33・村の倉庫
サメル村には狩ってきた獣の毛皮を保管しておく倉庫が有る。
ただの猪の毛皮は売りに出しているが、魔獣猪の毛皮を大量に売り出せいないからだ。
魔獣猪の革は国に治めるが、納める以上にサメル村では魔獣猪が取れていた。
「マサル、すごい量の革が積んであるぞ」
「ああ、これほどとは思わなかった」
俺とギャは、ボイルさん達と倉庫に来ていた。
一緒に来ているのは村長と村の属性:闇のダンさん、そして素材業者の人だ。
「マサル様、魔獣の革でございます。きちんと取れた日時場所ごとに整理しております」
「ああ、これなら一緒に生まれた魔獣猪の革を探すのは楽だろうな」
俺は属性:闇ではないので判定できないから、探すことは出来ない。
「こんなにあるのか。村長、注文書の量より多くありそうなのだが、持てるだけ持って帰ってもいいかな」
素材業者が村長に頼んでいる。
それほど王都の工房では魔獣の革が不足しているのか。
「・・・いつも通りの価格で引き取ってもらえるのなら」
村長は、村で魔獣の革を隠していると思われたくない、しかし売ればお金になる。
悩んだ末の答えだろう。
「村長、気にすることは無い。別にわざと隠したわけでもなかろう。毎年国から求められる量を売り、その残りなのだろ」
「ええ、その通りでございます」
ボイルさんが、村に責任が無いと言ってくれる。
「それでは、この革の中から一緒に生まれた革の選別を始めますか」
素材業者のラルーダさんが指図する。
通常、異次元鞄は一頭から一つ作る。
二頭以上の革を使うと異次元鞄として動いてくれないのだ。
ただし双子や三つ子なら、それがたとえ一卵性でなくても異次元鞄として機能する。
その為に倉庫から一緒に生まれた猪の革を探すことになった。
どうやらラルーダさんは属性:闇ではなく、一緒に来た二人が闇のようだ。
それに村のダンさんとボイルさんが手伝いに入る。
「ボイルさん、良いんですか」
「何だね、マサル君」
「だって、貴族は出来るだけ動かず人を使えって言うじゃないですか」
「それは時と場合だ、それにここには旅商人としてきている。品定めは仕事のうちだぞ」
ボイルさんがそう言うならそう言うことにする。
「マサル、あたいも手伝いたい」
「そうか、なら選別の終わった革を元に戻してくれるか」
「おー」
ギャは選別から漏れた仲間の居ない革を元の棚に戻しておく。
俺も何かしたいが、お茶とお菓子の用意くらいしか手伝えることは無かった。
お菓子の準備だけかと思ったら、選別には一日かかりそうなので昼飯の用意もする。
倉庫にコンロ魔具と鍋を持ってきてもらい、料理を始めた。
「マサル様は、料理が上手なんですね」
やはり選別の出来ないラルーダさんだ。
「ええ、おふくろの手伝いをしていましたから」
「食堂サクラでしたね、私も王都にいるときは良く利用しています。確かマサル様のお母様が料理を作っているのですね」
「はい、始めは隠していたんですけど、すぐにバレました。まあ貧乏貴族なので、あまり騒がれませんでしたけどね」
「そうですか、貴族の奥様が一般庶民向けの食堂で料理を作っているなんて前代未聞でしょうね」
などとラルーダさんとおしゃべりしながら料理を作っていく。
昼飯を終え、三時のおやつのころには選別も終わった。
どうやら国が求めてきた量の倍はそろったみたいだ。
「ふー、これだけあると助かる。それも二頭組でなく三頭組がかなりあるのもなお助かる。三頭の革を使えば馬一頭と同じ大きさの鞄が作れるからな」
最後の片付けを手伝ったラルーダさんは、ホッとしているようだ。
「ええそうですね、でもラルーダさん、今回はこれで一息つきますが、次はもっと大変になりますよ」
「そうでしたね、ボイル様の所の魔獣牛は注文通り入荷していますが、魔獣馬の方が見通しが立ちませんからね。ところでやはりボイル様では今以上の納品は無理なんでしょうか」
「ああ無理だな。出来れば五年くらいは納品をやめて繁殖に力を入れたいくらいだ。他国からの注文済みはしょうがないが新たな注文は受けて欲しくないな」
「難しいでしょうね、他国からの注文は今でも抑えている状態ですから、本来ならルンドリガンド家が魔獣牛の繁殖に失敗していると国に申し出れば、国ももう少し考えてくれるのですが」
「それも無いだろう。そもそもルンドリガンド家は魔獣牛の革をひそかにどこかに売っていたのだからな」
「ボイル様、それは何のことやら、我々業者は知らないことです」
「マサル、ボイルさんとラルーダさんの会話、少し意味が通じないぞ」
「そうだな、要するにルンドリガンド家が、王都に言っていない魔獣馬を育てて、何処かの誰かに売っていることや、魔獣馬を売りすぎて繁殖が出来なくなったことは、素材業者は知っているが知らないふりをしたいと言うことだな」
「・・・マサル君、解説はしないでくれ。それより村長、此処に有る残りの革を売ってくれないか」
二頭組や三頭組にならなかった魔獣猪の革のことだ。
「国にバレると怒られます」
「それは大丈夫だ、私が何とか出来るからな。それは私が旅商人なのは全くの嘘ではなく、きちんとスターマイラル家御用達の商人として国に登録してあるからだ。魔獣の革の流通販売の権利も持っているし、魔獣の革の仕入れ先や手に入れた場所は報告しないで良いことになっている」
「さすが、プラチナ爵ですね」
「ああ、ほぼ王族と同じ権限を与えられているからな」
「その権限を悪用したのが、ルンドリガンド家なんですね」
「そうだ、仕入れ先は報告しないが売り先の報告義務は有るからな」
「しかし、国に反逆してまでも売ろうとした相手って誰なんでしょうね」
「それがわからないんだ、サメル村の納品した魔獣猪の革がすり替えられた時、それに乗じて捜索したんだが、わからなかったそうだ」
「そうですね、下の兄のサトシからきいています」
下の兄は、国の騎士団に入っている。表には出なかったが、かなり大掛かりな調査だったらしい。
「マサル、またギャのわからない話をしている。ギャだけじゃないみんなも飽きるぞ」
「みんなって誰だ。まさかギャはこれを小説にして誰かに読ませているのか」
「そんなこと出来ない。そうじゃなくて、ギャにわかる楽しい話をしてくれ」
「わかった、あとでな。それより、食堂に行って夕食の準備だ、ギャ行くぞ」
俺とギャは、ボイルさんは素材業者の人を倉庫に残し食堂に向かった。
既に食堂は料理人のケントとサイラ メリさんで回すことが出来ている。
新人のミネさんも入ったので、俺の出番は少ない。
暇なときに作り置きを作るくらいだ。
食堂に入るとすでに夕食のお客でいっぱいになっている。
「ケントさんすごいですね、みんな家で食べないんですか」
「そりゃそうだ、普通の家に此処ほど調味料や香辛料はそろっていないからな。それに安いうえに、村人はお金の使い先がない、毎日でも食べに来れるからな」
そうだった、サメル村はロバの収入以外に魔獣の素材を売っており、現金収入がかなりあるのだ。
「マサルすごいな、サメル村は金持ちだ、これで行き止まりの村で無ければもっと発展するぞ」
「そうだな、管理者としては考えないと駄目だな」
うーん、これって親父が俺にやらせたいことなのかな。




