13・薬屋
「おはようマサル、今日はお店の日だな」
「ああそうだ」
「ロマンヌさんは来るのか」
「聞いてないが来るんじゃないか」
「マサルのいない日の留守番のはずだったよね」
「そうだったな、それにしてはいつも来ている気がする、村長の娘ってそんなに暇なのかな」
「あれはそうだ、監視に来ているんだよ、マサルがバルノタイザン家の者だとバレたのだ」
「そうかな、バレてはいないと思うぞ、だが監視に来ているのは当たりかもしれない。断ってみるか」
「いや、あたいは気にしていない」
「そうか、まさかロマンヌさんが持ってくるお菓子が食べたいとかは無いよな」
「少しある、田舎なのにおいしいお菓子だ」
「田舎は関係ないだろ、この村でとれる食材がいいんだ。ほら俺の作る料理もうまいだろ」
「そうだった、この村でとれる野菜はおいしい、牛のお乳も最高、森で猪も取れる」
「そうだな、調味料以外は自給自足ができている。牛のほかにもヤギもいるし鶏も飼っている」
「おかげで毎朝ベーコンエッグが食べられる」
「ああ、トマトが取れたらオムレツを作ってやるからな」
「楽しみ」
「それじゃあ店に行くぞ」
俺はギャを連れてお店に行く。
村の中心に井戸があり、井戸の回りは円形の広場になっている。
その広場に向かって、借りた店があった。
「マサル、一等地の店が空いててよく借りられたね」
「そうだな」
たまたまだろう。
二日ばかりロマンヌさんに店番を頼んだので来るのは三日ぶりだ。
「マサル、増築されているよ」
「そうだな、隣に部屋が一つできてる。テーブルが有って椅子もある」
ロマンヌさんの持ち物だ、どう改造されようと俺がどうこう言うことはできない。
増築された店は置いといて、俺は店の準備を始める。
俺は売れた分の補充をしギャは掃除を始めた。
あらかた準備も終わったころ、当番日でもないのにロマンヌさんがやってきた。
「おはよう、マサルさん、ギャ」
「あたいだけ呼び捨てするんだ」
「あっ、ごめんねギャちゃん」
「うんそれでいいよ」
「それでマサルさん、お店変わったところわかる」
「うーん、何か変わったか」
「マサル白々しい、部屋が増えただろ」
「そうギャちゃん、よく気が付いたわね」
「えへん」
「おい、威張ることじゃ無い、それでロマンヌさん、この部屋は何に使うのですか」
「そうなの、私が店番していると、村の暇人が集まてしまって、店だけだと狭いし座れないしなので、ひと部屋作りました」
「おお、さすが村長さんの娘さん、太っ腹ですね」
「はい、店の建築費はマサルさんにつけておきましたから」
「マサル、うまくやられた、ただで貸してくれたが、結局つけと言う名の店代を払う」
「まあいいさ、薬が売れれば良いんだからな」
「マサル、それはおかしい、薬が売れるは、けが人病人が沢山いることになる」
「そうだな、ほどほどに売れると良いなにしよう」
「あなたたちの会話って面白いわね」
褒めていない、ロマンヌさんはあきれていたのだ。
店に薬が並べ終わる頃になると、村の暇人が集まってくる。
「あら、ロマンヌさん、今日は薬屋さんがいるのね、それじゃああの話はできないわね」
「ええ、あの話はやめてください」
「それじゃあ、タケさんちで赤ん坊が生まれた話ではどうかな」
「ええ、確か女の子でしたわね」
「そうなんだ、それで教会への届けをどうするか悩んでいるんだ」
「届けね、一番近い教会のある町まで三日かかりますからね」
「ロマンヌさん、出産の届は村で書類を作って持っていけば教会でプレートを作ってくれるんだろ」
「ええ、そうだけど、今の村の状態では誰かをやるのは難しいんです」
村から人を出せない、要するに、魔獣の素材をすり替えた犯人が村の中にいたことを考えているのだろう。
「それじゃあロマンヌさん、後で俺にその書類を預けないか、一日で行ってくるぞ」
「そんなことできるんですか」
「ああ、内緒の技を使う、一日で行ってくることは誰にも言うなよ」
「ええ」
一日と言ったが、夜明け前かなり早く出て、日が暮れてから帰ってくることになる。
早速次の日、書類を預かり教会を目指す。
不本意だが、教会では貴族の証明書を見せる。
そのほうが手続きが早く済むからだ。
一日村を開けるが、難しい薬を作っているので部屋に立てこもっていることにする。
ギャがうまく芝居をしてくれるか心配したが幸い誰も来なかった。
薬屋に併設された部屋には毎日暇人が集まりしゃべっている。
「マサルさん、この部屋、迷惑でしたか」
「そんなことないですよ、村人の憩いの場所になっていますよ」
「そうですね」
ロマンヌはちょっと不満のようだ、人が集まれば薬がもっと売れると思ったのかな。
確かに、薬屋だけでは多くの村人が来てくれない。
俺が村での信用を得るにはもっと多くの人に会いたいのだが、まあ気長にやるさ。




