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勇者は聖女で聖女は勇者  作者: 勇者は聖女で聖女は勇者
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学院長の正体

涙あふれる使用人たちとの顔合わせを終え学院長にあいさつという名の説明に向かうため馬車に乗り込み神政中央学院に足を向けた。

家からは馬車でなら5分と少しほどの距離で家からも1番高い所の学校の屋根なら見えるくらいの位置だ。

そうして到着した学校はイメージと違いかなり新築みたいに感じた。父さんに聞いてみてもやはりできてからまだ10年も立っていないらしい、何でも学院長が娘のために建てた学校なんだとかで、しかも僕と同じ年に入学するらしい。もし会うことがあったら挨拶しておこう。とりあえず学院長に挨拶するため受付的なところに向かう。


「グレン・ブレッキンドだ。学院長に用があってきたのだがいらっしゃるかな?」


「はっ!?」


先ほどまで笑顔で要件をうかがってきた事務員さんが事件を目撃してしまったかのような顔で驚いている。何をそんなに驚いてるんだ?


「しょ、少々お待ちください!」


そういうと事務員さんは奥の部屋の方に消えていったかと思うと、代わりに少々胡散臭い小太りの貴族っぽい服を着た男がもみ手をしながら入ってきた。


「これはこれは誇り高き勇者様だけでなく麗しき聖女様までいらっしゃるとはこのブタン光栄の極みでございます」


そう言いながらこのブタンとかいう男は僕の母さんにかなり失礼な目を向けている。こればかりは僕でも気持ちが悪いと感じておもわず母さんをかばうように前に出てしまった。当の本人は涼しい顔をしていたが。


「先ほども言ったのだが学院長に用事があってきた、アポイントメントもとってあるはずだ」


はたから見れば何も変わらない態度で接しているようにみえるが多分父さんは少し機嫌が悪くなっている。何が違うのかと言われればわからないが雰囲気や言葉の節々に苛立たしさがある気がする。まぁあんな露骨に自分の大事な人を見られればそうなるに決まっている。僕も気分が悪い。


しかしブタンはというとこちらの気分にもちろん気づいた様子もなければ僕のことは眼中にないのか全く見ていない。


「かしこまりました、学院長に確認してまいりますので応接で少々お待ちください。おい!そこのお前勇者様と聖女様を応接室に案内しろくれぐれも失礼のないように」


後ろで控えていた一番最初に対応してくれた女性がびくっとしながら答えて案内してくれる。全く見ていて本当に気分が悪い。そのまま応接室まで案内してもらう。


「こ、こちらになります」


「ありがとう、君には悪いことをしてしまったね」


父さんが申し訳なさそうにして事務の女性に謝っている。ちらっと名前を見るとその女性の名前はマリアベルというらしい。父さんの言葉にびっくりして折れそうなぐらい首を振っている。


「と、とんでもありません!こちらこそお待たせしてしまって…」


「まぁどうせまたあのバカが私たちが来ることをまた伝え忘れていたのだろう。気にしないでくれ」


マリアベルはもう涙を流しそうになりながらも感謝を述べ部屋を出ていった。

それからすぐに確認が取れたようでマリアベルとは別の優しそうなマダムっぽい方が学院長のいる部屋まで案内してくれた。


「学院長様勇者様、聖女様とご子息様をお連れしました」


あれ?僕自己紹介とかしてないんだけど…


「おー来たかい、どうぞ入っておくれよ」


とりあえず中に入ると耳が長く独特な民族衣装のようなものを来た男?の人が座っていた。中性的な見た目だし整った顔をしているので体格的な判断で男性だと思う。その多分エルフであろう学院長に促されるまま席に着いた。


「よくきたねグレン、マリーはだいぶ久しぶりだけど相変わらず綺麗だね私たちと同じエルフかと思ったよ」


何だろう同じく母さんが見た目を褒められているのにこんなに違いがあるものかと思うくらいに不快感がない。


「久しぶりねコルル。あ、今はコルル・ガナンド卿だったかしら?」


少しにやにやしながら言うとコルルさんは肩をすくめていた。


「やめてくれよ私だって貴族なんてなりたくなかったんだ…」


本当にうんざりした顔で言っている。そんな顔を見て父さんも母さんもニコニコしながら笑っている。ていうか今更だけど母さんも知り合いだったのか。

そんな雑談というか歓談をしてひとしきり昔話をしているのを聞いて衝撃の事実があった。


「え!?コルルさんも父さんたちと一緒に魔王を討伐したんですか!?」


「あれー?グレンたち言ってなかったのかい?」


「あら、あなたから伝えておくと聞いていたのだけど…」


父さんの方にみんな目を向けると


「ま、まぁノアのことを驚かせようと思ってな。ハハハ、ほらこんなに驚いてるじゃないか」


汗たらたらになりながら取り繕っているが十中八九忘れていたのだろう、実際驚いたのだけど。


「まあいいか、さっきの話の通り私もいっしょに旅してたよ、そのあと褒賞で学校を建ててもらったって感じかな。まぁハイエルフだし褒賞じゃなくても建てれるっちゃ建てれたんだけどね」


ハイエルフ!?またまたすごいのが聞こえたぞ…確か世界にも何人かしかいなくてちょっとした伝説的な存在じゃなかったか?いや、母さんが会ったことがあるって言ってたのはコルルさんのことだったのか…。


「ま、僕たちの過去の話はこのくらいにしといてノア君の話を聞かせておくれよ。グレンにも詳しくは聞いていないからね、いかんせん結構変わった力があるんだとか」


そして僕の方をじっと見てきたので今までの経験のなどを交えながら加護のことなどを説明した。説明を聞いたコルルさんは目を輝かせながら話を聞いていたがちょっとずつこちらに近づいている。怖い。


「すごいじゃないかノア君!ぜひとも君のことを詳しく調べさせてもらえないだろうか!」


「何を言ってるんですか!?」


最後は一気に距離を詰めてきて僕の両手をつかみぶんぶん振ってくる。


「やっぱりこうなるのね…」


「まぁあの知識馬鹿がノアの話を聞いてこうならないわけがないだろうな…」


あきれ気味になるのはいいんだけどそろそろこの腕ふりをどうにかしてくれないだろうか鼻息もめっちゃ荒いしちぎれそう。助けを求める視線を送ると父さんがコルルさんを引っぺがした。


「いい加減にその新しい知識になりそうなことを見つけると興奮するの何とかならんのか」


やっとで父さんが椅子に座らせたがずっとこっちを見てるしまだ鼻息があらい。そのうち食べられるのかな?


「落ち着けるわけがないだろう!ノア君はおそらくこの世界に一人の力を持った子だ、この機会を逃せば僕は一生後悔する!」


やばい!目が血走ってる!?


「落ち着け今日はお前の知識を流しに来たんじゃないぞ?この子が面倒なことに巻き込まれないようにお前に説明しに来たんだ」


そうコルルさんのことを窘めるとコルルさは何を言ってるんだ?と言いたげな顔で顔を返してくる。


「いやむりでしょ」


「え?」


「ノア君はもうすでに有名人だよ多分」


どういうことか説明を求める三人の視線に目をつむってコルルさんが答える。


「そもそも僕たちは普段から情報収集されているんだよ?プライベートがないわけじゃないけど少しでも僕たちに近づいたり恩を売るためにね。君たちが飛行船で今日来ていることも船着場のものに監視させていればいいしね。毎年入学式が近くなると勇者と聖女の子が入学してくるかもしれないからこの辺りは騒がしくなるんだよ」


もうすでにそんなに注目されているのかよ…


「そして今日服装はともかく明らかに雰囲気の違う顔つきの夫婦と子供が船着場に現れた。そして見てみれば執事に連れられ特例街に入っていくこれはもう高い確率で勇者と聖女って知られているだろうしきっと今年の入学生たちは運がいいと張り切っているだろうねノア君と同い年だし」


コルルさんの話を聞いて三人してマジかーといった顔をしてみた。まぁどうせ入学式で分かることとはいえ貴族って怖いな…


「ま、そういうわけでどうやってもノア君は()()()」目立っちゃうだろうねー、うちも人のことは言えないけどめったに姿を見せない勇者と聖女とは人気も何もかも違うしねー。もちろん私にできることはやってみるけどさ」


「なるほどなぁ」


「んー少しでもノアの心配を減らせればと思って来たのだけど」


母さん父さんと顎に手を当てながら考え込むようにしている。元々ここには僕の説明とそのほかに厄介なことにならないように来たのだがすでに目立っているならしょうがない。目立ったことをしたつもりはないが。


「ひとつ目先の面倒を減らす方法があるよ」


3人でお!という感じで続きを求める。


「まず、ノア君に近づくには色々あるけど手っ取り早いのは男女の関係になることだ。それを目指して多くの令嬢が付きまとってくるだろう。だったらその前に女の子を何人か侍らせておけばいい見た目はよくないかもだけど別に悪いことじゃないしね。なんならうちの娘をその中に入れて欲しいね。うちのもなんだかんだ綺麗で男がうるさいからね。まぁちょっと変わってるけど」


その話を聞いた両親と僕の顔は極端だった。両親はと言えばなるほど!という顔をしているし僕は何とも言えない顔をするしかなかった。女の子を侍らせるって・・・


「それはいい考えだコルル、ノアの友達も増えて万々歳だ!」


「そうかい?ならノア君明日の入学式で娘に声をかけてくれるかい?娘にもノア君のことは伝えておくからね。名前はアリルというわたしと同じ翠髪だからわかりやすいはずだ」


「はぁ・・・わかりました」


そしてそのまま話し合いも終わっていきコルルさんの元を後にした。自宅に戻ってからは風呂にまで一緒に入ってきそうなメイドに気をつけながら明日会うことになっているアリルという女の子に緊張しながら眠った。

 



























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