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112/414

112・フランチャイズ契約

薬師学校の後期が始まり、俺の代わりに姉貴が教壇に立っている。

教えるのは薬学ではなく薬屋の経営だ。


姉貴が教師をやっている間、俺は王国中をまわり、薬草採取者を採用している。

既に王都を出てひと月、もうすぐ四月だ。


「マサル、次はフランチャイズの支店を回るのだな」

「ああ、順番は姉貴から指示されている」

期間休み中に七店の契約は終えている。

この時は薬草採取者をバイトで雇うことが決まっていなかったので、後から手紙で通知した。


「ガーネさん達とかち合わない為だな」

「そうだ」

残りは十三店だがすでにガーネさ達が八店回っている。

残りで俺が回るのは三店だけで、二店はガーネさんだ。


「で、何を頼むのだ」

「まずはフランチャイズの契約、そしてフミさんやシズさんと同じ、薬草採取者をバイトとして雇ってもらう。当然バイト代はカエデ製薬持ちだ」


「そんなお金良く有ったな」

「ああ、キャメル家から入る熱交換魔具の権利金を使っている」


キャメル家のトーム冷機は馬車に付けるクーラーの取り付けと、冷蔵庫魔具と冷凍庫魔具の販売をしている。

それには熱交換魔具が使われ、魔具の権利を持っている俺にお金が入るのだ。

この金を使ってバイトを雇う。


「異次元小袋で商売が出来れば、もっと多くのバイトを雇えるぞ」

「小袋での商売は無理だろう。だけど近いうちに国の許可は取れそうなんだ」


「マサル、どんな裏技を使った」

「俺じゃない、タカシ兄さんが魔法省と厚生省に、サトシ兄さんが騎士警備省と騎士団に相談したんだ」


「マサルのお兄様二人はすごいな」

「学生時代の同級生をフルに活用している」

サトシ兄さんなんか、第三王子と友達になっているから。

その第三王子が魔獣と異次元鞄を担当することになったのが、異次元小袋が認めらそうになった大きな要因でもある。


「だが、どうやった。異次元小袋でもあたいみたいに剣を隠すことが出来るぞ」

「そうなんだが、魔力操作って思い込みが大事だったよな」


「ああ」

「異次元鞄は、魔獣馬 魔獣牛 魔獣猪の鞄でないと出来ないと信じられている」


「サメル村ではロバの革でも作れたのにな」

「そう、だから異次元小袋は薬草と薬師か出し入れ出来ないんだと、初めに説明してしまうんだ」


「そんなことで大丈夫なのか」

「異次元鞄もそうだが、入ると信じていないと入れることが出来ない。少しでも入らないんじゃないかと言う雑念が有ると、入れられないんだ」


「なるほど、それでフランチャイズに渡すとき、この小袋は薬草と薬しか入らないと言い含めるのだな」

「ああ、ガーネさん達もそうやっている」


薬屋シズを出て三日後。

俺とギャは姉貴に指定されている薬師の元を訪れる。


「ごめんください」

「どちら様ですか」


「はい、カエデ製薬のマサルです。お話は聞いていると思うのですが、カエデ製薬とのフランチャイズ契約の件でお伺いしました」

「・・・っと、本当に来たんですね。師匠を通じてお話は聞いています」

良かった。これで話は聞いてもらえる。

まあ、ガーネさん達を含めて今まで断った薬師はいないけどね。


薬師は俺とギャを店に有る客間に案内してくれる。

薬師や薬店はお客との会話を他のお客に聞かせたくないので、たいてい個室を用意していた。


「では、改めて自己紹介させてもらいます。カエデ製薬のマサルです。こっちは助手のギャです」

「ギャだ」


「よろしく、薬師のマリです」

「では、これが契約内容が書いてある書類です。よく読んで契約してもらいたいのですが、特にカエデ製薬には秘密が多いので守秘義務に対する罰則が多いです」


「はい、でも契約すると、薬草が手に入るのですよね」

「ええ、カエデ製薬と契約しているトート運送の馬車が定期的に回って薬草を配達します」


「でも、そうすると、薬草がすぐに必要な時はどうするのですか」

「それは契約しないとお話しできません」

薬師のマリはしばらく考えて。


「わかりました、契約しますので、聞かせてくれますか」

良かった契約してくれた。

フランチャイズの候補店は姉貴の師匠や師匠の仲間が選んだ店であり、既に身元の調査は終えてある。

なので、安心して異次元小袋の事を話すことが出来る。


「先ほどの、急に薬草が必要な時の話ですが、この小袋に常に入れて保存しておくことが出来ます」

「・・・えっ」


「この袋の中にいれれば、いつまでも新鮮なままです。トーム運送が持って来る薬草も取り立ての状態でお持ちします。また、出来上がった薬もそのままの状態で保存できます」

「・・・はいっ」

試しに俺は小袋から薬草を取り出してみせる。

それも、大量にだ。


「・・・どれも取れたてですね」

「当然です」

これは自信をもって言える。


「ただし、このことを他言した時はあなたの命にかかわりますから気を付けてください」

契約書にもそう書いてある。


薬師のマリに小袋を使うにあたっての魔力操作を教えると、さっそくマリは小袋に薬草を入れてみる。


「取り出すときは、必要な薬草を思いながら手を入れれば掴むことが出来ます」

魔力操作をしながらだけどね。

すぐにマリはコツをつかみ薬草や薬を出し入れしてみた。


「マサル、次は薬草採取者の件だぞ」

「ああ、わかっている。ところでマリさんは、薬草採取へは行っていますか」


「いえ、出来ることは出来るのですが、この辺の森は危険なので冒険者ギルドに頼んでますけど」

「・・・ますけど」


「薬草採取の上手な冒険者がいないんです」

「ですよね。そこでマリさんに薬草採取者のバイトをやっとって欲しいのです」


「そんな余裕は」

「ええ、バイト代はカエデ製薬持ちです。それに、この地図。薬草の分布を書いた地図です」

マリの町へは二日で着いたが、一日を地図作りに使った。


フミさんやシズさんに渡した地図と違い、それほど正確な地図ではない。

ガーネさん達もフランチャイズ契約の際、薬草分布の書いてある地図を渡している。


サメル村で一緒に薬草調査をし地図を作っていたので、ガーネさん達も作れるのだ。

そのガーネさんが作る大まかな地図に合わせている。


地図と薬草図鑑、薬草採取のマニュアルが有れば、下手な薬草採取しかできない冒険者でも何とかなるはずだ。


「わかりました。バイトは私の方で探してみます。見つかったら連絡すればよろしいのですね」

「ああ」

これでマリさんの手続きは終わった。


「マサル、優秀な薬草採取者が来るといいな」

「そうだな」

ギャには『そうだな』と返事をしたが、フランチャイズで雇う採取者の四分の一でもまともなら上出来だと思っている。


そして残りの薬師のフランチャイズ契約を終え王都に帰ってきたのは五月も終わりのころだった。

誤字報告ありがとうございます。訂正しました。

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