12・薬屋始めました
「「「おはようございまーす」」」
子供たちの元気な挨拶だ。
「おじさん、掃除に来たよ」
「誰がおじさんだ」
「やはりギャは間違っていない、マサルはおじさんだ」
朝、食事が終わるころ、村の子供が三人、使用人小屋にやってくる。
「それじゃ、いつも通り頼むぞ、俺たちは森に薬草採取に行く、昼飯は調理場に用意してあるからな」
「わかった、それじゃあ、今日の掃除は二階だったよな」
「そうだよ、一階は昨日やったからな」
「あたしは、調理場の掃除をするね」
そういって、子供たちは掃除のために屋敷に向かった。
「マサル、薬作りだしたら村長さん良くしてくれるね。屋敷の掃除に村の子供たち派遣してくれた」
「ああ、だがこれは俺たちを疑っているとも取れるぞ」
「何を疑うの」
「なあギャ、俺はこの村の視察に来ている。そしてまだ身分を明かしていない」
「そうだね」
「怪しい人間だと思っているかも」
「そうだね」
「ロマンヌが連れていた爺に親切にしたから仕方なく置いているはずだ」
「そうだね」
「そして、俺たちが何者か考えたはずだ。
まず一つは、何も考えていない薬作りのできる冒険者。
次に、今問題になっている、魔獣素材のすり替えの仲間
そして、バルノタイザン家の回し者」
「正解は三番です」
「ピンポーン、じゃない。多分すべてで疑っているはずだ」
「それと、子供たちが掃除に来るのって関係あるの」
「ああ、この村からの報告書が王都にあるバルノタイザン家に届けられる。報告書に間違いがないか見てきたが、まあ簡単なミスや勘違い程度だ」
「問題ないじゃん」
「ひとつだけあった。この屋敷と使用人小屋の管理費だ。屋敷と小屋はバルノタイザン家が所有している。当然管理はバルノタイザン家の仕事だが、村に管理費を払って管理していることになっていた」
「でも、埃だらけで雨漏りしてたよ」
「そう、だからあわてて子供たちを掃除に向かわせたんだな」
「でもなんで、管理しなかったの」
「あまりに村に来ないバルノタイザン家への当てつけだろ。管理費をねこばばしても大した金額じゃないからな」
「やっぱり、マサルの家って嫌われているんだ」
「まあ、好かれるようなことはしていないな、まあ掃除の時間が無くなった分、薬を作れと言うことだな」
「だったらこっちの小屋の掃除もやってほしい」
「そこまで手がないんだろ、それじゃギャ、薬草採取に行くぞ」
「おー」
村長の本当の考えはわからないが屋敷の掃除からは解放された。
ギャの言う通り、俺たちの住んでいる小屋のほうもやって欲しかったな。
そうすればもっと薬が作れるのに。
薬草採取はロマンヌに許可された山や森にしか入らない。
まずは信頼関係を作る。
「ギャ、村の近くの森とはいえ、歩くの大変だぞ、小屋に残ってもいいからな」
「うーん、マサルのそばがいい」
懐かれたようだ。
ギャを連れているので、森も山も浅いところまでしか行けないが。
「マサル薬草取るの上手だ、こんなに集めた」
「そうだな、ここには薬師がいないからだろう、採取した跡がない」
薬草採取の人の入らない森や山だ、七年間薬草採取をやってきた俺なら深くまで入らずとも大量に採取できる。
それに、かなり高級な薬草も生えている。
やはりサメル村の環境は何かが違うのだろう。
昼まで薬草採取を続け、昼飯を食べ小休憩したら村にある小屋に戻る。
「マサル帰るの早くないか、まだ薬草あるぞ」
「薬草は、早いうちに処理しないと駄目なんだ、それに薬草は全部取ったら来年生えてこないだろ」
「わかった、帰ろう」
薬草でいっぱいになった籠を背負いギャの手を引いて小屋に戻る。
小屋に着けば、早速薬草の処理を始める。
「ギャ、薬草を水洗いしてくれ、決してこするなよ」
「わかった」
「これとこの薬草は、束ねて干しておけ、陰干しだぞ」
「わかった」
「こっちのは茹でておけ、冷めたら水を切るんだぞ」
「わかった」
「それから」
「それ以上言うな、覚えられない」
「そうか、そうだな、まあ俺もやるからできる所から頼むぞ」
ギャは、意外と器用に薬草を処理してしまう、ついつい頼んでしまうのだ。
「おじさん、おわったよ」
「おっ、もうそんな時間か、ご苦労様、クッキーがあるから持っていけ」
「うん、おじさん、ありがと」
掃除に来ている子供たちは、夕方になると帰っていく。
小遣い程度の賃銀は村長が払う、もともとはバルノタイザン家が送った管理費なんだけどな。
「マサル、子供におじさんって言われても怒らないのに、ギャが言うと、怒る」
「そりゃそうだろ、お前は一応俺の奴隷なんだからな、たまに忘れているだろ」
「そうだった、忘れてた、それより夕食一緒に作ろうよ」
「ああ」
夕食はギャに料理を教えながら作る、ギャをからかいながら作るほうが楽しくて面白からだ。
夕食を取り風呂に入れば、あとは寝るだけだ。
次の日も。
「「「おはようございます」」」
「ああ、おはよう」
子供たちが屋敷の掃除に来た。
「マサル、今日も薬草取りか」
「いや、薬草もだいぶたまったから、今日は薬作りだ」
「そうか、道具はあるのか」
「ああ、この中だ」
俺は異次元鞄から薬作りの道具を取り出す。
作る薬は。
「傷薬は、血止めと殺菌と化膿止の効能があればいい、あとは痛み止めの塗り薬だな」
「マサル、塗り薬だけか、薬と言えば飲み薬だろう」
「ああそうだな、飲み薬と言えば、解熱薬と整腸剤かな」
「風邪薬は無いのか」
「ちゃんとした意味の風邪薬は無いぞ、有るのは解熱剤と喉の腫れと痛みを取る薬、ぞれと頭痛薬を症状に合わせて飲むだけだ」
「そうなのか、今日一日で出来そうもないな」
「いや、これくらいな同時進行でなんとかは、無理だな、今日は塗り薬だけしよう」
「塗り薬だけでは、お店が寂しいくないか」
「ああ、作り置きの薬が異次元鞄に入っているから、それなりに店らしくなるぞ」
「マサルの鞄、猫型ロボットのポケットみたいだな」
「何だい猫型ロボットって」
「わからない、そんな気がしただけだ気にするな」
俺とギャは薬草採取と薬作りを繰り返し、それなりの量がそろうと村の集落にあるお店に並べた、
お店は、ロマンヌが用意してくれた。
しばらく空き店舗だったようで、まずは掃除からだ、掃除が終われば店に薬を並べる。
「マサル、この瓶からだぞ、からの瓶並べたらお客に失礼だ」
「いや、その薬はからの瓶でいいんだ、日持ちしないんでお客には異次元鞄の中のを渡すんだ。日持ちするやつだけ棚に置いておく」
「わかった。それで店番誰がやる、ギャは嫌だ」
「そうだな、ゴーグルをかけたままの店員は無しだな」
「外せばもっとマサルは嫌がる」
「そう言うな、村人全員がギャの目のことを知ってしまえば外せるが、時間がかかるな、そうすると薬屋は不定期営業になってしまう」
採取と薬づくりをやりながらだから、店は週に一日か二日しか開けられない。
「よろしければ、マサル様が店に出られない日は私がやりましょうか」
いつの間にかロマンヌがいる。頻繁に様子を見に来るな。
「お願いできますか、それと村長の娘に様付けで呼ばれては、村人達も嫌でしょうからマサルと呼んでください」
「わかりました、爺がお世話になった人ですけど、そうですねマサルと呼ばせてもらいます」
「ロマンヌさん、気にするな。あたいもマサルって呼んでる」
「そうね、それじゃあギャさんを見習って、マサル、店手伝ってやろう」
「『はい、お嬢様』ってなんでみんなマサルだと上から目線なんだ」
「「なんとなく、です」」
まあしょうがない、王都にいた時も、末っ子なので兄や姉からもマサルと呼ばれていからな、特に違和感は無かったが、呼び捨てはやめてもらい『マサルさん』で落ち着いた。




