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106・取りあえず薬草を売ります

「ただいま」

「帰ってきたぞ」


俺とギャは薬師学校を終え、屋敷に帰ってきた。


「マサル様、カエデお嬢様がお呼びです」

「わかった」

屋敷にいる数少ない使用人が、帰って来た俺に姉貴が呼んでいると伝える。


トン トン トン

「マサルです」

「入って」

屋敷に有る姉貴の仕事部屋に入る。


「姉貴、早いな」

学校が終わるのは午後四時だ。

ロバを使って帰って来るので、まだ五時にはなっていない。


「ええ、最近事務仕事は此処でしているから」

「そうなんだ」

まあカエデ製薬の一部門になった薬屋カエデには姉貴の他に三人の薬師がいる。

事務処理をする社員もいるし、見習いのジルもいる。

姉貴が屋敷にいても大丈夫なのだろう。


「マサル。ダンブロラ家の息のかからない薬師たちが困っています」

「いきなりだが、薬草が行き渡っていないのだろ」


「そうです」

「ダンブロラ家の薬草屋が買い占めていたな」


「それだけではなく、上手な薬草採取者がいないみたいですね」

「ガーネさん達のような薬草採取者や冒険者がいないと言うことか」


「そのようです」

「うーん、でもゴモスで薬草採取者に少年に弟子にしてくれって頼まれたぞ、薬草採取者がいない訳じゃないだろ」


「マサル気が付け。あの少年が弟子入りを希望した。何故なら、ゴモスで薬草採取を教えてくれる人がいないからだ」

「そうよマサル。ギャちゃんの言う通りなの」


「そうかな、冒険者ギルドには薬草図鑑が有るし、薬草が有りそうな場所も教えてくれるはずなんだが」

「その、ありそうな場所を調べてギルドの教えていたのは、マサルあなたでしょ。冬休みに分布図が古くなったから調べなおしに行って来たでしょ」


「そうだった。学校が始まって冬休みのことはすっかり忘れていた」

「そう、忘れていたのね。ギャちゃん、確かマサルはゴモスの冒険者ギルドから薬草代まだもらってなかったわよね」


「オー、今度の期間休みに取りに行くぞ」

「マサルは忘れているみたいだからギャちゃん、全部もらっていいわよ」

「オー、それは素晴らしい」


「ま、待ってくれ姉貴。三日間フルに採集したんだぞ」

「ギャちゃんも一緒だったんでしょ」

「そうだ、マサル、あたいも一緒だった」

「・・・・まったく」

まあしょうがない、ゴモスの分は諦めるか。残りの村や町を回った時に採取した薬草は俺の鞄の中に有るからな。


「それと、マサルが持っている薬草はすべて渡してもらうわよ」

「へっ、それはかんべんしてくれ」


「駄目です。それくらいマルマ王国の薬師に薬草が足りていないんです」

「それで、俺の薬草をどうするんだ」


「トート運送のワサイさんは知っていますね」

「ああ、ノラバのおやじだ」


「ワサイさんに頼んでトート運送で薬草を売りに回ってもらいます」

「えっと、売ると権利金をダンブロア家に払うんだよね」


「当然そうなります。カエデ製薬を作った時、うちで採取した薬草を販売した時は権利金を払う契約をダンブロア家としてあります。と言うかさせられました。それでも何とかカエデ製薬内で使う分には権利金を払わないようにしたのですが、今はそんなことを言っていられない状況なのです」

「わかった、何処に出せばいいんだ」


「こちらの鞄に入れてください」

「それって」


「ええ、サメル村で四つ目の異次元鞄です。あと、二十ほど異次元小袋も用意してもらいました」

「はいっ」


「ズンダダ森で異次元兎が大量にとれたそうです」

「はいっ」


「ガーネ達はあなたの管轄でしょ、聞いてないの」

「はい」

「駄目ね」

俺は今学校で忙しいんだぞ。余程のことが無い限り、サメル村にいるザエルとレダンに任せている。

彼らには魔獣兎を大量に取れたことは余程のことではないらしい。


「マサル、ザエルさんとレダンさんは魔獣に詳しくないんだぞ。ガーネ達なら取って来るのが当たり前だと思っていても、不思議ではない」

ギャに補足されてしまう。そう言うもんなんだな。


「でも姉貴、薬草はワサイさんが運ぶとして、後はどうするんだ」

「異次元小袋二十は支店の数です。王国中に二十の支店を作ります」


「当ては有るのか」

「師匠に連絡してあります。師匠の薬師仲間から二十人を選んでもらっています」


「で、俺は何をするのかな」

「期間休みを使って、ワサイさんと支店を作る街や村を回って支店契約をするのです」


「契約はフランチャイズで良いんだな」

「ええ、ほとんどが個人の薬師です。しばらくは仲間に売るだけになると思います」

それでも二十の村や町の薬師に薬草が行き渡る。


「マサル、次の休みも旅だな」

「ああ、そうなった」


これでマルマ王国内に支店が二十五店出来ることになる。

既にある五店はカエデ製薬の直営店だが、残りは個人経営者とのフランチャイズ契約だな。


これだと、カエデ製薬から卸した薬草に契約金が発生する。

それでも姉貴はやると言った。

どれほど薬草が足りないんだよ。


そした薬師学校の前期が終わり、今日から期間休みだ。

メリッサ達正式の教師は学校に行く用が有るらしいが、用務員であり、学校からお金の出ていない俺はきっちりと二週間休む。


「おはようございます」

「おはよう」

「おはようなのだ」


朝早く王都のカエデ製薬の前に荷馬車に乗るワサイさんと待ち合わせた。


「ワサイさん、二週間の間よろしくお願いします」

「はい、それで予定表を貰ったのですが、二週間で回るのは七店でよろしいのですね」


「ええ」

「マサル、支店は二十有るぞ。七店では少なくないか」


「ギャ、二週間しかないんだぞ。荷馬車ではこれが精一杯だ。だから特に薬草の困っている所を選んだ。後はおいおい契約に周ることにしてある。」

「そうか」


「では行きましょう」

ワサイが御者に荷馬車を出すように言う。


「マサル。ワサイさんが御者をやらないのか」

「ワサイさんはトート運送とトート交通の役員だぞ。やるわけ無いだろ」

「マサルは社長でもやらされるな」

「・・・それを言うな」


こうして俺とギャは薬師たちと支店契約をしていく。

契約が済むと薬師に薬草の入った異次元小袋を渡し。


「この袋に入れれば薬草は新鮮なままいつまでも持ちます。薬も同様です。同じような鞄を配達の荷馬車にも積んでいますので、新鮮な薬草を届けますから」

当然、小袋と鞄のことは誰にも言わないよう念を押す。


「ありがとうございます。これで薬を売ることが出来ます」

姉貴の師匠の紹介の薬師だ、腕も人柄も確かなんだろう。

薬を待っている人が沢山いるみたいだ。


こうして二週間、七人の薬師と支店契約が終わった。

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