114・フランチャイズの支店が出来ました
「姉貴、フランチャイズ二十店、成約おめでとう」
「おめでとう」
五月末、俺とギャはフランチャイズ契約の為の旅から帰ってきた。
ガーネとフェリンも帰って来ている。
「ありがとう、これもガーネとフェリンのおかげです」
「はい、カエデ様のお役に立ててうれしく思っております」
姉貴の感謝の言葉にガーネとフェリンは頭を下げる。
・・・って、俺は。
「あっ、そうそうギャちゃんも頑張ったわね」
「オー」
「あの俺は」
「マサルは社長でしょ。当たり前のことをして来ただけです」
ですよね。
「それでカエデ様、のこりの支店登録の為に名前を借りる薬師のところへは行かなくて良いのですか」
「うーん、それなんだけど。ちょっと予定が変わりそうなの。取りあえず、師匠達の紹介状付きで手紙を送ったんだけど、支店登録をしても良いと言ってきたのが十人で、残り十七人が保留したいそうなの」
「姉貴、完全に断ってきたところは無いんだね」
「ええ、それは無かったわ。カエデ製薬の支店登録に使用料を払うから名前と住所を借して欲しいという内容です。師匠達大御所の薬師の紹介状が付いていれば駄目とは言えなかったみたいです」
「フランチャイズみたいに異次元小袋を貸したり、採取者を雇うバイト代を出すとかは書かなかったんですか」
「異次元小袋は国の認可を貰わないと、これ以上は世に出せないのよ。それにバイト代も限界が有ったは」
「姉貴、俺の持ている熱交換魔具の権利だけでは足りないのか」
「ぎりぎりね。契約した採取者は二十五人になったの。採取に行く日だけの支払いだけど、かなりの金額になりそうなの。それにねマサル。これは手紙を出して返事をもらっただけ良いのよ」
「なるほど」
「マサル、何故なるほどなのだ」
「あれだろ、ダンブロア家が今度作る組合に入るのをやめさせるためだろ」
「カエデお姉さま、そうなのか」
「ええ、すでにカエデ製薬は王国中に二十三店舗あります。これに二十七人の薬師へ支店にならないかと案内しています。これでほぼ王都全域の薬師をカバーしました。
組合に入らずとも、やっていけるグループが出来たと言うことです」
「なるほど、あたいもわかったぞ。これは薬師だけでは無く、雇われた薬草採取者もいる。薬草の採取から流通、そして薬作りから薬の販売だ。そして薬師学校を乗っ取り、卒業生もカエデ製薬グループに入れてしまうのだ」
「そうなるわね、活動がはっきり見えてくれば保留にしている薬師も仲間になるはずよ。その為にもマサル、第三王子がサメル村に行く前に村に行きなさい。ガーネとフェリンもね」
「・・・第三王子が村に行くのか」
「ええ、第三王子は王族に中の異次元鞄の担当です。異次元猪を狩る村として視察に行くそうです」
「それって、裏で姉貴が動いたんだろ」
「何のためにですか」
「異次元小袋ですよ、小袋。これを国が認めればカエデ製薬グループの大きな武器になります。ですよね。その為に、サトシ兄さんを使って王子様を動かしたんでしょ」
「マサル。そんな力私に有る訳がないでしょ」
「・・・」
返事に詰まった。有ると思うが、裏付けが見つからない。
とにかく、俺たちはサメル村に向かうことにする。
当然、サメル行の定期荷馬車に乗ってだ。
「マサルさんって、もしかしなくても社長ですよね」
「ああ、ガーネ、そうだが」
「ガーネ、今更よ」
「あたいも、そう思うぞ」
「何を言いたいんだ」
「マサル、わかれ。マサル以外のバルノタイザン家の人がサメル村に行くときは馬車に乗るだろ」
「あっ、そう行くことか。いやー馬車は贅沢だろ。どうせこの荷馬車も村に行くんだぞ」
「さすがマサル。ケチだ」
「何回言わせるんだ、ケチではない倹約家の守銭奴なだけだ」
「そうだったな」
ケチじゃないぞ、使う所にはちゃんと使っている。
「それで、マサルさん。村に帰ったら何をするんですか」
「まずは、ムサイさん ザエルさん レダンさん、それに村長とロマンヌさん、それからラバル商事のラバルさんを入れて打ち合わせだな」
「ラバルさんもですか」
「ああ、村にいる魔獣牛とズンダダ森の牧場を何とかしないといけない」
「村にいる魔獣牛は大丈夫じゃない、あれって村人は魔獣だって知らないんでしょ」
フェリンだ。
「村人は知らないが、王子が属性:闇を連れて行かない訳が無いだろ」
「そっか、うまく隠さないとね」
「後は、ズンダダ森に行くとしても森の入り口の小屋までだな」
「行きますかね。それより知っているのかな」
ガーネの疑問はその通りだ。
「それも含めて打ち合わせだね。あと多分サトシ兄さんからムサイさんに詳細が行っていると思う。そこにズンダダ森をどれくらい王子が知っているか書いてあるんじゃないかな」
荷馬車に乗る俺とギャ、そしてガーネとフェリンではこれ以上話は進まない。
王子のことは後に回し、四人は荷馬車の荷台で無駄に時間をつぶしていった。
荷馬車はサメル村に着くと、まずは食堂サクラの前に停まる。
そこで、魔獣ロバの革で作った異次元鞄から食材を下ろし食堂の倉庫に収める。
王都から運ぶ食材は調味料や香辛料の他、村で取れない野菜や肉だ。
異次元鞄がもっと普及すれば、産地から調理場まで採れたて新鮮な食材を届けられるが、今は無理な話だった。
食堂サクラで食材を下ろすと、荷馬車は丘の上に有るバルノタイザン家の屋敷に向かう。
屋敷はバルノタイザン商会とカエデ製薬の事務所兼社員の住み家になっている。
ちなみに隣の使用人小屋は、ズンダダ森にラバル商会が小屋を建てる職人が住んでいたが、小屋作りの終わった今はラバル商事の看板とラバルさんが住んでいるだけだった。
屋敷に着くと、ガーネとフェリンは荷物を持って自分の部屋に行く。
俺とギャは、ムサイさん達に挨拶だ。
「こんばんわ」
サメル村に着いたのは夕方、すでに日は暮れている」
「マサル様、お帰りなさいませ」
迎えてくれたのはムサイさんだ。
取りあえず村に帰ってきた事を報告する。見ればわかるけどね。
「明日打ち合わせをするが、大丈夫だよね」
「ええ、サトシ様からも連絡が来ています。既に準備も始まっています」
さすがムサイさん。俺がいなくても大丈夫だな。
屋敷に顔を出した俺は、ギャと共に食堂サクラの裏に有る家に帰ることにする。
「マサル、長いこと留守にしたが、綺麗だろうな」
「大丈夫じゃないか、家に有る倉庫はノラバとシャクヤが毎日仕事で使っているし、村の子供に家の掃除は頼んでおいたはずだからな」
ギャは心配したが、家はきれいに掃除査定た。
そして、俺は夕食を異次元鞄から出しテーブルに並べる。
「マサル、これはいつ作った料理か」
「忘れた、気にするな」
鞄に入れておけば、入れた時のままだ。
夕食を食べ風呂に入り、俺とギャは久しぶりの家で眠りについた。




