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104・怖いお話

「マサル、最近壁に向かって呟かないのだな」

「呟いて欲しいか」


「・・・欲しいことにしてやる」

「じゃあ、聞いてくれ。魔獣馬を扱っているルンドリガンド家の当主の弟がいなくなった」


「当主でなく弟なのか」

「ああ、ルンドリガンド家は馬の流通販売の権利が有る。牧場も所有し育ててもいる。そちらの仕事は当主がやっているのだが、魔獣馬の管理は当主の弟がやっていたんだ」


「それがいなくなったと」

「ああ、行方不明らしい」


「何でだ」

「ルンドリガンドの牧場には魔獣馬が一頭もいないらしい」


「何だと、どうしてそうなった」

「ルンドリガンドでは魔獣馬の革を密売していたんだ。その為に国に登録しない魔獣馬まで飼っていたんだ」


「登録しない馬がいればいなくなることは無いだろ」

「後は想像だが、国に売る前にすべての魔獣馬の革が密売先に売られたのだろうな、それで牧場には魔獣馬がいなくなったんだ」


「そんなことになったら、最悪ルンドリガンド家はお取り潰し、最低でも爵位が降格するだろう」

「ルンドリガンド家はプラチナ爵だろ。多分王家の血が入っている。簡単にお取り潰しにはならないし降格も出来ないな」


「まさか、ルンドリガンド家がトカゲのしっぽ切りで弟を始末したのか」

「そんなことで、国に対しての謝罪にはならない。密売先に口封じの為に殺されたんじゃないか」


「怖いな」

「ああ」


「だがそんな話良くマサルが知っているな」

「サメル村にいるラバル商事のラバルさんから手紙をもらった」


「ラバルは何処から聞いたのだ」

「今、彼はラバル商事の経営者だが、ボイルさんが送った人だろ。ラバル商事もボイルさんが作った会社だ」


「そうか、ボイルさんのスターマイラル家もプラチナ爵だな。美味いこと情報収集をしたんだ」

「そうらしいな。そしてラバルさんはボイルさんに信用された腹心だと言ってる」


「そのラバルが、何でマサルにそんな重大で重要な情報を渡すのだ」

「俺が知っておく必要が有るのだろうな。今魔獣の革を提供しているのはスターマイラル家とルンドリガンド家と俺の家だ」


「そうだったな、二つはプラチナだがマサルはシルバーだ。格落ちも良い所だな」

「あっちは自分の牧場で魔獣を飼育しているが、俺のところは森で狩っているだけだ。狩ってきた猪がたまたま魔獣だっただけだからな。それと、ズンダダ森で牛の牧場が出来ただろ」


「ああ、お亡くなりになった牛に魔獣牛がいて、何枚か革が手に入ったらしいじゃないか」

「そうだ、その上村で飼っている牛からも魔獣牛の子供が生まれた。ボイルさんにしてもサメル村が重要になっている。だから俺をしっかり手のうちに入れておきたい、だからある程度情報の共有も必要だと考えたんだろうな」


「なるほど、よくわからん」

「だろうな」


「そして、マサル」

「接続詞がおかしいが、なんだ」


「二つ聞く。魔獣馬がいなくなったら異次元鞄の供給が出来ず、発注元の国から怒られないか。それとルンドリガンド家の密売先は誰で何のために魔獣の革を必要としたんだ」


「二つじゃないな、細かくは三つ聞いているぞ。まあいい、一つ目は他国からの受注を抑えていたのと、魔獣猪の革の異次元鞄でも納得してくれたので、大きな問題にはなっていない。二つ目だが密売先はわかったいない。以前サメル村が納品した魔獣猪の革をすり替えたのも此処だと思われているが確証は無い。だから使い道はわからないな。普通に考えられる公に出来ない使い方だと、まずは密売だがな」


「密売に使うのか」

「ああ、何と言っても異次元鞄に入れたものは重さが無くなる。鉄鉱石だろうが鞄に入る大きさなら歩いて運べるからな。後は考えたくないがクーデターに使える」


「そうだな、大量の武器を隠しておける」

「大砲は入らないが、銃や剣なら入るからな。火薬も湿気ないし保管場所としては最高だな」


「暗殺はどうだ」

「あんな大きな鞄を持ち歩いたら暗殺には使えないだろ、だったらギャも持っている異次元小袋の方が使いやすい」


「そうだな、あたいも剣を入れているからな」

「そうだった、それはまずいな。誰かが暗殺の為に異次元小袋使ったら、管理責任で俺も摑まる」


「やばい奴には渡していないのだろ、今は大丈夫だ」

「そうなんだが、たぶん新鮮な薬草を王国中に配送するために異次元小袋に入れてトート運送で運ぶことになるんだ」


「トート運送は『サメル村の会』の会員だろ。大丈夫だ」

「そうだが、盗まれた時を心配した」


「盗まれても、あれが異次元小袋だと気づかれない」

「確かに、あの小袋が異次元小袋だと認識して魔力を流しながら出し入れしなければただの兎革の袋だな」

他の魔具は魔力を入れれば起動する。

別に『光れ』と念じながら魔力を入れなくても照明魔具は光る。

だが、異次元鞄や小袋は違うのだった。


「だがマサル。異次元小袋は国に認めてもらう必要があるな」

「ああ、それはタカシ兄さんとサトシ兄さんにお願いしている」


「官僚のタカシお兄様はわかるが、騎士のサトシお兄様はなんでだ」

「それこそ、武器が入れられるからな。騎士や軍部の許可がいるらしいんだ」


「包丁でも人は殺せるからな、何でも使う人次第だ。異次元小袋は薬師にとって重要なアイテムだ、何としても許可をもらえよ」

「言われなくてもわかっている。バルノタイザン家だけの許可なら取れると思うんだ」


作れるのは魔力属性:闇だけで、魔法付与もサメル村の属性:闇の人しかできない。

カエデ製薬の社員はサメル村で作っていることは知っているが、他の人に知られてはいない。

これがバルノタイザン家なら許可が取れそうな根拠だ。


「マサル、許可の為に王族がサメル村に視察に来てしまわないか」

「それはあるな、異次元鞄の工房はお城の中に有るし、魔法省の直属だ。王族の異次元鞄の担当と魔法省のお役人が来るだろうな」


「サメル村の大変だな」

「その時は、俺ではなく親父と村長に対応してもらう。何と言っても村長は王族の血を引いているからな。後はタカシ兄さんか、魔法省に入った友達がいたはずだ。ついでにサトシ兄さんな、護衛でついてくるかもしれない」


「何でだ」

「えっと、王族の異次元鞄の次の担当が第三王子で、サトシ兄さんの同級生だ」


「何と、王都学校は都合のいい同級生を作る所だな」

「・・・否定はしない」


そして俺は第三王子と会い、王子が他国を訪問する時に調理人として一緒に行くことになるのは、もう少し先の話だ。


(作者 注)訪問理由の裏にギャが絡むと言う、構想は有るけど書くかどうかは決めてません。

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