103・冬休みが終わり学校に行きます
パカパカパカ パカパカパカ
「マサル寒いぞ」
「そうだな、魔獣革の服を着ていないのか」
「そうだった、魔力を流すのを忘れていた」
魔獣兎の革は、なにも異次元小袋だけのものではない。
魔獣兎の革で作った服に、暖房の魔法を付与すると防寒着の魔具になる。
「ギャ、履いている靴も魔獣革のだろ」
「オー、マサルに買ってもらった赤い靴は大事に取ってあるが、ロマンヌさんからもらった靴も魔獣の革製だったな」
貰っていないぞ、薬草取りに森に入る時にロマンヌさんから買った靴だ。
俺も服と靴に魔力を流す。
温かさは、流す魔力の量次第なので、調整は自分でする。
「マサル、足が熱いな」
「魔力を抑えればいいんだ」
「オー、そうだった」
ギャは魔力操作力が大きいからな。調整が難しいのだろう。
屋敷からロバでバルノタイザン商会に行き、そこから歩いて学校に着いた。
「ギャ、冬休み明けだが、いつも通り用務員の仕事をしてくれ」
「オー」
「くれぐれも言うが、気に入らない用務員がいるが、殺すなよ」
「手加減しているぞ」
去年は言った用務員のジャックの事だ。
平民のロバートは一生懸命に仕事をしているが、貴族の息子のジャックは何もせずに、逆に邪魔をしてばかりだ。
俺は用務員室に上着を置くと職員室に向かう。
以前は異次元鞄い仕舞っていたが、ローバトやジャックには異次元鞄を見られたくないので、仕方なく用務員室の壁に掛けることにした。
「冬休みも終わり、今日から授業だ、頑張ってくれ」
それだけ言って、校長は校長室に戻っていく。
「ヤヨさん、まだ教頭は来ないのですね」
「ええ、予定では後期からですね」
「シー、ですよ。マサルさんヤヨさん」
「大丈夫よカスミ、職員室には聞かれてまずい人はいないでしょ」
「メリッサがいるでしょ」
「・・・メリッサでしょ。いつもボーとしている」
「いや気を付けた方が良い、天然に見えせ掛けて実は切れ者かもしれないからな」
「そうですねマサルさん」
教頭の話は姉貴の師匠とその仲間たちが話を進めている。
ダンブロア家がよっぽどのんきでない限り、そろそろ嗅ぎ付けられてもおかしくない時期だ。
「あー、聞いてるよ。新しい教頭が来るんでしょ。なんかすごい人だってね」
「メリッサ、知っているの」
「うん、お父さんから聞いた」
「メリッサのお父さんって薬師だっけ」
「そう、ダンブロア家系の薬師の間で噂になっているの。あの人が言ったら今の校長も口出しできないって、ダンブロア家も潰せないくらいの大物らしいわよ」
「って、メリッサ、それ言って良いの。私達って敵なはずじゃないの」
「あー、そうだったね。ゴメン聞かなかったことにして」
うん、やっぱり天然だ。でもわざと情報を流したのなら切れものだな。どっちだ。
だが、後期から教頭が来るのは確定した。
それも超大物で校長も口出しできない人だ。
そんな人、俺の記憶にない、帰ったら姉貴に聞いてみよう。
そんなこんなが有ったが、俺はメリッサと一緒に二年の教室に向かう。
さすがに冬休み明けに実習は出来ないので、今日は座学だけだ。
「おはよう」
「「「「「おはようございます」」」」」
いいなー、きちんと挨拶が返ってくるって。
「では授業を始める」
「「「「「はい」」」」」
生徒の机には五人しか座っていない。
メリッサは正面黒板の脇に座っていた。
二年生の前期も残りひと月とい週間だ。
後期になると、薬師としての経営も教える。
帳簿の付け方や、薬草や薬の在庫管理の仕方。
顧客情報の管理も大事だ。
教えることが多い。
授業の合間に。
「メリッサは、薬師や薬屋の経営を教えられるのか」
「えっ、何の事かしら。私は学校に来る前は薬師のところで働いていたのよ。薬作りしかやっていないのが当たり前でしょ」
メリッサでは薬師の経営を教えるの無理だな。
俺もサメル村で薬屋をやってはいたが、村人だけの少人数のお客しか相手にしてこなかった。
街中で開業している薬屋の経営を教える自信はない。
これは姉貴に相談して、誰か派遣してもらおう。
どうせなら、姉貴が教えるのも有りだな。
まあ、これは期間休みに決めれば良いこただ。
午前中の授業を終え用務員室に行く。
昼の食事はギャと一緒に用務員室で取っている。
幸いなことに貴族の息子のジャックは。
「お前らとなんか一緒に食えるか」
とか言って、学校近うのレストランに行っている。
どれだけお金持ちの貴族か知らないが、王都第四区にあるレストランは高い、良く毎日通えるものだ。
「いただきます」
平民のロバートはお弁当を持ってきて、俺たちと一緒に用務員室で食べている。
俺もギャの分と一緒に鞄から弁当を出して一緒に食べる。
「マサルさん、いつも不思議に思っているのですが、冬なのにマサルさん達のお弁当のスープから湯気が立っていますよね。どうしてなんですか」
「これか、これは保温の魔具に入れてあるんだ」
「マサル、保温の魔具など知らないぞ」
「ギャ、魔獣の革で作った服と同じだ。魔力を流すと温かくなる袋が有るんだ」
「そうなのか」
「ああ、有るんだ」
ギャガ疑いの目で俺を見る。
有ることにする、じゃあ無かった、保温の魔具は本当に有る。
だが、いちいち魔力を充填するのが面倒なので、実は異次元鞄に入れていた。
「これだな」
魔獣猪の革で作った鞄を見せる。
そして魔力を流すと、仲が温かくなった。
「マサル、本当にあるんだな。だが、せっかくの魔獣猪の革で作った鞄、異次元鞄にしないのはもったいないじゃないか」
「ギャよ、異次元鞄はお城に有る工房以外では作っていないだろ、それに一度温かくなる魔法を付与した革は異次元鞄には出来ないことは昔説明したはずだ。たまたま、間違って魔法を付与してしまった革は、温かくなる服か保温袋にするんだ」
「オー、そうだったな」
「マサルさん、もしかして魔力で温かくなる服を持っているんですか」
「ああ、ギャも来ているし、二人の靴もそうだな」
これは隠すことでもないが、今は魔獣の革が不足しており、滅多に手に入るものではなかった。
「もしかして、マサルさんって、お金落ち何ですか」
「いや、俺は八歳から冒険者をやっていた。あの頃は魔獣革が割と簡単に手に入ったんだ」
「俺も冒険者をやってたんですけど、魔獣の革は見たこと無かったです」
「ロバートよ。マサルは冒険者だから見つけたのではない。リサイクルショップ巡りが好きだったのだ。そこで見つけたあたいは聞いている」
ギャよ、ナイスフォローだ。今の説明はほとんどが嘘だからな。
ギャに出会った頃に与えた赤い魔獣革の靴以外はサメル村で手に入れていた。
「ロバートは冒険者をやっていたんだ。主にどんな依頼を受けていたんだ」
「そうですね、町の下水道の掃除や、公園の草取りですね」
「他にはやらなかったのか」
「読み書きと計算が出来たので、露天商の手伝いなんかもやりました」
「獣狩りや薬草採取は」
「剣が弱くて魔獣狩りは無理です。薬草は勉強だけはしたんですが、王都の外に出るのが怖くてやって無いです。でも薬草の勉強をしていたおかげでここに就職することが出来ました」
「良かったなロバート。良く薬草の知識を身に着けた。あたいもマサルに無理やり覚えさせられて大変だったんだ」
一応ギャは俺の奴隷なんだから、言われたことはやらなきゃいけないんだぞ。
昼休みも終わる頃、食事からジャックが帰ってくる。
「おいロバート。トイレの掃除やっとけ、俺は薬草の在庫を確認しておくからな」
ロバートに仕事を押し付けジャックは薬草倉庫に向かっていく。
在庫の確認はギャがすべてやっているので、在庫確認をジャックがする必要はない。
倉庫に行ってサボるのだろう。
「マサル、好きにさせていいのか」
「ロバートはどう思う」
「ジャックが仕事をするとかえって邪魔です。倉庫で寝ていてくれた方が助かります」
「まあ俺もそう思うが、なあギャ、あいつを追い出すいいアイデアは無いか」
こういうことはギャが得意そうだ。
「わかった考えておく」
「頼んだぞ」
前期中には追い出したいな。
後期になれば、こちら側の教頭も来る。
経営の仕方を教えに姉貴も来ることが有るだろう。
ジャックを追い出せば、残る敵は無能な校長と、よくわからないメリッサだけだ。
学校を作り薬草の流通販売の権利を持つダンブロア家を抑え込めば、計画通り学校を乗っ取ることが出来る。
が、俺にはダンブロア家を抑え込む知識も実力も無かった。
姉貴頼んだぞ。




