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17・魔獣牛と魔獣馬

「魔獣の革はまだ入らないのか」

「ええ、牛革は鞄二つ分が有るのですが、馬と猪が切れています」

「しょうがない、とりあえず牛革で作っていくが、馬と猪はどうしたんだ」


此処はお城の中にある異次元鞄の製造工房。

セキュリティのためお城の中で作業をしている。

どうやら、魔獣の革が足りなくて作業が進まにようだ。


「牛革のスターマイラル家は注文通り送ってくれるが、馬革のルンドリガンド家は何をしているのだ」

革不足を職人から攻められている魔獣素材の業者、ロイは落ち着かない。


「ええ、何でもほかの馬で忙しいそうです」

「また、言い訳か、馬の流通販売の権利で食べていけるからと魔獣馬の手を抜いているんじゃないか」


「そんなことをしたら王様に怒られます。まさか魔獣馬の繁殖に失敗しているんじゃないですか」

「それこそ、真っ先に報告があるだろ」


「じゃあなんで、入荷しないんだ、それにサメル村からの猪はどうした」

「あれは、どこかですり替えれて返品されたそうです」

「そうだったな」


「数日前にサメル村の疑いが無いことがわかりましたので、出荷が始まるとのことです」

「そうか、それで、牛革の変わりができるだけの量を送ってくれるのだな」


「いいえ、今までの入荷がサメル村での精一杯だそうです。それ以上の魔獣緒が見つからないそうです」

「無理なのか」

「はい、我々は待つしかないのです」


異次元鞄の工房は困り果てていた。


サメル村では山で魔獣緒を狩っているが、スターマイラル家の魔獣牛とルンドリガンド家の魔獣馬は牧場で育てられていた。


本当は両家ともサメル村での魔獣狩の権利は欲しかったが、牧場での繁殖しか知らず、魔獣を狩る経験も技術もなかった。

仕方なく、そして泣く泣く、狩場が遠いことを理由に断ったのだ。


もしどちらかの貴族に狩人がいたらサメル村はバルノタイザン家から取られ、俺はただの貧乏になっていただろう。


・・・ ・・・ ・・・


「マサル、壁に向かって何一人芝居やってるんだ」

「いや、壁の向こうで知りたい人がいたようだから、芝居で説明していたんだ」


「壁の向こうに行けるのは幽霊だけだぞ、マサルは幽霊と会話できるのか」

「出来るわけないだろ、だいたい幽霊は存在しない」


「まあいい、一応マサルがまともだと確認した。それで今の芝居のスターマイラル家って、ボイルさんの家だよね」

「おお、よく覚えていたな。そうだボイルさんはスターマイラル家だ」


「スターマイラル家は魔獣の繁殖ができてルンドリガンド家は失敗している。どうしてマサルは知ってるんだ」

「フフフ、それはな、俺のおふくろが食堂をやっているからだ」

「なんだそれ」


「食堂では馬肉を使っている」

「そうだな、牛より安い」


「肉を安く仕入れるために、おふくろは徹底的な情報収集をする」

「良いことだ」


「それで知った」

「ものすごく貴重な情報を拾ったな。ロマンヌさんも爺さんも知らなそうだ」


「ああ、馬肉業者の些細な一言からおふくろが割り出したんだ」

「すごいな、何を聞いたんだ」


「あの幻の肉はもう二度と売りに出ないだろうな、だ。」

「まさか、魔獣馬を間違えて肉にして出荷したのか」


「どうもそうらしいな」

「それは、サメル村が素材を差し替えられた件と関係あるのか」


「それはわからない、調べるにも此処では無理だな。まあ国も動いているからやがてわかるだろう」

「そうか国が動いているか。どこの国だ」


「おいおいギャ、この国のことだぞ、この国、マルマ国だ」

「そうか、此処はマルマ国なんだな。いろんな国を回ったから何処だかわからなくなっていた」

そう言えば、ギャは奴隷商を十件回されたと言っていたな。


「馬と牛で思い出した。ハーフアンドハーフのハンバーグが食べたい」

話に馬と牛が出てきたからか、突然ギャが言い出した。

「贅沢な奴だな、村人には見せたくないから夕食で作ってやる」


「マサルの異次元鞄には牛肉と馬肉も入っているのだな」

「ああ、旅に出る前に用意したからな」


「マサル出来るやつ」

「・・・・・・ああ」

ギャに褒められてもうれしくなかった。


一方、ルンドリガンド家もあわただしかった。


「おい、なんであの馬を食用肉として売ったんだ」

「それは、食用馬として飼っていたからです」


「なんで人を乗せる軍馬や馬車や農業に使える農耕馬にしなかった」

「『軍馬や農耕馬、それに正式な魔獣馬は帳簿に乗っているからそれ以外にしろ』と言ったのは旦那様です。それにしても目ざとい業者がいたものですね。『食用馬始めたんですか、売ってくださいよ』なんて言ってきましたからね。でもなんで社員にあれは魔獣馬だから売っちゃダメって、教えておかないのです」


「違法行為をしているんだぞ、あれは食用馬ではなく、魔獣馬だなんて教えられないだろ」

「それに、魔獣馬がすごく旨かったらしくて、再注文も来たんですよ」


「まさか出していないだろうな」

「ええ、一頭で済みました」


「お前はバカか、全部で五頭(不正分含む)しかいなかったんだぞ」

「そうでした、正式なのは三頭で違法が二頭。最初に二頭売って追加で一頭、これじゃ正式分の出荷もできませんね」


「なんでお前はそんなにのんきなんだ。国からもあっちの方からも早くしろって言われているんだぞ」

「あっちですか、ご主人様の命も短かそうすね。それじゃあ私はこれで」

「おい、一人だけ逃げるな」


冷や汗を流しながらの会話がなされていた。


そのころスターマイラル家では。


「旦那様、国から魔獣牛の出荷を増やせないか打診がありましたがどうなされます」

「またか、無理なものは無理なんだがな」


「そうですが、ルンドリガンド家の魔獣馬の納品が遅れ、異次元鞄の製造に支障が出ているそうです」

「知っておる、裏の情報網に食肉馬と間違えて売ってしまったと流れていたわ」


「食肉馬ですか、初めて聞く馬ですね」

「まあそうだろうな、食肉にする馬は、足を骨折して安楽死させた馬だけだ、食べるために飼っている馬などいない。食肉馬と偽って育てて、何処かに売ろうとしたんだろう」


「それで、繁殖に必要な頭数が足りなくなったと。これじゃあ増やすこともできなくなりましたね」

「我々も他人ごとではないぞ、新たな魔獣牛は見つからないのか」


「はい、ボイル様が探して回っておりますが、まだのようです」

「ボイルか、あいつが属性:闇のおかげで魔獣の見分けができるが、早々魔獣に出会えるわけもないか」


スターマイラル家の当主は息子のボイルに魔獣馬を探させていた。

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