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22・魔獣の繁殖

俺がサメル村に来て半年、十月とはいえ標高の高いサメル村では、肌寒い日が訪れようとしている。


「マサル、寒い」

「そうか、暖房魔具に魔力を入れればいいじゃないか」


「そうだった、ギャは奴隷なので魔力操作力が少ないと思っていが、違っていた。やればできる子だった」

「そうだぞ、たまには丘の上の使用人小屋に言って魔具に魔力を入れに行ってくれ」


「あれか、マサルの親父の会社のひと、サメル村に来て使用人小屋に住み着いたのはいいが、魔力操作力が中の小だったな」

「優秀でいい人なんだけどな、俺のこと知っているのにうまくごまかしてくれる」


「一人暮らしだが飯はちゃんと食べているのか」

「ああ、自炊は慣れていると言っていた。だが昼飯だけは俺の食堂にきたいといっていたな」


「マサル、食堂ますます繁盛している。もう一人アルバイトを雇うと良いぞ」

「ああ、それに俺とギャは一生この村にいるわけにもいかないからな。食堂を任せられる人が欲しいな」


「ロマンヌさんに頼むんだな」

「ああ、他につてがない」


「マサルは友達少なそうだな」

「否定はしない。王都にも少ないな」


「まあ、友達は数より質だ。気にするな」

「ギャに言われたくないな。お前だって友達いないだろ」


「それこそ言うなだ。あたいの育った環境を知っているだろ」

「そうだったな、すまん」

などと薬屋でギャと戯れていると。


「相変わらず、仲がよろしいのですね」

ロマンヌさんが、店に入ってきた。


「そうですか、それよりちょうどよかった。ロマンヌさんに頼みがあるのです」

「えっと、何でしょう」


「食堂が忙しので、従業員を増やして欲しいのです。できれば今後店を任せられるような人が良いのですけど」

「そうでしたね、マサルさんはずっといてくれるわけでは有りませんでしたね。わかりました、探してみます」


「マサル、これでひと安心だな」

「ああ、これで兎の実験がもっとできるな」


「マサルさん、兎を飼っているのは知っていますが、実験って何ですか」

「そうか、ロマンヌさんには説明していなかったですね。まだ一匹しかいませんが、あれは魔獣兎なんです。出来ればつがいになる相手がもう一匹欲しいのですが、そうでなければ、普通の兎との交配を試すつもりです」


「それで何を調べるのですか」

「そうですね、魔獣兎同士ならどれくらいの確率で魔獣兎を生むか、オスが魔獣兎でメスがただの兎の時、オスがただの兎でメスが魔獣兎の時はどうなるかを知らべたかったんです」


「わかるとどうなるのですか」

「どれくらいの割合で魔獣兎がいれば、増えていくかがわかります。これがわかれば魔獣の繁殖が出来るようになります」


「魔獣の繁殖であれば、魔獣馬と魔獣牛は牧場で育てていると聞いてますが」

「ええ、でも全てが秘密にされていて、調べることも出来ないんです。あとは無理な実験なのですが、ただの兎同士でも魔獣兎の可能性があるので、何匹に一匹いるか調べたいですね」


「ただの兎同士でも魔獣兎が生まれるのですか」

「ええ、隔世遺伝と言うのがありまして、何代前でもよいので魔獣兎と交わっていればただの兎同士でも魔獣兎が生まれる可能性はあります」


「マサルさんの予想では何匹に一匹が生まれるのですか」

「そうですね、普通の兎同士なら千匹に一匹くらいかな。この村の回りだと取れる魔獣は百から二百匹に一匹ですから、此処は魔獣の比率が多いと思います」


「魔獣がいればいるほど魔獣が増えていくと考えていいのですね」

「そうです」


「反対に全く牧場に魔獣がいなくなっても、探せばどこかで見つかると」

ロマンヌさんが牧場の話をしてくる。いろいろ回ってきて気になることがあったのかな。


「ええ、多分、魔獣牛も魔獣馬もただの牛や馬の中から魔獣を探し出し、魔獣同士を交配させて増やしているはずです」

「そうでしたね、魔獣馬を扱うルンドリガンド家は馬の繁殖に成功して、かなり大きな牧場を各地に作ったと聞いています」


「そうなんですか」

と、答えたが、俺はルンドリガンド家のことはよく知っている。

俺のバルノタイザン家がロバの繁殖と飼育に成功したあと、その技術をまねして馬の飼育と繁殖に成功し、そのうえ、騎乗に適した馬、馬車を引いたり農作業に適した馬を作り上げている。

おかげでバルノタイザン家のロバが売れなくなったのだ。


「おはようございます」

「おはようございます。ロマンヌさん、いつも私たちよりも早くお店に来るんですね」

ロマンヌと兎の話から魔獣の繁殖の話をしていたら、薬屋と食堂のバイトが来た。


「ええ、おはよう」

出勤してきたバイトにロマンヌさんも挨拶をする。


「ロマンヌさん、バイトも来たから手伝うこともなさそうだし、村の仕事に戻ったほうがいいよ。あっ、店員の増員、忘れないでね」

「ああ、それじゃあ私は役場に戻ります」

そういってロマンヌさんは役場に戻っていった。


「マサル、この村に役場があるのか。何処にある」

「村長さんの家が役場でもあるんだ。ギャも見ているだろ、村長の家は住むだけには大きすぎる」


「そうだったな」

「ああ、それじゃあ俺たちも店の準備を始めるか、俺は食堂に行くからギャは薬屋を頼むぞ」

「わかった」


店の準備が終わると俺とギャは店の裏に借りた家に戻る。


「さあ、店の合間に薬づくりをやるぞ」

「わかった」


そう、これまでは、薬草採取 薬づくりを週一日づつ、店には週四日出ていたのだが、食堂が忙しくなったので、薬づくりは店が暇な時間にやっている。


「ギャ、薬草の下ごしらえは覚えたな、俺は食堂の料理を作るから、やってくれ」

「薬草の下ごしらえ、わかったやるぞ」


時間の許す限り食堂で出す料理の作り置きを作り、異次元鞄に保存する。

最近、昼だけでなく、夕食を食べに来る人達がいるからだ。


ロマンヌさんに頼んだ増員、早く来てくれないと体がもちそうになかった。

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