35・冬山を行く
猪狩りの為にズンダダの森を目指す。
森に行くためには山を一つ越える。
「マサル、あの山を越えるのか、高くて無理だと思うぞ」
「ギャ、別に山頂を目指すわけではないからな。ほら、この道の先は山と山の堺で低くなているだろ。あそこを通るんだ」
「それでも坂道はつらいぞ」
「そうだな、此処より四百メートルは高くなるな。それなら辛くなったらすぐに言えよ、おぶってやるから」
「わかった、マサル辛いからおぶれ」
「しょうがない、ほれ」
まだ村を出て三十分も歩いていないが、他の人に迷惑がかかるのでギャをおんぶした。
そして歩くこと二時間、峠の頂点にたどり着いた。
サメル村でも雪がうっすら積もることが有るが、標高が四百メートル高い峠には雪が十センチくらい積もっている。
ギャをおんぶしておいて良かった、歩かせていたら半分も来れなかっただろう。
峠を越えると森が見える。
「おおおおー、何だこの景色は」
峠から見下ろす森を見てボイルさんが驚いていた。
「ボイルさんどうしたんです」
「マサル君、あれを見て見ろ、果てしなく向こうまで森が広がっている。こんな大きな森を見たことが無い」
峠から見下ろす森はマルマ国より広いのではないと思わせる。
「ボイルさん、マサルさん、森までは此処から千メートル以上下りますから気を付けてください」
今回の狩りのリーダーのニトルさんが注意する。
「ニトルさん、ズンダダ森ってこんなに広いのですか」
「そうだ、知らなかったのか。それに標高が低くなるから温かいぞ」
「そうなんですね、冬でも狩りに出かけるから不思議だった」
「猪は冬眠しないし、土が凍ると食べ物が取れない。村より暖かくなければ駄目だろ」
猪は木の実や芋が主食だ、ミミズや小動物もだべるが、土が凍ると芋がほれず飢えてしまう。
「あの森に魔獣の秘密が有ると良いのだが」
「ええ、そうですね」
ボイルさんと従者がひそひそ話をしている。
確かにズンダダ森で狩れる猪の魔獣率はたかい。
「マサル、下り坂なら着いて行ける、雪が無くなたら卸してくれ」
「ああ、わかった」
俺の背中にしがみついているギャも、そろそろ降りて歩きたくなったようだ。
今回の狩りには村人が十人来ている。
狩りをするのが六人で後の四人は小屋番と、帰りに狩った猪を運ぶ係だ。
小屋には生活道具はそろっている、狩りの道具以外の荷物は食糧だけなので、村人たちの足取りは軽い。
ボイルさん達三人も鍛え上げているらしく、軽々と山道を下っていく。
しょうがないので、俺も軽く自分にバフをかける。
「うっん」
バフかけすると、何かを感じたのかボイルさんがこっちを見たが当然無視する。
ボイルさんには魔力属性:無と説明しているので、光だと教えることはしない。
「よーし、昼の休憩にする」
リーダーのニトルの指示で昼飯だ。
「マサル君、頼んでいた食事を出してくれるか」
「はい、ニトルさん」
俺は異次元鞄から出来たの料理を取り出していく。
狩りに着いて行く交換条件として料理を提供することになったからだ。
「おお、うまそうだな」
「申し訳ありませんボイルさん、俺が頼まれたのは村人の分だけなんです。食事は自分で用意してくれって言われませんでしたか」
「ああ、・・・そうだったな」
「ボイル様、我々はこちらでいただきましょ」
ボイルさんの従者が鞄から食事を取りだした。
どう見ても旅用の簡易食糧だ。
村人十人と俺とギャは、温かい食事で疲れをいやすと、森に向かって出発する。
「マサル。今日中にあの森まで着けるのか」
「そうだな、森の入り口に小屋を建てたと聞いている。そこまでなら日暮れ前に着けるんじゃないか」
俺がギャに答えると。
「大丈夫だよマサル君、小屋までの道はちゃんと整備してある。遠く見えてもそれほど時間がかからず着けるからな」
「はい、ニトルさん。此処までの道もよく整備してありましたからね」
ニトルさんが教えてくれた。
頻繁に使う道だ、それなりに整備したのだろうが、せめてロバと荷車が通れるようにしてほしかった。
「マサル君、荷車って思っただろ、当然俺たちも考えたが、急な坂が何か所か有って駄目だったんだ」
「そうでしたか、いっそトンネルでも掘りましょうか」
「ははははは、マサル君は大きなことを言うな、此処のトンネル工事は国家行事になってしまうぞ」
「いや、ニトルさん、もし森に魔獣の秘密が有るのなら、マルマ国はトンネルを掘るかもしれませんよ」
「またー、ボイルさんも冗談はよしてください、そんなことあるわけないでしょ」
ニトルさんは呆れているが、もし魔獣の秘密がわかればトンネルくらい安いものだ。
それに森に頻繁に人が行くようになれば、サメル村は行き止まりの村でなくなる。
これは村の発展につながることだ、ボイルさん、どうか魔獣の秘密を見つけてくれ。
「マサル、あれがそうか」
「ああ、そうみたいだな」
森の入り口にある小屋が見えてきた。
ニトルさんの言う通り、日暮れには十分間に合う時刻に到着することが出来た。




