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34・仕事を分担します

「マサル、忙しすぎるぞ、剣の稽古が出来ない」

「そうだな、ボイルさんの食事の支度に追われたからな」


素材業者は魔獣の素材を積み終えると次の日には帰って行ったのだが、あれから一週間、俺はボイルさんの食事係になっていた。


「マサル、お金をもらえるのなら村人が喜んでやるはず、ロマンヌさんに相談だ」

「ああ」

この一週間、朝昼晩とボイルさんの食事を作ってきた。

まあ異次元鞄が有るから作り置きを出すだけだが、それでも他の事が出来ない。


ボイルさん達の朝食を屋敷の食堂に並べると俺とギャは薬屋に帰ってきた。


「マサルさん、おはよう。毎日ボイルさんの面倒、ご苦労様です」

薬屋で簡単な朝食を取っていると、ロマンヌさんがやってきた。

来ない日の方が少ないので、ロマンヌさんに用が有る時は薬屋で待つに限る。


「おはよう。えーっと、いきなりなんですが、ロマンヌさん、屋敷にいるボイルさんの食事の面倒を村人で見てもらえませんか。給金はボイルさんに出させると言うことで」

「そうね、マサルさんに任せきりでしたね。冬は割と時間のある人が多いから声をかけてみます、早ければ今日の昼には集まると思うの」


「そうだ、冬は寒くてみんな家にいる。小銭稼ぎにボイルさんの世話は丁度いいぞ」

「そうだなギャ、ではロマンヌさんたのむ」

これでボイスさんの食事係から解放される。


「マサル時間が出来た、何する」

「何をするって、薬屋も食堂も村人のバイトでやれるようになっただろ、この村で取れない薬草や調味料の発注はバルノタイザン商会のムサイさんに頼むよう指示してある。お金の勘定はロマンヌさんが最終チェックをすることになった。これで俺が村から出ても大丈夫になったな」


「そうだ、この村に来て九ケ月だ。村人達だけで大丈夫でなければおかしい」

「そうか九ケ月か、それなのに今だに魔獣狩りの山に入れないな」


「マサルは入る必要はない、薬草取りの森だけで魔獣兎が取れている。つがいが出来たから、もうすぐ子供が生まれそうだ」

「そうだった、魔獣兎の観察をやらないとな。兎は一度に四匹から八匹の子供を産むから、何匹魔獣兎で生まれるか楽しみだな」


「ならマサル、天気の良い日は兎狩りに行って、ついでにあたいに剣を教えろ」

「よし、今日はもう無理だから明日から行くことにするか」


昼にはロマンヌさんがボイルさんの食事係を五人連れてきた。

俺とギャとロマンヌさんと一緒に屋敷に行って仕事を説明をする。


「マサルさん、今まで一人で用意していたんですよね」

仕事の内容を聞いてロマンヌさんが困惑している。


「そうですが、食事を作っていただけですが」

「食事を作ると言っても、ボイルさんが納得する料理を出していたのでしょ。そんな料理を村人で出来るでしょうか」


「いえ、ボイルさんは身なりは良いですが、此処では旅商人です。出していたのは、村の食堂サクラと同じものですよ。何なら、村の人が家で食べる料理でも構わないと思います」

「そ、そうですけ。もしボイルさんが文句を言って来たらマサルさんが何とかしてくださいよ」

「ええ、わかりました」

最終的な食事の責任は俺が取ることになった。


こうして俺とギャは、一通りの仕事から解放されることになり、平穏な日常が来ると思ったら。


「マッ、マサルさん、大変です。ボイルさんが魔獣狩りに付いて行きたいって言ってます」

ロマンヌさんが、血相を変え薬局に飛び込んできた。


「落ち着いてください。冬でも村の若人は魔獣猪の狩りに行っているのでしょ。連れて行くくらい問題ないですよ。それに、ボイルさんについてきた従者と御者の人、ボイルさんを守れるくらい強いですから」

「で、でも、プラチナ爵のボイルさんに何かあったら村が無くなります。バルノタイザン家も無事では済まないでしょ」


「そうかもしれないですね、それで俺は何をすればいいのですか」

「ボイルさんと一緒にいて、怪我をしないように守ってください」


「一緒に行くのは良いですよ、それで俺にも狩りをさせてくれるのですよね」

「それは駄目です。とにかくボイルさんもマサルさんも怪我をしないようにしてください」

うーん、ロマンヌさんの言うことは良くわかるが、俺はボイルさんの子守役ではない。


「マサル、付いて行くだけだから付いて行け、魔獣は狩れなくても山を調べることは出来るはずだぞ」

「そうか、そうだな、もしかすると、此処で猪の魔獣率が高い原因がわかるかもしれないな」


結局、村人が猪狩りに行くとき、山に入ることになった。


「今日はお客さんがいる。普段以上に気を付けてくれ」

魔獣猪の狩りに行く村人のリーダーだ。


魔獣猪を狩ると言っても、いつも俺が行く森では無く、山を一つ越えた所にあるズンダダ森まで行く。

山を越えるのに一日かかるので、二泊三日の狩りの旅だ。


「マサル、必要なものはすべて異次元鞄に入れていけ」

「ギャに言われなくても入れていく。それにボイルさんも異次元鞄を持っているからな」

一応鞄にはテントも入れてあるが、ズンダダ森の入り口には森小屋を立ててあるので、大きな荷物は持たないで良いらしい。


「それじゃあ出発するぞ」

リーダーの掛け声で村人十人とボイルさん達三人、そして俺とギャが出発する。


「えっと、ギャ、家で留守番って言わなかったか」

「そう聞いた。だがギャは冬山を行く」

ギャは魔獣素材の服と靴を来ている。

これに魔力を流せば寒くはない。

目を守るためのゴーグルも付け、防寒の帽子もかぶり完全武装だ。


「しょうがないな、絶対俺のそばを離れるなよ」

「オー」


ボイルさんだけでなくギャの面倒まで見ることになったが、俺は心配していない。

いざとなれば、俺だけでなくボイルさんや村人にバフかけもできるし、怪我人が出たらポーションも持ってきたし『ヒール』で治せる。


「ボイルさん、俺が付いて行きます。大船に乗ったつもりでいてください」

ボイルさんの後ろを歩きながら声をかけると。


「マサル君、大丈夫か。今からでも引き返していいぞ」

逆にボイルさんに心配されてしまった。

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