うちはちょっとだけ…
そろそろ設定わけわからんくなってきそうです…
【転変】の発現から3季程たちあっという間にもうすぐ入学式となった。
それまではいつものように剣術、魔法の鍛錬を続けながら加護も使い続けた。
【転変】を発現させてからは眠っても勝手に入れ替わりが起きることがなくなったので自分の都合の良いほうで日々を過ごすようになった。自分が鍛錬したいことに合わせて【転変】を使いながらも、学校では貴族がたくさんいるとのことでテーブルマナーをはじめとした宮廷作法も母から学んだ。しかしこれが一筋縄ではいかずかなりてこずった、男女でマナーが全く違うため二人分覚えることになったからだ。なんとか母さんに合格をもらえるくらいにはできるようにしたができれば二度とやりたくないものだ…
そして入学式三日前の昼下がり鍛錬の後で少し話があるとのことでノアは両親の二人と向かい合って椅子に座っていた。今までこんな感じで話を持ち出されたことはなかったので少しだけ緊張した面持ちで座っている。
「なに、そんなに緊張しないでくれ大した話じゃないんだ」
ノアの顔が少々強張っているのを見てか安心させるようにグレンが声をかける。
「本当に?いきなり離婚するとかやめてね」
少々困った顔で言うと対面に座る両親は思わず顔を見合わせたかと思うとあっはっはとすぐに笑い出した。
「まったく、ノアってばそんな心配をしていたの?」
口元に手を当て、笑いすぎてつい出てきた涙を拭きながらマリーがノアをからかう。
「だって、今までこんな改まって話があるなんて言われたことないじゃないか」
あまりにも二人が笑ってからかってくるため少しむすっとした顔で二人に
ジト目を向けるがそんなこと気にすることもなくまだ笑っている。
「いやーごめんよノア、もちろんこんな素晴らしい愛する人と離れる気なんて全くないしさっきも言ったがそんな重い話じゃないんだ」
ノアの心配も外れてひとしきり笑い終えるとようやく話が始まった。
「そうだな、簡単に言うと父さんと母さんは他の大陸でちょっとだけ有名なんだ」
「ちょっとだけ有名…?」
「簡単に言うと私が聖女でグレンが勇者だったのよ、それと私たちには“ブレッキンド”っていう家名があって侯爵の貴族位を持っているの。だからノアの正式な名前として中央大陸ではノア・ブレッキンドになるの」
にこっりとした顔でティアが発した言葉だったが聞いていたノア本人はというと、
「…………………は?」
長い思考の末に絞り出した声が漏れていた。
まさに、目が点になっている。今まで自分の身は守れるくらいの強さだと思っていた両親は勇者と聖女でしかも貴族の中で一番高い位の侯爵であったのだから。
さらに言うのであれば勇者と聖女ということは魔王を討伐したということである。
「………………」
「だから、学校に行ったらちょっとだけ目立つかもしれんから一応伝えておこうと思ってな」
絶対にちょっとだけじゃすまないでしょそれ
「…どうしてもっと早く教えてくれなかったんだい?」
この質問に父さんは眉を下げて少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「ノア、お前はきっと学校に行ったらノアではなく勇者と聖女の子のノアとしてばかり見られて少し窮屈な思いをさせてしまうかもしれないんだ。変に期待をかけられたりノアとのつながりを求めてあの手この手で寄ってくる輩もいる。だからこそ、それまでの間は勇者と聖女のことは気にせず過ごしてほしかったんだ、普通の子供としてな」
「そうだったのか…」
母さんの顔を見ても申し訳なさそうな顔をして目が少し潤んでいる。
しかし、両親の考え方はもちろんノアにとっても理解できるものであった。この方針のおかげで自分はここまですくすくと育つことができたのでありそのことに対して感謝こそすれど文句を言う気にはならなかった。
「ありがとう、父さん母さん。僕のことを思ってくれていたんだね」
「当り前よノア、私たちはいつでもあなたのことを考えていつでもあなたの味方よ」
ノアに向けて涙ぐみながらも微笑むマリーは慈愛にあふれるまさに聖女だった。ノアも初めてしっかりと自分の母親は聖女であったんだなと自覚できたような気がしていた。
「ただでさえ目立つなら変に目立つようなことはしない方がいいかもね」
すこし冗談交じりに言ってみると両親もクスリと笑っていた。
「変に目立たないようにしなくてもいいさ、自分のしたいようにすればいい。もしも、学校がやっぱり生きづらいと感じたら学校をやめたっていいんだ。この大陸にさえ帰ってくればディルティーネ様がかくまってくれるさ」
この世界のルール的には子供は14歳の年で学校に入り卒業しなければいけないのだがディルティーネなら確かに何とかしてくれそうだ。
「さぁ、湿っぽい話はここでおしまいにして今日はみんなで久しぶりに散歩にでも出かけましょう」
母さんが切り替えるように提案した。
「そうだな、ノアも学校に行ったら私たちとは頻繁には会えなくなるしな」
僕が学校に入学したら両親とは離れて、中央リメール連合大陸に用意されている屋敷に住むことになっている。もっと言うなら屋敷どころか使用人から執事まで待っていると母さんから聞いている。
学校には寮もあるのでそっちだと思っていた僕はなんで?と思ったが今日の話を聞いて納得することができた。
「よし!それじゃあ行こう!」
自分の家のことでとんでもないことを知ったノアだったが、本人が勇者と聖女というものが世界にとってどれだけ大きい存在なのか身に染みて知るのはもうすぐであった。
-----二日後-----
昨日はあまりよく眠れなかった。14という年になってもやはり外の世界に初めて行くので興奮してなかなか寝付けなかった。
なぜ寝付けなかったのかというともちろん前々の日から緊張していたわけではなく入学式の前の日に出発することになっておりその出発の日が今日だからだ。
ただし入学式自体は午後からなので当日でも間に合うのだがそれでも前日に出発するのには訳がある。
まず一つ目に僕が住む屋敷の使用人や執事に挨拶をするため
二つ目に父さんの知り合いの学園長に僕の加護や体質についての詳しい説明をしに行くことで僕の学校生活をサポートしてもらうためだ。
この二つを行うために家族で話し合いこの日に出発することに決まった。
中央リメール連合大陸までは飛行船でおおよそ4時間ほどで到着すると父さんから聞いていた。そしてこれまた初耳だったのが僕たちが乗っていく飛行船もうちの家のものらしい。なんでも、王家から直接いただいた最新のものだとかなんとか…
まぁいただいたものは使わないと失礼に当たるというし気にせずに行こう…
「忘れ物はないか?」
飛行船に乗り込む直前に父さんが最後の確認をしてくる。
「大丈夫だよ、ディルティーネにも挨拶してきたしね、ただ…何となく様子が変だったような気がするんだよね…」
「「……………」」
「父さん、母さん?」
なんでこのタイミングで二人とも静かになるんだ?
「ま、まぁディルティーネ様もきっと寂しいんだろう。ハハハ」
「えぇ、きっとそうだわ」
…怪しすぎないか?こんなにきょどってる二人もなかなか見ないけど
「…なんか隠してるよね?」
僕はストレートに聞いてみたのだが二人ともまったく目を合わせてくれないし何なら、もう行こうかと言ってこれ以上話がないと言わんばかりに船に乗り込んでいった。
こうなると両親は絶対に話さないことをしっているので二人から話があるのを待つしかない。でも、言わないってことは知らなくても大丈夫なことなんだろう…たぶん…
そうして、全員が乗り込んだのを乗務員が確認すると中央リメール連合大陸に向けて広くどこまでも続く空へ向かって飛行船は飛び出していった。
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