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113・落ち着いたボイルさん

「ボイル様、定例報告です」

「ああ、順調なんだろ」


「はい、スターマイラル家の牧場もサメル村で生まれた魔獣牛が補充された為、数がそろいました」

「そうか」


「ズンダダ森に作った牛牧場も順調ですね。既に寿命や事故で亡くなった魔獣牛より確保できた革が四頭分になります」

「それはいざと言う時に使う、とにかく在庫を増やしておけ」


「はい、それとルンドリガンド家の保有する魔獣馬がいなくなりました」

「ああ、聞いている」


「それで、サメル村にいるラバルから、カエデ製薬のノラバが乗っている馬が魔獣馬ではないかと行ってきました」

「間違いないのか」


「確証は取れていないそうですが、多分そうだと」

「そうか、ズンダダ森に魔獣牛がいるくらいだ、魔獣馬がいてもおかしくは無いな」


「どうします」

「どうもしない、これ以上下手に動いてサメル村とズンダダ森でやっていることが世間に広まっては好ましくないからな」


「はい、何でも第三王子が近いうちにサメル村に行くそうなので、ラバルには対応しておくよう伝えておきました」

「第三王子か。異次元鞄の担当だな」


「ええ、スターマイラルとルンドリガンドの牧場視察を終え、今度は魔獣猪を狩るサメル村だそうです」

「そうか」


二年前、俺がギャと出会い王都からサメル村に向かう途中、ボイルさんの馬車を直して事が有る。

あの時ボイルさんは、王国中を回り魔獣牛を探していた。

牧場にいる魔獣牛の数が一定数を下回ると、魔獣牛の繁殖が出来ないからだ。


その頃ルンドリガンド家では魔獣馬の密売をしており、売りすぎて魔獣馬の数が減り、そしていなくなってしまった。

最後の数頭は密売先に持っていかれたとの噂もある。


魔獣牛や魔獣馬がいなくなると、国策でもある異次元鞄作りにも影響が出ていた。

ボイルさんのところへも魔獣牛革の追加が打診されたが、とても出せる状態では無く断っていたが、サメル村での魔獣猪を多く狩ることで、何とか外国からの注文をさばくことが出来た。


これには第三王子が他国からの新規注文を抑えてことも寄与している。


「異次元鞄工房よりの催促も無くなりました」

「ああ、やっと落ち着いてくれたな」


「あと」

「まだあるのか」


「これもラバルからなのですが、どうも異次元鞄を作るのは魔獣牛 魔獣馬 魔獣猪に限らず、魔獣なら出来るかもしれないと言ってきました」

「そんなことありえないだろ。今まで試してきたが成功した例は無いはずだ」


「理由はわかりませんが、ロバと兎で成功しているそうです」

「わかった、ラバルには引き続き調べるよう言っておけ。それとこの話は絶対に私以外に話しては駄目だからな」


「はい」

従者のブリッドは返事をする。


「魔獣の兎の革で異次元鞄が作れるのか」

魔獣兎の革で防寒着が作られたり、他の魔獣の革で作った防寒靴が有るのも知っている。

だがボイルにとって異次元鞄が作れるのは信じられない。

ましてや、兎の大きさでは鞄にならない。


「あの、あくまで私の想像何ですが、最近薬師が薬草が傷まない小袋を持っているとの話を聞いたことが有ります」

「薬師・・・、バルノタイザン家のカエデ製薬が絡むのか」


「はい、カエデ製薬とその支店で共通の小袋が確認されています」

「それが、異次元鞄だと言うのか」


「もしかするとですが。それに第三王子が自らサメル村に行くのも、ただの視察とは思えません」

「他に何を見て来るのだ」


「第三王子の友達にバルノタイザン家の次男サトシがいます。護衛騎士として一緒にサメル村に行きます」

「ああ、学生時代に親友になったと聞いている」


「魔獣兎の鞄が小袋だとして、それが保安上、問題に無いと認めるのは騎士団です」

「ああ、騎士警備省の管轄だが、実際決めるのは騎士団だな」


「第三王子がバルノタイザン家の次男とサメル村に行って、魔獣兎の異次元小袋を認めてもらうつもりでは無いのですか、王子から騎士団に、あれなら保安上問題ないと言えば、通る話です」


「なるほど、小袋とはいえ、便利だからな。欲しい人はいくらでもいるだろう」

「ただ、薬草と薬しか入れられないらしいです」


「王子の許可を貰いやすくする為の言い訳だろうな」

「でしょうね。入れる物に制限をかける方が難しいですから」


「カエデ製薬の話と言えば、ダンブロア家もバルノタイザン家を敵にして勝てる思ったのかな」

「ボイル様、ダンブロア家が作った薬師学校が乗っ取られそうなのと、薬師と薬屋の組合を作り計画が潰されそうなことですか」


「ああ、貴族の間では有名な話になっている。私もおやじからバルノタイザン家には逆らうなと言われていたしな」

「ですが今回は、ダンブロア家から喧嘩を売ってません。どちらかと言うとダンブロア家にケンカを売る為にカエデ様が薬師になったと思います」


「ありえないだろ、カエデさんが薬師を目指したのは十三年前くらいだったはずだ」

「良く知ってますね」


「私もあそこの長男のタカシと同級だからな。話は聞いていた」

「そうでしたか。それでダンブロア家はその前からは組合と、薬師の国家試験、薬師学校の計画をしていたそうです」


「まあ、わからないでもない。ダンブロア家の持っている権利は薬と薬草の流通販売くらいだ。

あれはかなり弱い権利だからな」

「ええ、もともと薬師はマルマ王国をはじめ各国が出来るより古くからおります。薬草採取をする冒険者やそのギルドもどの国より古くからあります。新たに権利を作ってもたいした収入になっていなかったはずです」


「それで、ダンブロア家に属さない薬師が反発したと」

「みたいですね」


「まあいい。私には関係ないことだ。とにかく魔獣鞄の件が落ち着いていることが大事だからな」

「そうですね」


従者ブリッドの報告はこれで終わった。

長い話だったが、中身は。


スターマイル家の魔獣牛の数が安定し、異次元鞄工房の注文に答えられること。

バルノタイザン家が第三王子を使い異次元小袋を認めさせること。

ダンブロア家が組合を作り儲けようとしたことに反発する薬師によって、カエデ姉さんが薬師になり、ダンブロア家の計画をつぶしていること。


この三つの話だった。

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