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27・ギャの剣の稽古

「マサル、約束を忘れているぞ」

「何か約束したか」


「剣の稽古だ。マサルの異次元鞄にあたいの剣を仕舞ったままだ」

「おお、倒した盗賊から奪った剣だな。すっかり忘れていた」


「思い出したな、それでは剣を出して稽古だ」

「おいおい、今から店の準備だぞ」


「そうだったな、店を早じまいして稽古をするぞ」

「営業時間を勝手に変えられないだろ。まあだが食堂の方はこのひと月でケントさんとマリさんに任せられるからな、お客の切れる二時から三時の一時間を訓練に当てるか」


「一時間か、短いな」

「そうか、じゃあ今日一時間剣を振ってみろ、たぶん倒れるからな」


「あたいは、倒れるのがわかっていることはやらない」

「そうか、まあ今日から始めてみるか」


ギャが言い出さなければいいなと思っていたが思い出してしまった。

村に来て八か月、薬屋も食堂も村の人でも回るようになってきたので、時間は取れるようになった。

薬草の採取と兎狩りは続けるので、毎日の稽古は無理だ。


「マサル、始めるぞ、まずは何をする」

昼飯時が終わり一段落したので、店の裏でギャと剣の稽古を始める。


「いきなりあの剣では危ないからな、ほれ木剣だ」

「何だ貧乏くさいな」


「貧乏言うな、練習は木剣で十分なんだ」

「そうか、だがよく都合良く木剣が有ったな」


「ああ、異次元鞄をひっくり返したら出てきた」

「やっぱりマサルは貧乏性、拾ったものを何でも鞄に入れる」


「ゴミは入れないぞ。それよりまずは型を教える」

「おー」

俺はギャに剣を持たせ上段の構えをさせる。


ギャの姿勢は背筋が伸びて意外と綺麗だ。

多少の修正をして剣を振り下ろさせる。


「いいか、今は早くとか力強くとかするなよ。素直に剣を振り下ろせ」

「おー、わかった」

まずは型を覚えさす。

特に剣先がぶれないよう丁寧に降らせる。


「マサル、疲れた、止めていいか」

素振りは十分持たなかった。


「おし、少し休憩するぞ」

「おー」

軽く休憩させ。


「今度は俺が剣を振るからよく見ているんだ」

「わかったが、マサルはあたいの真ん前に建っているぞ、そのまま降ったら頭が割れてしまう」


「大丈夫だ、当てないように振る。その代わり絶対動くな、そして目をつぶらず剣の動きをよく見るんだ」

「おー、動かないぞ」

俺は、ギャに当てないよう剣を振る。

ギャは目をつぶらずしっかり剣の流れを見ている。

そのまま俺も十分くらい素振りをした。


「よーし、今日は此処まで」

「もう終わりか、まだ三十分しかたっていないぞ」


「始めはこんなもんだ、慣れたら次は足さばきを教えるからな」

「おー、期待するぞ」

期待されても困るな、ギャが飽きずにやってくれればいいが、剣をきちんと振れる迄には一年はかかるだろう。


ギャの稽古を終え店に戻ると、バルノタイザン商会のムサイさんが来ていた。


「ムサイさん、店は夕方五時からですよ。あと一時間以上ありますが、何か用か用ですか」

「ああ、ロバの受け取りに会社の人達が今日来ることになっているんだが、まだ来ないんだ。

しばらくここで待たせてもらえないか。それと夕食を私の分を含めて四人分頼んでおこう」


「ロバを取りに来る人達ですね。いいですよ。それで来た人たちは何処に泊まるんですか」

「丘の上の使用人小屋だが、不味いのか」


「いえ、あそこにはベッドが二つしかなかったはずです、隣のお屋敷にもありませんでしたね」

「それは大丈夫だ、野営も有るから寝袋は持っている」


俺とギャがひと月前まで住んでいた使用人小屋は、風呂もトイレも有る。

今でも村の子供たちの掃除は続いているので寝袋が有れば問題なく泊まれるだろう。


ムサイさんがお茶を一杯飲み終わると、ロバの受け取りの為にバルノタイザン商会の人達が到着した。


「そうだマサル君、頼まれた調味料と香辛料も持ってきてくれたはずだ、受け取ってくれ」

「はい、助かります」

異次元鞄にしまってある調味料と香辛料にはまだ余裕が有るが、俺がいなくなった後のことを考え定期的に送って貰うことにしてある。


ムサイさんと受け取りに来た三人は食堂サクラで夕食を取った後、使用人小屋に向かっていった。


「マサル。ロバを受け取って帰るだけだろ、なのに荷物を積んだ馬車が有るのは何故だ」

「村の必需品だな。サメル村は行き止まりの場所にあるから行商や旅商人があまり来ないんだ」


「そうか、まあ村の管理者のバルノタイザン家の当然の行為だな。行商や旅商人があまり来なければ村人が困るからな。・・・あれ、あまり来ないと言うことは、来る商人もいるのか」

「ああ、信用できる商人に魔獣の革を売っているからな」


「密売だな」

「違うぞ、革には発熱の魔法を付与してあるから異次元鞄には使えないようになっている。これなら王国から怒られないんだ」


「そうか、マサルが兎を飼うのもその為だな」

「何の為だ」


「此処で取った魔獣兎を王都に持っていく、兎は鳴かない臭くないから王都でも飼える。そして増やして革をとって、魔具にして売るんだ」

「おっ、いい考えだな。つがいの兎がそろったら持って帰ろう。いい小番稼ぎが出来そうだ」


「マサル、もうかったらアイデア料払うんだぞ」

「わかった」

兎の革で出来るのは、手袋と薄手のコートくらいかな。

それでもいい稼ぎが出来そうだ。

兎のつがいも一組では駄目だ、せめて三組は欲しい。よし今まで以上に兎狩りに力を入れよう。


こうして俺とギャは空いた時間が有れば兎狩りに向かった。

ギャは兎を追いながら剣を振り回すので、知らず知らずに剣の腕も上がって行った。

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