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1・旅たちの日 ギャとの出会い

夜が明けたばかりの町中を俺は荷車を引くロバと一緒に歩いている。

四月に入ったが朝はまだまだ寒かった。

かじかむ手でロバの手綱をにぎりながら、王都の西に向かう門を目指していると。


「おじさーん あたいを買ってー」


「ねー おじさーん あたいをー 買ってー」


俺に声をかけているのか、俺はまだ十五歳で成人したばかりだ。


「ねー おじさんったら おじさん あたいを買って」


回りを見渡すが俺しかいない、どうやらおじさんとは俺のことらしい。


「おじさんって、俺か」


「うん、あたいを買って」


声をかけてきたのは八歳くらいの女の子だ。

女の子の後ろには『奴隷売ります 白屋商会』と書いた看板があった。


女の子はやせ細ってガリガリだ。

髪の毛は鏡を見ずにハサミで切ったような不揃いな銀色の短髪。

それに、目に瞳がなく真っ白だ。これじゃ目も見えないだろうな。


あれ、でも俺を呼び止めたよな。


「兄さん、人助けと思って買ってくれないか。こいつ三年以上も奴隷商の間をたらいまわしにされて、もうすぐ死にそうなんだ」

眠そうに、店の主人が声をかけてきた。


「死にそうって、大丈夫か」

「もうだめ、さようなら」

俺が声を掛けたら、そのまま倒れてしまった。


しょうがない買ってやるか。

「おい主人、いくらだ」

「へえ、死んだようなので、もっていってください」


いや、まだ死んでいないよ。

「そうか、では貰っていく」


俺は、女の子をロバの引く荷車にのせた。

そして、店から見えなくなると異次元鞄から薬を取り出し女の子に飲ませる。


「ゴホ ゴホ ゴホ ゲボ うーん まずい」

「そういうな。生きたければ飲め」


女の子の口を無理やり開けて薬を流し込む。

しばらくすると、女の子の顔に赤みがかかってきた。

とりあえず大丈夫だろう。


春とはいえまだ寒いので女の子には異次元鞄から出した毛布を掛けてやった。


これから旅に出るのに邪魔だが、捨てるわけにもいかない、どうする。

できれば今日中に次の宿場町まで行きたいのだが、そうだ次の宿場町で置いていこう。


俺は女の子を乗せた荷車を引くロバと王都の門を目指した。


俺の名はマサル。

貧乏貴族の三男坊だ。


家の名はバルノタイザン、シルバー爵の貴族だ。

この世界には侯爵 伯爵 公爵 男爵ではなく、上から、プラチナ爵 ゴールド爵 シルバー爵 カッパー爵 ブロンズ爵  スチール爵がある。


もともとはゴールド爵だったが、ひいひい爺さんの時に税金を払えずランクダウンした。


その時、都の中央部に有る大きな屋敷を売って、ギリギリ貴族街の一番外れの小さな屋敷に引っ越した。

見るからに落ちぶれたので、回りは貧乏貴族と呼んでいる。


しかし腐ってもシルバー爵、決して貧乏ではない、ちゃんと収入はある。

我が家はロバの流通販売の権利を持っているのだ。

二百年前に、俺がこれから向かう村でロバの飼育と繁殖に成功したからだ。


当時は荷物を担ぐか荷車で運んでいた。

それをロバが荷車を引くことにより大量の荷物を運べるようになった。


その功績を認められ当時の王様からゴールドの爵位を貰っている。

まあ、国が出来立てだったので、ロバの繁殖でもゴールド爵をもらえたのだろう。


しかし、その後、馬の飼育と繁殖が成功し、ロバの売れ行きが落ちた。

特に貴族や金持ちの商店、大規模農業の経営者 大手工場が馬を購入するようになり、ロバは庶民しか使わなくなったのだ。


お金持ちが見放したロバだが、田舎や都会のでも裏道を入るにはロバのほうが都合がよかった。

なので、それなりに売り上ている。


シルバー爵にランクダウンした時、ひい爺さんが小さい屋敷に引っ越してくれたおかげで、お金がかからなくなった。

収入に見合った生活をしたので、別に貧乏という感じはしかったが、回りからは貧乏貴族と言われ続けている。


貧乏で無くとも、十五歳になった俺にただ飯を食わせてはくれなかった。

「マサル、お前も成人になった。兄たちと違い王都学校にいけないのだから、私の仕事を手伝いなさい、さしあたって、ロバ牧場のあるサメル村の視察だな」

そう父に言われ、今朝家を出たのだ。


王都から外に向かう道を行くと塀と門が見えてくる。

王都を囲んでいる塀だ。

お城の一番近くで囲んでいるのが、第一環状塀。

二番目が第二環状塀で、いちばん外側が第八環状塀だ。


塀には門があり、通行には身分証明書と通行許可書が必要になる。


「はい、これ」

俺は身分証明書を見せる。

貴族の身分証明書ならば通行許可書はいらなかった。


「おい、後ろの荷車に乗っている女の子の身分証明と通行許可書は」

「えっと、こいつは俺の奴隷なので」

俺は女の子に付けられた首輪を指さした。


「そうか」

門番は軽く確認すると。

「死にそうだが、大丈夫か」

「たぶん」

「そうか、行っていいぞ」

奴隷は人ではなく物扱いなのだ。


 俺は第八環状塀の門を出て、街道を進む。

今日泊るのは宿場町だ、さあこの子をどこに置いておこうかと考えていると。

「ねえ、あたいを捨てようっと思っているでしょ」

少し元気が出たのか、女の子が話しかけてくる。


「い、いや。そんなことはないぞ」

「うそ」

まずいな,置いていくのがばれている。

何を言ったら良いかわからない。

黙っている。


女の子から幾度も『置いていかないで』と言われると思ったが静かだ。

よく見ると寝ていた。

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