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2・俺の家族

王都の第八環状塀にある門を出れば草原の中を街道が伸びている。

俺はロバを引きながら、王都に残る家族のことを考えていた。


俺の家は六人家族だ。

父と母、上の兄と下の兄、それと姉がいる。


父はロバの流通販売の仕事をしている。

これがバルノタイザン家の本業だ。


母は食堂を姉は食堂の隣で薬屋をやっている。

貴族が食堂や薬屋を自らやるのは恥ずかしい。

と、思っている貴族も多いが貧乏貴族と呼ばれる我が家族にプライドはない。


食堂は平民むけ、気軽に昼の食事をとれる店だ。

食堂の料理は裏で母が作っている。

調理人の給料を浮かす為だけではなく、母の料理が美味くて人気が有るからだ。


そして、食堂で余った材料が当家の食卓に並ぶのだ。

決して我が家の家計を楽にするためでは無い。無いはずだ。


母の経営する食堂も姉の薬屋も繁盛している。

それは母と姉の魔力属性が風だからだ

風の属性は料理や薬作りに向いているのだ。


上の兄は王都学校の貴族科を首席で卒業し、お城に官僚として勤めている。

貧乏貴族だが奨学金制度に合格したので通うことができた。

魔法属性は土 勉学や職人に向いた属性だ。


下の兄も王都学校を卒業している。

騎士科を首席で出て、今年から騎士団に務めている。

やはり奨学金制度に合格したのだ。

そして魔法属性は炎、戦いや肉体労働に向いた属性だ。


俺も奨学金制度に合格すれば王都学校に行けるはずだったが。


「魔力操作力:極小はダメ」と言われ落ちている。

そう俺は魔力をほとんど使えないことになっている。


石畳の道をロバに引かれた荷車はガタガタ進む。

揺れる荷車で寝ている奴隷の女の子は目を覚まさない、そのまま眠らせておこう。

王都を出て四時間、そろそろ昼になるので食事の準備だ。


出来立ての料理を異次元鞄に入れてあるので取り出すだけだ。

料理は自分でしてきた。

母の食堂の手伝いをしてきたので、お手の物だ。


さてどうする、俺だけ食べるか。

そう考えていると。


「いいにおい。あたいにもくれ。主人の義務だ」

奴隷の女の子がにおいで目を覚ましてしまった。


「わかった。ほれ」

異次元鞄からパンとスープと串焼きの肉を出すと受け取った。


「おい見えるのか」

白目なのでてっきり見えないと思っていた。

「見えるよ」

そう言うと、パンをスープに浸している。

よだれを垂らしていたので、がっつくかと思ったら意外と丁寧に食べている。


「見るな、恥ずかしいだろ」

見てたら拒否られた。


食事が終わると食器を洗い鞄に仕舞う。


「御主人様、まだ奴隷契約が終わってないよね。『契約』と言いながらこの首輪に魔力を流して」


「いや、まだ駄目だ、お前の今の体力では奴隷契約の魔法に耐えられない。体力が回復してからだ」


「置いていくためじゃないよね、一応信じるから」

一応なんだ。


「まだ名前を聞いていなかったな」

「名前、知らない。みんなはギャって呼んでた」


「知らないって、この国では生まれると教会からプレートを渡されるだろ、ほら、これだ」

俺は自分のプレートを見せる。

縦二センチ、横五センチで、名前と誕生日、発行した教会の名前が書いてある。

これとは別に貴族は身分証明書を国からもらっている。


「持ってない、きっと初めて奴隷商に売られたとき捨てられた。気が付いた時にはこの首輪を付けていたんだ」

「なあ、白屋の親父が、お前は奴隷商を転々としていたといったが、初めから首輪をずっとはめているのか」


「そうだよ、もう三年以上かな」

「外したり、取り換えたりしないのか」


「外してないよ、奴隷契約は主人になる人が魔力を流して『契約』する。奴隷から解放されるのは、主人が魔力を流して『解約』するか、主人が死んだ時だけど、すぐに別の人が『契約』するんだ」

「そうか、外したことが無いんだ、それでも一応聞くが外す方法はあるのか」


「あるよ、光属性の魔力をたくさん流すと外れるんだって、でも光属性の持ち主が奴隷の首輪を外すなんてやってくれないんだ」

「そりゃそうだ、光の魔力は治療に使われるからな、たくさんの魔力があれば多くの人の病気やケガが治せる」


「そう言うこと。ねえ、それよりぼちぼち行かないと次の宿場町に着かないよ」

「お、おー、そうだな」


俺はロバを引いて街道を歩きだした。


もうすぐ日が暮れるという時に宿場町に着いた。

宿場町と言っても王都から一日の距離だ。

大きめの商店街もあった。


王都と違い門などない。

街道からそのまま町中に入ることができた。


俺は宿を探して町中を行く。

探すことはなかった、ここは宿場町なのだから、道沿いに宿が並んでいた。


経費節減のため一番安そうな宿に入る。


「大人一人と奴隷一人だ、それにロバと荷車がある」

受付カウンターの奥には老婆は座っていた。


「それだと飯なしで、一万円だな、ロバの餌もないからな」

「ああそれでいい」


「ほれカギだ、二〇三号室だだよ。風呂は一階のおくだ、奴隷は風呂に入れないでおくれ」

「わかった」


「チェックアウトは九時だよ、カギはカウンターの横の箱に入れていってくれ」

「ああ」


カギを受け取った俺は、ロバを厩につなぎ、異次元鞄からえさの草を取り出し与えた。

荷車に乗せていたギャをおんぶして宿の部屋に向かった。

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