110・カエデ製薬直営店 薬屋フミ
「こんにちは」
「はーい、どちら様」
「えーと、マサルと言います」
「マサルさんですね。どんなお薬が必要ですか」
「あのー、お客ではなく、社長のマサルです」
「・・・、えっとマサルちゃん、なの」
うん、ここは薬屋フミ、フミさんは姉貴の弟子の中で一番古い。
薬屋カエデで修業しているとき子供の俺と会っている。
カエデ製薬を作った時、姉貴の弟子の店『薬屋フミ』『薬屋シス』『薬屋ミナ』『薬屋ムツ』『薬屋キズ』を弟子の方に社員になってもらい支店にしている。
王都の外に有るのが薬屋フミと薬屋シスだ。
薬屋フミは王都から南に二つ目の町にある。
「マサル、支店を回っていなかったのか」
「ギャよ、一緒にいたからわかるだろ、何処にそんな時間が有った」
「そうだったな」
「マサルちゃん、じゃなかったわね。社長、入ってください」
薬屋フミ、一応客室があた。
そこに入り、俺が来た事情を説明する。
社内便で計画そのものは通達してある。
「そうね、いい計画だと思います。でも此処には必要ないかな」
「ええ、フミさんのところはカエデ製薬から薬草が回っています、それでも出来ればここでもお抱えの採取者を作っておきたいのです」
「それって、ダンブロア家の採取者に対抗すると言う事なのかな」
「うーん、相手が対抗できるだけの採取者なら良いのですが、俺の知る限りダンブロア家には腕の良い採取者はいません。真の目的は腕の良い採取者を育てることです」
「じゃあ、ダンブロア家の採取者が教えて欲しいと言ったら教えるの」
「多分ですが、やる気のある採取者はこちらに鞍替えすると思います」
「根拠は」
「お抱えになっても、誰も何も教えてくれないからです。既に教えられるような採取者は途絶えたと思っています」
「まあ、そうだけどね」
フミさんも状況はわかっている。
「取りあえず、採取者の募集とギルドに行って薬草採取をやりたい冒険者を探してみます」
「わかりました。って、ねえマサルちゃん、社長よね。それって社長が自らやる仕事なの」
「はい、フミさんならわかると思いますが、実質の支配者は姉貴です」
「まあそうか、そうだったわね。頑張るのよマサルちゃん」
フミさんせめて、社長がマサルさんと呼んでくれ。
姉貴の弟子と言っても、あまり姉貴と歳は違わない。
特に独立した五人と姉貴は仲間みたいなものだ。
それは姉貴の師匠のところで一緒に弟子をしていたからだ。
そしてなぜだが一番初めに独立した姉貴の店に、五人がついてきて弟子になっていた。
理由を聞くと。
「やっぱ、貴族の薬師の弟子の方が顔が効きそうじゃん」
だった。
良く姉貴の師匠が認めたものだ。
そのあたりのいきさつを説明すると大変なので此処までとする。
「それでマサル、まずは何をする」
「まずは、薬草の分布図入りの地図を作る」
ギャと言う測量機が有るのだ、正確な地図が作れる。
この町も冒険者になってから何回か薬草採取に来ている。
だいたいの事は把握しているので、三日で地図は完成した。
「・・・なにこれ、これが有れば誰でもできるでしょ」
「フミさん、フミさんは薬草の知識が有るからそう思うだけです。普通の人では何が何だかわからない地図です」
「そうか、マサル。これだけ書いてあれば、新人採取者でもベテラン採取者並に出来るだろ」
「だから、ギャも採取の知識と技術が有るからそう見えるんだ。そう見えるように教えないといけないんだぞ」
「大変だな」
「・・・ああ」
ギャもサメル村では子供に薬作りを教えており、教えるのが大変なのは知っている。
「マサルさん、この地図を冒険者ギルドに渡せば薬草採取出来るんじゃないの」
「昔やったよ。いくつかのギルドに地図を渡したんだが、みんなが同じ採取場に行って駄目にした。新しい情報も書き加える事も出来ず、二年でただの紙っぺらになった。それに今度の地図はあまりに正確だ、こんな地図持ち込んだら軍部から目を付けられる」
薬草採取の為には正確な地図の方がよい、だが地図は軍部にとって最大の機密項目だ。
作れることわかれば、軍に身柄を確保されてしまう。
「そうね、これはカエデ製薬で管理しないと駄目な地図みたいね」
さすがフミさん、その辺のことはわかってくれる。
「フミよ。我とマサルが地図を作る間、採取者の募集に現れたものはおらんかったのか」
「ギャちゃん、その言い回し何処で覚えたの」
当然、奴隷商にいた頃だろうな。
「フミさん、ギャの言い方はともかく、来たのか」
「ええ、二人ほど」
「少なくないか」
「やはり、ダンブロア家の目を気にします」
「で、使えそうなのか」
「一度一緒に採取に行けばわかると思います」
「そうか、早速行きたい。明日行くから連絡しておいてくれ」
「はい」
フミさん、ギャの影響か言い方がおかしくなっている。
あの言い方だと駄目な人が応募してきたみたいだろ。
そして次の日きたのは。
「俺はゾロだ」
「あたしはコナ、よろしく」
四十過ぎのおじさんと、八歳の女の子だった。
経歴を聞くのも面倒だが。
「ゾロさんは、獣のいる山や森は大丈夫ですか」
自分で守れないと護衛を雇うことになる。
「ああ、そっちが本業だ。だが時代は多様化に進んでおる。その為に薬草採取を覚えたい」
なるほどダンブロア家の目を気にしないはずだ。
八歳のコナは一人で森は無理だな。
「マサル、コナは拾い物だぞ」
「ギャよ、落とし物みたいに言うな、それでコナが属性:光だとか言うなよ」
って、この子、魔力操作下手だぞ、光なのが駄々洩れだ。
「おーいフミさん、緊急会議だ」
「なんですか」
「この子の履歴書見せてくれ」
「マサルさん、履歴書なんかあるわけないでしょ。この子は普通にこの町の子です」
町の子、なら魔力検査やっているはずだが。
「コナちゃん、魔力検査やった」
「やったよ。青く光ったから水だって」
だが俺とギャの感じるのは光だ。
「マサル、光の三原色を知っているか」
「ああ、青と赤と緑の光を合わせると白く光るやつだろ」
「検査の時に三つの光のうち青だけが検査機に反応したのではないか」
「そんなこと無いだろ。だがそうするとあれか、炎と風と水の操作が出来ると光になることになる」
「それは無いはずだぞ、光は光だ。ただコナの魔力操作に癖が有って検査機が上手く動作しなかった可能性は有るぞ」
なるほど、検査機は完全じゃないんだな。
もしかすると意外と光や闇の人って多いのかも。
それにしても、いくら奴隷商で色々聞いてきたとはいえ、ギャの知識はすごいな。
検査機の不備はラッキーだ、既に水の判定をもらっていれば教会に目を付けられない。
コナにも光だとは伝えず、薬草採取のコツとして教えればいいことだ。
この二人を組ませればフミさんが使う薬草は十分手に入りる。
それから三日でゾロとコナの研修を終えた。
もともと山や森を駆け巡れるゾロと、薬草の魔力を感じ取れるコナだ。
薬草図鑑と薬草の採取方法を書いた本は薬屋フミに有る、これに俺の地図が有れば鬼に金棒、何でも来いだった。
ゾロとコナの研修を終えた俺とギャは、薬屋シスの有る村に向かった。




