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第83転 吉備之介vsパラシュラーマ

「組み手って……なんでそんな事をするんだよ?」


 カレーを完食した後、吉備之介とパラシュラーマは中庭の端に移動していた。吉備之介の右手側には石壁、左手側には少し離れた場所に花壇がある。とはいえ広大な魔王城、スペースは充分にあり、少し暴れるくらいなら問題はなさそうだ。

 中庭の中央ではメタルバンド『WOWARI(ヲワリ)』のメンバーが波旬(KIP)の追悼ライブを行っている。輪廻転生軍の面々の関心はそちらに向いているので、多少騒がしくしても迷惑になる事はない。


「貴殿の悩みの大半は自信のなさにあります。経験を積み、勝利を体験すればある程度は解決するかと」

「いや……そうか? そういうものなのか?」


 パラシュラーマの言う事は分かるようで分からない。未だ戦士としての自覚に乏しい吉備之介には実力などと言われても実感が沸かないのだ。


「だけど、そう言われても俺はついこの間まで……ていうか今だってまだただの高校生で――」


 吉備之介の言葉は最後まで言えなかった。パラシュラーマの掌底が飛んできたからだ。閃光の如き一撃は只人であれば、何が起きたかも理解できずに意識を刈り取られていただろう。しかし、吉備之介は驚愕こそしたもののパラシュラーマの掌を難なく躱していた。


「なっ……にすんだ急に! 危あぶねえな!」

「御安心なさい、武器は使いませぬ。徒手空拳で戦いましょうぞ」

「何に安心しろってんだ!?」


 後退(あとずさ)りしながら吉備之介ががなるが、パラシュラーマは聞く耳を持たない。瞬く間に吉備之介に肉薄し、右の手刀を繰り出す。鞭のようにしなる右腕を躱す吉備之介。続くパラシュラーマの回し蹴りも回避。回し蹴りした左足が着地したと同時に跳躍するパラシュラーマ。振るう足刀が吉備之介の顎を掠る。吉備之介が痛みを感じるよりもなお早く、左の踵落としが迫る。吉備之介の左額に僅かに命中し、皮膚が擦り切れる。


「わぁお。お爺ちゃん、動き凄い柔らかいネ」

「パラシュラーマは総合格闘技であるインドの古武術(カラリパヤット)、北派の開祖と言われているわ。あの程度の動きはお手の物よ」

「のんびり観戦してんじゃねえよ!」


 呑気な二人にキレる吉備之介。だが、その間にもパラシュラーマから目を離す事はしない。意識を他所に向けた途端に刈り取られると『桃太郎』の本能が警告しているからだ。


「ほうれ。反撃せんと終わりませんぞ、桃太郎殿」

「畜生……!」


 パラシュラーマにそう言われても吉備之介は防戦一方――否、回避一方だ。四肢を鞭の如くしならせるパラシュラーマに隙はない。反撃といってもそのタイミングを見計るのは容易ではない。


「ぬんっ!」


 パラシュラーマが地面に平伏(ひれふ)す程の低姿勢から急加速する。重力と脱力による加速だ。全身を動作の起点以外の力みを消して、爪先から順に速度を乗せていく。低姿勢の異様さも相俟って彼の動きを捉える事は難しい。

 不意を突かれた吉備之介の胸倉を右手で掴み、左手を吉備之介の右前腕の下を掴む。そのまま吉備之介に驚く暇すら与えず投げた。吉備之介が背中から地面に叩き付けられる。


「ぐあっ!」

「ふんぬっ!」


 地面に仰向けにされた吉備之介にパラシュラーマが肘鉄を落とす。体重を乗せた一撃は常人の肋骨などあっさりと粉砕してみせるだろう。二人の戦いを見ていた誰もが吉備之介の絶体絶命だと思ったその時、


「ッ――――!」


 吉備之介の目の色が変わった。

今回の更新で本1冊分となる10万文字を達成した当作品ですが、諸事情により連載を休止させて頂きます。

続きを御希望される方は評価・ブックマーク・感想の程をよろしくお願い致します。


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