だ」


「何だ、欲が無いな、毛皮ももらえるはずだ」

「それは駄目だ、あくまで俺たちは連れて行ってもらった立場だ」


「そうか、それならしょうがないな」

「ああ」

しかし、よく寝た。

まあ寝坊と言っても昼まで寝ていたわけではない。


すぐに朝食を取って、村の中心にある薬屋に向かうことにした。


「マサル、今日くらいゆっくり休め」

「そうも言ってられないな、色々とやることが有る」


「なんだ」

「一応、村長に報告だな」

ズンダダ森の魔獣猪が多いのは、魔獣率が一定以上有るからだと教えないと。

取りすぎて魔獣率が下がれば、いずれ魔獣猪がいなくなる。


それと、ボイルさんの件だ。

スターマイラル家としてズンダダの森に森小屋を作りたいと言っていた。

これって、下手をしたらサメル村をスターマイラル家に取られてしまう。


サメル村の管理者は俺のバルノタイザン家だが、魔獣狩りは村に任せバルノタイザン家では表向きタッチしていない。

あくまで、村で飼っているロバをバルノタイザン家が管理しているだけだ。


王都からロバを取りに行く時に日常品を運んだり、要請が有る時はそれなりの対応しているが、目だったことをしていない。

プラチナ爵のスターマイラル家に言われればシルバー爵のバルノタイザン家では従うしかない。


そんな心配をしながら薬屋に着く。


「取りあえず、薬屋の準備だな」

「おー、と言っても、バイトが終わらせているぞ」


「おはようございます店長、出過ぎたことをしましたか」

バイトの女の子のカルが聞いてきた。


「いや、どんどんやってくれ、あくまでも俺は仮に此処をやっているだけだからな」

「そうだ、マサルは旅の冒険者者だ、何時までもいると思うな」


「そうでした、いずれは私達だけで薬屋をやるんですよね」

「ああ、だが君たちは村の薬屋としては十分な力を持っている、俺は安心して出ていけるぞ」

そう言ってもカルは心配そうだ。


「そうよカルちゃん、私もいるし大丈夫よ」

後から入ったバイトのマイさんだ。

三十半ばのマイさんも、年下の俺の話をよく聞いてくれたおかげで、薬草採取や薬作りが出来るようになっている。

それに難しい薬は王都で姉さんや俺が作って村に届けるつもりだ。


「マサル、バイトとの話が終わったか、そろそろ村長の家に行くぞ」

「そうだな、カイちゃんとマイさん、村長のところへ行ってくるので店を頼むぞ」


「「はい」」


俺とギャが村長のところへ行くと、村長の家の前にボイルさんの馬車が止まっている。


「マサル、どうも村長の家にボイルさんがいるようだぞ、出るまで待つか」

「いや、大丈夫だろ。入るぞ」

俺は、玄関のドアをノックする。


「どちら様でしょうか」

この声は爺だな。


「マサルです。村長にお話が有ってきました」

「そうですか、どうぞお入りください」


俺とギャは爺に案内され村長の部屋に向かう。

村長の家は村役場を兼ねており、案内された部屋は村役場の村長室だった。


「おはようございます」

「おはこんにちは」


『おはよう』と言うには遅いが『今日は』と言うには早い時間だ。

ギャは迷うと新しい言葉を作ってしまう。

後で注意しておこう。


「おはようマサル君、ちょうどボイル様からの話が終わった所だ」

「えっと、ボイルさん、森の小屋の話、もうしたんですか」


「ああ、マサル君。一応話だけだ、決定権はマサル君のお父さんにあるからな、これから王都に帰って話に行くつもりだ」

「これからって、今は冬ですよ、大丈夫ですか」


「大丈夫だ、此処から次の村までは下りだから、私の馬と馬車なら半日で着くからな」

あのぼろい馬車だろ、大丈夫か。


「マサル、やっぱりそうだ、ボイルさんの馬は魔獣馬だ。きっと隠しているぞ」

ギャは馬車でなく馬に興味を持った。


「マサル君、ギャちゃんは属性:闇なのか」

生きている獣を判定できるのは属性:闇だけだ。

「違います、今のはあてずっぽうです。しいて言えばギャは感が良いですね」


「そうか、だが言っておくがこの魔獣馬を手に入れたのはたまたまだからな」

「そうですね、属性:闇で魔獣の判定が出来るボイルさんが、たまたま手に入れたんですね」


「マサル、言い方が疑っている。ボイルさんは噓つきでは無さそうだ、本当にたまたま手に入れたんだろう」

ギャに言われてしまう。ギャってまだまだ世間を知らないからな。


「それじゃあマサル君、また会うことが有りそうだな」

「ええ、出来れば避けたいですけどね」

今後のボイルさんの相手は、同級生でもあった上の兄のタカシに任せることにしよう。


ボイルさん達が村長の家を出て行ったので俺はズンダダ森の事を話していく。


「それでマサル様は、そのことを報告されるのですか」

「一応、親父に話す。後の判断は親父次第だな」


「そうですか、スターマイラル家がズンダダ森に小屋を作る話はどうなるとお考えですか」

「親父が反対することは出来ないだろう。ボイルさんはスターマイラル家だとわからないようにすると言っているが難しいと思う。」


「そうすると、何かしらの偽装が必要ではありませんか」

「そうだな、・・・・・・」

何かいい偽装方法はないか。


「なあマサル。ズンダダ森には良い薬草が沢山あるのだろ。ボイルさんの家では大きな薬屋をやっていないのか」

「スターマイラル家の経営する薬屋は聞いたことが無いが、そうか、確かに表向きは薬草採取の小屋にすればいいな、これなら姉貴に一枚かませて、うちも儲けられる」


おーいい考えだ、俺が来て十か月、薬屋を作り薬師も育てている。

ズンダダの森に行ったらよい薬草が有ったと。

バルノタイザン商会が薬草を扱うのなら小屋を作るのもおかしくない。


「村長、これからムサイさんのところへ行って話をしてきます」

「ああ」

村長はよくわからなかったようだが、ギャの発案は使える。


ムサイさんに話をして、親父宛てに俺は手紙を書いた。


これで表向きはバルノタイザン商会の薬草採取、裏ではボイルさんの魔獣牛探しの計画が進むことになった。

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