111・カエデ製薬町営店 薬屋シズ
薬屋フミの有る街から薬屋シズが有る村まで三日で着いた。
王都を挟んで反対側に有るので三日もかかったのだ。
「マサル、やっと着いたな」
着いたのは夕方、とりあえず宿を探し泊まることにする。
「ああ、ギャに合わせたからな」
二人ともバフをかけて走ってきた。
ギャに合わせても馬車よりは早い。
薬屋シズのある村は、村としては中規模であり当然宿屋はある。
空いている部屋が有り、無事泊まることが出来た。
翌朝、俺とギャは薬屋シズに向かう。
「おはようございます。マサルです」
「はーい、もう着いたの。早かったわね」
王都を出て薬屋フミの次に行くことは連絡してある。
俺とギャで走ってきた分早く着いていた。
シズさんもフミさん同様、初めは姉貴と同じ師匠に弟子入りし修行していた。
そのせいもあり、独立した五人の薬師は、俺を社長と呼んでくれない。
「マサルさん、連絡はもらっているけど、この店は薬草採取者を雇うほど大きくないわよ」
「シズさんの所では、薬草が足りているんですね」
「ええ、カエデ製薬から送ってもらうほかに自分でも取りに行ってるからね」
「オー、さすが村の薬師、何でもやるのだな」
「えっと、マサル。この子は」
シズさんがギャに気付く。
白い瞳を隠す為ゴーグルをしているギャだ。
何者だと思うだろうな。
「一応俺の奴隷。名前はギャ」
貴族の息子の俺に奴隷がいるのは不自然なことでは無い。
「はー、マサルさんが奴隷を持ったのね」
シズさんも普通に認めている。
「シズさんとやら。マサルは良くしてくれるぞ。心配ない」
「そうなの、ならいいけど」
「で、シズさん。薬草が足りているのはわかったが、この村で薬草採取をやりたい人はいないのかな」
シズさんにも異次元小袋は渡してある。
薬草はどれだけとっても保存できるので、薬草採取者はいた方が良い。
「うーんどうかな。みんな忙しいから、薬草採取まで手は回らないと思うの」
「大人じゃなくて子供ならやりたい子がいるんじゃないか」
「そうね、声を掛けたらいるかも」
「なら、バイトとして雇ってくれないか。バイト代はこっちで持つから」
「あらバイト代を出すの。ならやりたい子はいるわよ。薬草の買取だけだと、取れなかったとき収入がないでしょ。だからやり手がいなかったの」
「ではそう言うことで頼む。俺とギャは村の周辺の薬草を調べてくる」
俺とギャは二日掛けて村の周辺の地図を作り薬草の分布を書き込んでいく。
ついでに薬草採取もやってきた。
シズさんの村に着て三日目。
「おはよう。これ村の周辺の薬草の地図と、ついでに取ってきた薬草」
薬屋シズに着いた俺は、出来上がった地図と採取した薬草を渡す。
「ありがとう。っつ、ねえマサルさん。この地図正確過ぎない」
「ああ、だから誰にも見せないで欲しい」
正確な地図はフミさんとシズさんにしか渡さない。
フランチャイズの店や名前と住所を借りた薬師には、もっとあいまいな地図を渡すことにしている。
「ええ、わかったわ。それでもうじきバイトに決めた子が来るんだけど会っていくわよね」
「もちろん」
しばらくすると、シズさんの店にバイトに決まった子がやってきた。
子供と言うにはちょっと大きいかな。
「おれシン、十三だ。よろしく頼む」
十三歳と言うと、すでに働いている歳だ。バイトに来ていいのか。
「よろしく。確認だが、あくまでバイトだぞ、期待するほどの給料では無いだろ」
「ああ、理解している。ただバイト代の他に採取した薬草を買い取ると聞いた」
「そうだが」
「シズさんに確認したが、採取しながら獣を狩っても良いと言われている」
「大丈夫か、獣狩りに夢中になって薬草採取を忘れたらバイト代出さないぞ」
「問題ない」
「シズさんそうなのか」
「大丈夫よ。その子小さい時からお父さんと森の中を駆け回っていたから」
「ああ、親父は木こりだ。護衛などつけていたら稼ぎにならない。自分の身は自分で守りながら木を切っている。俺もおやじから獣の倒し方は教わっている。森の中を歩き回るのは自信が有るのだが、薬草の知識は無い。シズさんがそれでもいいと言ってくれた」
「わかった、今日と明日一緒に森を回ろう。基礎的な採集方法を教える」
「そうか、では行こう」
十三にしては俺よりしっかりしている。
やはり毎日のように命を懸けて森に入っているせいかな。
「よし、薬草のある場所は調査済みだ、着いてこい」
「おお」
シンを連れて森へ向かう。
当然ギャもついてくる。
シンに見られないよう異次元小袋から剣を出し背中に背負っている。
「マサルさん、森にその子は無理だ」
「そんなことないぞ、猪くらいなら一人で倒せる」
「ほんとうか」
「ああ、それより俺とギャに付いてこれるかな」
ずるいが俺とギャは軽くバフをかける。
「マサルすごいぞ、ついてくるぞ」
「すごいな」
ついてきている。確かについてきているが、その顔は険しい。
薬草のある場所が近づいたので、走るのをやめると。
「お前たち何者だ。何で森を早く走れる」
「俺は冒険者でもある。ギャは俺が鍛えた。それだけだ」
ズルしてるけどね。
そして薬草を見つけると、図鑑と照らし合わせ確認させる。
採取の手本を見せ実際にやらせて見せると、器用に採取してみせた。
「これくらいなら簡単だ。薬草でないが食べらる草や木の実は取っていたからな」
なるほど。
こうして二日間だが、みっちりシンに採取方法と地図と図鑑の見方を教えた。
「マサル、お約束が無かったな」
「あれか、突然凶暴な獣が襲って来て、シンがたじたじの所をギャが助けると言うやつか」
「そうだ、ギャの強いところを見せられなかった」
「そうだな」
猪って凶暴な獣から外れたんだ。採取をしながらシンは三頭は猪を倒しているぞ。
すぐに俺のようには採取は出来ないだろうが、才能は有る。
シズさんも自分で薬草採取をしている。
シンならシズさんの護衛も出来る。
二人で採取に行けばシンの腕も上がるだろう。
王都の中に有る残りの支店では採取者を雇う必要が無い。
次はフランチャイズの店だ。
「ギャ、行くぞ」
「オー」
俺とギャは次の町に向かうのだった。




