加護
話が進まねえ
すんません
---バン!!---
ああ、またなのね。
「ティアーーーー♡」
その瞬間私は柔らかいものに包まれながら後ろに倒された。
きっとディルティーネ様が私が来たことに気づいてドアから飛び出して抱き着いたのだろう。毎度のことだ。
「こんにちは、ディルティーネ」
「お久しぶりですディルティーネ様」
「お久しぶりでございます」
ティアはディルティーネの豊満な胸に視界をふさがれながら両親は少し困り顔をしながらそれでも嬉しそうな感じで笑い久しぶりに会った挨拶をする。
「うむ、久しぶりなのじゃ」
ディルティーネは背が高くいつも足の両側にスリットの入った体に密着するタイプの服を着ている。言わずもがな顔は整っているし体つきもすごく女性らしい。
いつの間にか立ち上がったと思ったら私はディルティーネに抱きかかえられていた。
「家先で立ち話もなんじゃ、中へ入ろうか」
そのまま、私は抱きかかえられたまま抵抗することなくディルティーネの家の中へ入っていった。もちろん少し恥ずかしいに決まっている。もう13歳にもなるんだから。でも、降りようとしても降りれないし無理やりおろしてもらうと、とてつもなく拗ねるので無駄な抵抗はしないだけだ。
ディルティーネの家はいわゆるログハウスのようなものでそこまで大きな屋敷ではない、うちの家と同じくらいのものだ。家の中のリビングに入ると先ほどまで飲んでいたのであろうコーヒーの匂いがした。
「ティアも飲むか?♡」
私を抱きかかえたまま少々だらしない顔で聞いてきた。
「ううん、大丈夫ありがとう」
きっと私が匂いをかいでいい匂いだと思ったことに顔の表情などから気づいたのだろう。こういうほんの些細なことに気付けるのはすごいと思う。
こと、私のことになると少々子煩悩になってしまうところが玉に瑕だが…
ディルティーネはティアを抱えまま、両親は反対側のリビングのソファーに座ると雑談に興じながら再会を喜んだ。そして、お互いの近況報告に区切りがつき始めると今回来た目的について話す。
「そうか…もうすぐ学校に行ってしまうのだな…」
ディルティーネが天井を見上げながら遠い目をする。心なしか私を抱きしめる力がどんどん強くなってきているしちょっと痛いかも。
しかし、ここにかまってしまうと終わりが見えないので話し続ける。
「うん、だからこの体の入れ替わりをなんとかしたいなって思って」
「ふむ…」
切り替えて考えてくれている。横向きで膝の上にのせられているためディルティーネの綺麗な横顔が近くで見える。女の子の私から見てもそう思うのだから世の中の男性からしたら神々しいだろう。まあ、実際神なのだけども
そんなことを思っているとディルティーネが口を開いた。
「何とかはなるじゃろうな」
「ほんと!?」
「そうじゃな、そもそも妾も地上の生き物でティアのような特性を持った者を初めてみる。しかし、天界ではそれほど珍しくもないのう、姿を自在に変えられるものは割とおるしな」
「それで、私はどうしたらいいの?」
「そうじゃな、姿を変えられると言ったがそれは妾も天界においては使える。そしてその力はティアに加護として与えておる。とはいえ本来はあまり、与えた加護について教えるのは良くないのじゃがまぁ今回は仕方あるまいて」
神様たちの中にもやっぱりいろいろ決まりはあるんだろう。
「なるほど、大事なことを教えてくれてありがとう。それと…その、発動の仕方とかも教えてくれたりしないかな?」
ここぞとばかりに上目遣いで瞳をうるうるさせながら頼んでみる。
お願い、教えて!
「くっっ…」
めいっぱいティアから顔をそらしながらディルティーネは耐えていた。
どんな加護を与えたのかを教えるだけでも結構頑張ったほうなのである。本来、加護は生活の中や戦いの中で継承加護として親に教えてもらったり自分が強く願った形に少し変質して発現するものだからだ。また、本人の精神状態や肉体にも左右される。
ではなぜ神々は教えないのか?加護の強さに体が耐えられないものが出てくるからだ、神々が安易に加護を教え未熟な状態で発動してしまうと加護の強さに肉体が耐えられず崩壊してしまったり廃人のようになってしまう。
それゆえに、神たちは加護について本人には伝えずに自然に発現するのを待つようにしている。
「ディルティーネ…ダメ?」
しかし、ティアはディルティーネが悩んでいるのを見てここぞとばかりに会心の上目遣いに少し泣きそうにしながら追い打ちをかける。
はたから見ていた母親はいつの間にこんなことを覚えたのか…と困惑しているが父親はというと若いころに隣にいる最愛の人も同じようなことをしていたな…と達観した表情をしていた。
「わ、わかったのじゃ。だから泣きそうになるでない」
顔を両手で覆い声を絞り出しながら折れた。
もちろんディルティーネにしてもかわいい上目遣いに丸め込まれるほどやさしい神ではないが、本当に目に入れても痛くないくらい溺愛しているティアに頼まれると弱い。
「ただし、加護の発動の手助けをするだけじゃ。でないとティアの体が持たない可能性も出てくるからの、それにティアの体に危険が出そうなら無理やりにでも止めるからのよいな?」
神としてここは譲れないラインであった。また、最愛の子をここで死なせるわけにもいかないのでこの条件だった。
「ありがとう!ディルティーネ!」
正直ディルティーネは何だかんだ教えてはくれないかもと思っていたので本当にうれしい。私は勢い余ってディルティーネを抱きしめてしまった。
「よ、よいのじゃ」
ディルティーネもまんざらでもない顔をしているしいいよね。
「ありがとうございます。ディルティーネ様」
「ありがとうございます」
両親もまさか本当に、教えてもらうどころか手伝ってもらえるとは思っておらずしっかりと感謝の意を伝える。
「では早速始めるとしようかの、二人は暇になるであろうからどこか二人で散歩に出かけるなりここでゆるりと過ごすがよい」
「お心遣い感謝いたします」
そうして、両親はそのまま二人で森の中を散歩しに行きディルティーネとティアは家先の少し広いところに出た。
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