第65転 死に戻りスキルを手に入れたので仲間全員が生き残るハッピーエンドを目指していたらループのし過ぎで精神的に老化してジジイキャラになりました2
「あ、おはよう、タウィル。……どうしたの? 顔が真っ青だよ!?」
「み……みんな……!?」
十二人の仲間達は無事だった。生き返ったのではない。タウィルが都内浄化の前日に時間跳躍して、家族がまだ生きている時間にまで戻ってきたのだ。
時間を超えた混乱、思い出した前世、転生の女神との邂逅の記憶、仲間達が生きていた安堵、翌日にまで迫っている危機、目に焼き付いた仲間達の死に顔。様々な感情と状況が頭の中でぐちゃぐちゃになり、しばらくタウィルはベッドの上で泣きじゃくった。
その後しばらくして落ち着いたタウィルは、仲間達を説得して王都から離れ、都内浄化から逃れた。
「ああ……今度は助けられた」
胸を撫で下ろすタウィル。しかし、世界は彼に更なる試練を与えた。逃げ込んだ先の街で魔王軍の襲撃に遭ったのだ。仲間達全員が殺され、タウィルもまた仲間達を庇おうとして命を落とした。
瞬間、訪れる異空間。時間を遡り、タウィルは都内浄化の前日に再び戻った。
「はあっ、はあっ、はあっ……うっ、おええっ!」
二度目の仲間達の全滅はタウィルに強烈なトラウマを与えた。一度目だけでも心に深い傷を負ったというのに、二度目で彼の生き方を決定的なものにした。以降、彼の行動は「一人も仲間を死なせない」事が絶対条件となった。
魔王軍の襲撃、国軍の追及、街に根を張る犯罪組織、私腹を肥やす悪徳領主、タウィルを翻弄するように運命が彼に牙を剥いた。その度に誰かが死んだ。その後、どれ程の成功を収めても最終的にタウィルも死を選んだ。人生をやり直し、絶対条件を叶える為にだ。
「タウィル? 大丈夫?」
「……どういう意味だ?」
「だって、タウィル、顔がなんか堅いっていうか……表情筋が死んでいるっぽい」
「……ほっとけ」
スキル使用回数が一〇〇回をカウントした時、【時間逆行】がレベルアップした。任意のタイミングにセーブポイントを一つ作り、死亡時にはそのポイントに時間跳躍できるようになったのだ。都内浄化の前日に戻るシステムはロードからリセットに設定が変わった。
「これでもっと気楽に死ぬ事ができるな」
変化した自身のスキルにタウィルはそんな感想を懐いた。実際、それからの彼は積極的に自身を危険に晒すようになった。都内浄化直前ではレベルも資金も手持ちも貧相だったが、その問題がこのレベルアップによって解決したのだ。失うものが少なくなったとなれば抵抗感が減るのもむべなるかなである。
――そう考えてしまう程、タウィルは狂気に足を踏み入れていた。死を厭わない活動、生物としての根本に逆らう在り方。それを指して人は「狂っている」と言う。




