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4・ギャと旅をする

王都を出て三日目。

結局ギャと一緒に村を目指していた。


ギャのために買った服は異次元鞄に仕舞い、ギャをロバの引く荷車に乗せている。


「ご主人様、もう歩ける」

「ああ、そうだな、だが俺に付いて来れないよな、だから荷車に乗っていろ」


奴隷商の前で死にかけたとは思えないほど回復している。

それにはちゃんと理由がある。


「ご主人様の作った料理を食べると元気になるね」


当たり前だ、俺の料理は栄養満点のうえ、材料に薬草も使っている。

姉が薬師の勉強をした時の本を読んで、薬草や薬の作り方を覚えた。


薬に、まあ今回は料理だが俺の魔力を注ぎ込めば、料理もポーションになる。

奴隷商の前で飲ませた薬もポーションだ。

元気になってもらわねば困る。


元気になったギャはやたら話しかけてくる。


「ねえ、ご主人様は『貧乏貴族』なのに沢山お金持っているだよね、どうして」

「奴隷の分際で聞くのか」


「うん、だって、やっぱり、ご主人様が金持ちのほうが奴隷の待遇が良くなるでしょ」

「金だけの問題か」


「ご主人様はいい人だから、あとはお金だね」

「そうか、まあどうやって稼いだくらいは、話してやるよ。道中暇だからな」


それから俺はギャに八歳から今までどうやって稼いできたか話し始めた。


俺は物心ついた時には、自分の魔力操作力が特大で属性が光なのに気づいた。

これは別に特別なことではなく、たいていの人が自分の操作力と属性に四つか五つで気が付く。


八歳でわざわざ魔力検査があるのは、確認するための儀式でしかない。


たいていの子供、それも魔力が大や特大だと自慢するのだが、俺は属性:光なので人には言わないでいた。


ちなみにだが、属性は、光 闇 炎 水 風 土の六属性があり、魔力操作力は 極小 小 中の小 中 中の大 大 特大の七段階に分かれている。


「なあ、ギャ。魔力のこと知っているか」

「あたりまえ、魔力はこの世に満ち溢れているんだよね」


「まあそんな感じだな」

この世界の大気 水 鉱物など全てに魔力が含まれている。

魔力操作力は人の回り中に満ちている魔力の使える力量のことだ。


魔力は降り注ぐ日の光に交じっているとか、大いなる海が魔力の貯蔵庫だとか、吹き出す溶岩こそ魔力そのものだとか言う人達がいるが、多分全部正解だろう。

それくらい、この世界は魔力に満ちている。


そして俺は表向き『魔力操作力:極小 属性:無』だ。

それは、魔力検査の日、風邪をひき目まいで階段から落ちてしまったからだ。

醜い風邪と階段から落ちたダメージが大きかったが、魔力検査に行くため、自分に『ヒール』をかけた。

その時魔力操作力を使い果たしてしまったのだ。


結果、検査用の魔道具に付けられて水晶は、電池切れまじかの懐中電灯みたいにボワーと弱く光っただけだった。


炎なら赤、水なら青、風なら緑色、土なら茶色に光る。

光は透明の輝く光だ。

闇なら水晶が黒くくすんでしまう。

くすむので闇だけは操作力の大小の判断はできない。


俺が光らせた水晶は、光が弱すぎて色を見分けられない。

判別できないので属性は無にされた。


属性が無なのより魔力操作力:極小がまずかった。


これで奨学金は貰えない。当然王都学校へも行けない。まともな商売も無理だ。

父と母はどうしたらいいかわからず悩んでいたが、その結果俺は好きにすることができた。


判定は極小の無だが実際は特大の光だ。

そこで俺は定番の冒険者の登録をする。

まあ常時依頼しかやらないので登録しなくても良いのだが、何事も恰好からだ。


常時依頼と言えば薬草採取だ。

王都の周りでも低級薬草の採取はできる。


だが俺は違う。

自分にバフをかけ、遠くの森や山まで採取に行った。

低級薬草でも品質で値段が変わる。

王都の周りは取りつくされ、あまりいい薬草はない。

俺の薬草は最高品質のものだ。

あまり最高品質ばかりでは怪しまれるので、王都の周りでとった薬草も混ぜてある。


そして、たまたま見つけたと言って、めったに取れない高級薬草も取ってきた。

姉が薬師の勉強をした時の本を読んでおいて良かった。


八歳の子供が最高品質や高級薬草をあまりに取ってくるので冒険者ギルドも変に思っているが、実際俺が取ってくる薬草は薬師に喜ばれている。

変に疑って採取を辞められるのが嫌だったのだろう、ギルドは俺に何も言ってこなかった。


下の兄に剣を教わっていたので、薬草採取のために森に行くと、ついでに兎を狩った。


下の兄は魔力検査で『魔力操作力:大 属性:炎』だった。

炎は戦いに向いた属性であり、父は王都学校の騎士科に入れることにした。

そのために、町の道場に通わせたのだ。


そこで俺は、下の兄から剣の稽古をつけてもらうようお願いした。

下の兄も、道場で覚えたことを俺に教えることでより深く理解できると喜んで俺に教えてくれた。

やはり剣は基礎が大事だ、自己流ではすぐに限界になってしまう。


母の経営する食堂にも肉を納めたが、ほとんどを肉屋に売った。

こうしてまずは小銭を稼ぐことができた。


そして大きく稼げるようになったのは、古道具屋で、今使っている鞄と剣を見つけてからだ。


「おじさん、なんでこの鞄と剣、安いの」

店の奥に置いてある鞄と剣が異様に安いのだ。


「見てわかるだろ、ただのボロボロの鞄と剣だぞ、次の棚卸で捨てるつもりだ」

「そうかな、俺にはかっこよく見えるぞ、うーん、これしか持ってないけど売ってくれ」

薬草と肉を売って稼いだ金を見せる。


「まあ、捨てるよりましか。いいぞ」

こうして鞄と剣を手に入れた。


『ラッキー、これっ魔具なんだよね』

古道具屋が魔具と気づかない魔具。


魔具は魔力を流して使う。

時たま、特定の属性でないと動かない魔具がある。

これがそうだ、鞄も剣も光属性の魔力でないと機能しないのだ。


光属性の人は少ない。

そしてほとんどが女性に現れる。

男の光属性はそれこそ数千人に一人だ。


光属性の女性が、こんなボロボロの鞄と剣を気に入り、魔力を流すことなどなかったのだろう。

ただの汚い中古品とした扱われていた。


これを使って、俺は森の獣を狩りまくった。

刃の長さが七十センチの魔剣は魔力を流すと光の刃が五メートルまで伸びた。

バフかけで身体強化し下の兄から剣術を教わった俺が五メートルの光の刃を振っている。

熊でも狼でも、単体でも集団でも取り放題だった。

さすがに熊は解体しないと鞄に入らないが異次元鞄はいくらでも詰め込むことができた。


これで一回の狩猟で大量の獣を取ってくることが可能となり、ウハウハと金がたまった。

まあ、売り先を探すのが大変だったが、鞄に入れれば腐らないので、周辺の町を回って売りさばいた。


こういう時貴族の証明書が役に立つ、フリーパスで王都の門を通過でき記録も残らない。


「まあ、こんな感じだな」

ギャに話していたのだが、面白くなかったのか眠そうだった。


「あれだね、ご主人様は売れ残りに縁があるんだね」

「ああ、鞄に剣に、そしてお前か。ならお前も掘り出し物なんだろうな」


「そうだといいね」

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