23・お店のバイトが増員されました
ロマンヌさんに頼んだバイトの増員だが、何と翌日にはそろってしまった。
現在薬店のバイトが女の子一人、食堂もギャと同じ年くらいの女の子が一人だ。
薬店の女の子の名前はカルで、食堂の子はサイラだ。
今度来てくれたのは、薬店が三十半ばの女性で、食堂は五十くらいの女生と、二十代後半の男性だった。
「薬屋のバイトに決まりましたマイです、よろしく」
なかなかはっきりした子だ。
「食堂のバイトのメリです」
五十過ぎの女性で、おっとりしてる。
「料理人として雇われたケントだ。足が少し悪いが気にするほどじゃないからな」
二十代後半の元気な男性だ。
何でも狩りの最中にひざを痛め、山に入れなくなったのでここに来たらしい。
「俺が経営者のマサル、よろしく。えー、初めに言っておきたいことが有る。俺は旅の冒険者でこの村に定住することは無い、俺のいるうちに仕事を覚えることが出れば、この店はそのまま譲ることにしている」
薬作りや料理だけでなく店の経営も教えるつもりだ。
このことは村長の娘のロマンヌにも話してある。
「わかりました、頑張って料理を覚えるのでよろしく頼む」
ケントは怪我をしてから村での居場所が無くなっている。これからの為に頑張るだろうな。
こうして俺の店が本格的に始まった。
「マサル、忙しくなったな」
「ああ、こうなると俺の異次元鞄の材料だけでは間に合わなくなる」
「どうする」
「そうだな、王都の実家から送ってもらうか」
「また隣村まで行って手紙を出すのか」
「いや、こんど親父の会社の人が来ただろ、彼は俺のことを知っていて内緒にしている。毎日のようにこの店に昼飯を食べに来るから、こっそり頼むんだ」
「そうか、会社の便で送ればタダだからな」
「そうだ、まあ送ってもらうのは調味料や香料だな。それと此処で取れない薬草くらいだ。牛肉は俺が行って異次元鞄で運ばないと無理だな」
「サメル村から王都まで六日かかる、往復十二日だ。そんなにマサルがいないと店が困る」
「作り置きを冷蔵庫に入れておけば三日は大丈夫だ。週に一日は休みが有るから、四日休んで往復する」
「無理じゃないのか」
「やはりそう思うか、そうだな六日はかかるか」
「正直にロマンヌさんに話した方が良いぞ、協力してもらえればなんとかなる」
「そうだな、爺がいるところで話して上手くまとめてもらおう」
手持ちの調味料と香辛料はまだまだある
牛肉はもうすぐなくなるが、村で取れる猪や兎の肉が有るからこれでケントに料理を覚えてもらう。
ついでだから、食堂担当のサイラとメリさんにも教える。
ケントよりメリさんの方が包丁の扱い上手かったからだ。
薬屋はギャも手伝うので店番だけなら二人もいらないのだが。
「カルとマイには、交代で俺の薬作りと薬草採取を手伝ってもらうからな」
店番だけでなく、薬作りと薬草採取を覚えてくれれば俺の仕事が減る。
そして、俺のことをロマンヌさんに話す日が来た。
「マサルさん、お話が有るそうですね」
バイトが増員されてから一週間後だ。
たぶんロマンヌさんはバイトが問題でも起こしたと思ったのだろう、神妙な顔で店に現れた。
「マサル殿、何か問題でもありましたか」
当然爺も一緒に来てもらった。
「ちょっとバイトには聞かれたくないので裏の家に来てもらえますか」
俺はギャを連れてロマンヌさんと爺に裏の家に来てもらった。
「まず、バイトの人達は良くやってくれてます。さすがロマンヌさんが選んでくれただけは有りますね。それで大事な話なのは、俺の事です」
「マサル殿、お嬢様にもお話しなされるのですか」
「ああ爺、店も大きくしたし、親父の会社の人も来たからな、ロマンヌさんと村長には教えておかないとな」
「マサルさん、親父の会社って、まさかバルノタイザン商会でしょうか」
「ああ」
「そうなんですか、そう言えば、バルノタイザン家の三男の名前がマサルでしたね。爺知っていたのですね」
「申し訳ありません。マサル殿が来た時はまだサメル村が疑われている最中でした。村人の混乱を避けるためにもマサル殿のことは黙っておりました」
「そうですか、それでマサルさん、このことは村人には」
「内緒でお願いします」
「わかりました」
俺がバルノタイザン家の三男と知ったロマンヌさんは父親の村長に話に行く。
「お父さん、驚かないでください。マサルさんはバルノタイザン家のご子息だそうです」
「ああ、そうだな」
「驚かないのですか」
「そりゃそうだろ、村長の儂が管理者の家族に会ったことが無い訳が無いだろう。マサル殿がここにきて初めに名乗らなかったのはそれなりに訳が有ると思うだろ、だから黙っていたんだ」
サメル村の村長、見た目はどんくさそうだが出来る人だった。
こうして俺のことを知る人は村に、ギャ 会社の人 爺 ロマンヌさん 村長の五人になった。




