100・冬です 冬です 冬休みです
「今日の授業はこれで終わる、明日から二週間冬休みだ。無事にみんなと会えることを期待している」
今日は十二月二十四日、明日から一月七日まで冬休みだ。
薬師学校は前期と後期が有る。
前期は九月一日から二月十五日だ。
二月十六日から二月二十二日までの前期と後期の間を期間休みと言って休みになる。
二月二十三日から七月三十一日までが後期で五月一日から七日が春休みだ。
「先生さようなら」
「じゃあね」
「グッバイ」
「またの合う日を楽しみにしています」
「まったねー」
五人の生徒が帰っていく。
歳が二つくらいしか違わないので授業が終わると友達感覚だな。
これから二週間会えないのは嬉しくも有り寂しくも有った。
「マサル、帰るぞ」
「ああ」
俺とギャは、ロバを預けてあるバルノタイザン商会に向かう。
「マサルさーん、ちょっと待っててください、一緒に帰りましょう」
後ろからヤヨさんが声をかけてくる。
「ヤヨさん、教員同士での打ち合わせとか無いのですか」
「無いよ。ちょっと長い休みが期の間に入るだけでしょ。それに生徒はみんな王都の中に住んでいるから、遠くまで帰る生徒はいないでしょ」
そうだね、今日の最後の授業でも冬休み中の注意事項なんか話さなかったからな。
「それに、校長先生なんかお昼で帰っちゃたし」
「やること無いものな」
「そうなの、それでね、もしかすると後期から教頭が来るかもしれないって」
「誰がそんなこと言っているんだ」
「カスミさん、どうやらルーダさんの知り合いの薬師を送り込んでくるみたい」
「それって、姉貴の計画して言る学校乗っ取りの一環かな」
「そんな計画有るの、でもそうだとしたらそんな感じかな」
「マサル、そんな簡単に計画が進むのか」
「ああ、進むさ。それは、今王都の薬草は誰が仕切っているかギャ知っているだろ」
「そうだな、カエデ製薬だな」
「ああ、薬師は薬草が無ければ何もできないだろ。学校を作ったダンブロア家は薬草や薬の流通の権利を持っているが、それも薬草が有ってのことだ」
「なるほど、うまい具合にゆすりをかけたのだな」
「別に姉貴はゆすってないぞ、普通に話すだけで怖いだけだ」
「マサルさんも怖いのですね」
「うん、俺だけじゃないのか。ギャなんか可愛がられているぞ」
「そうだぞ」
「・・・そうですね、ジルちゃんも可愛がられています。でも、カエデさんしごきに耐えたのが私たち八人なんです。耐え切れず何人弟子をやめたことか」
「そんなこともありましたね」
その場に俺もいたな。でも俺に比べれば優しく接していた気がする。
「マサル、厳しいのは当たり前だぞ、人の命に係わる薬を作るのだから」
「私もそう思ってました。でもマサルさんは優しく教えても大事なことをきちんと教えてます」
「そうか、それほどでも」
褒められ慣れてない俺はまたも照れてしまった。
まあそんなことはともかく、明日から冬休みだ。
「マサル、カエデお姉さまから、冬休みの計画は命令されていないのか」
「多分、今日の夕食後に有るだろうな。そのために俺は自分の予定は入れてない」
「・・・マサルさん、大変なんですね」
「いや、ヤヨさんも冬休み中は薬屋カエデに出勤するんだろ」
「ええ、社員ですから」
「教師の給料はもらえないのか」
「ギャちゃん、学校から会社にお金が行くの。それもすごい安いらしいの」
「なるほど、ヤヨさんが教員試験に合格したのは、安く雇うつもりも有ったんだな」
俺とギャなんか学校からお金が出ていない。
少しでも行くだけましだな。
そしてその日の夕食の後。
「マサル話が有ります」
「はい」
姉貴から冬休みにすることが命令された。
「王都周辺の薬草分布の地図が古くなりました。作り直してきなさい」
「はい」
俺がサメル村に出発した日から二年と八か月。
それまでに作った薬草分布図は使い物にならなくなっていた。
これが無いと、王都の薬草採取者は仕事にならない。
その上、王都周辺の周辺が以前より広くなっている。
冬休みの二週間で出来るのか。
「マサル、出来るのか」
「ああ、これから二週間、家には帰らず地図を作って回る」
「頑張れ」
「ギャ、お前も一緒に来るんだぞ」
「・・・オー」
次の朝、俺とギャは荷馬車を引くロバと共に家を出た。
「まずは、何処へ行く」
「そうだな、これが古い地図なんだが、このあたりが空白にしてあるだろ」
「調べてないのか」
「調べてはある、ただ乱獲されたくないから書かないで置いた」
「なるほど、ある程度薬草が残っているあたりはわかっているのだな」
「そう、それにカエデ製薬から薬草を買うのが難しい、このあたりの地図を作りたい」
「そうか、そうれじゃあそこに行くか」
「ああ」
カエデ製薬から薬草を買うのが難しい場所。
それは王都からもサメル村からも遠い、王都から東へ歩いて(バフかけしたが)三日の所だった。
ロバと一緒に歩いて三日。
俺はマルマ王国と東に有るミカク王国の中間地点にある、中規模の町『ゴモス』に着いた。
「マサル、大きな町だな」
「ああ」
「どうする」
「此処の薬師あてに姉貴に紹介状を書いてもらっている。まずはそこに行ってみる」
俺もカエデ製薬の社長なんだが、俺のことを知っている薬師なんかいない。
有名な師匠の元修行した姉貴を知る薬師は多かった。
姉貴が知っている(知り合いではない)薬師を訪ね街を歩いていく。
「マサル。暗くなりそうだ。まずは宿だな」
「そうだな」
適当な宿を見つけ、薬師探しは明日にした。




