第64転 死に戻りスキルを手に入れたので仲間全員が生き残るハッピーエンドを目指していたらループのし過ぎで精神的に老化してジジイキャラになりました1
転生者には生まれた時点で前世を記憶しているタイプとしていないタイプがいる。前世から記憶が続いている者と一度途切れた者と言い換えても良い。後者は何らかのきっかけがあるまで記憶を思い出す事はなく、当世の当人として生きる。きっかけがなければ死ぬまで己が魂の経歴を知る事はない。
竹やイゴロウが前者、吉備之介やタウィル・アトウムルが後者だ。
タウィルがきっかけを得たのは自分が殺された時だった。
彼は魔法世界における自身の生まれを知らない。北の大陸のある国に生まれた彼は、物心が付いた時には既に孤児であり、修道院に預けられていた。修道院が魔王軍との戦火によって焼け落ちた後は王都に身を寄せ、そこのスラム街で生活していた。ストリートチルドレンだ。
彼は一人ではなく、十二人の住所不定児童達が一緒にいた。修道院時代から共に行動してきた家族同然の仲間達だ。
ストリートチルドレンとしての生活は厳しく、レストランの残飯漁りなどは当たり前。今日のパンを得る為に客の男女を問わず春を売る事もあった。金銭が必要な時はスリや強盗などの犯罪行為にまで及ぶ事もあった。そんな形振り構わない生き方をしていたからこそ、因果応報は訪れた。
国軍による虐殺。都内浄化を目的とした浮浪者の鏖殺が決行されたのである。それは彼らを人間扱いせず、まさしく「駆除する」という言葉がぴったりの無慈悲で非人道的な所業だった。
「どうしてこんな」、「いやだ許して」、「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」、「タウィル、逃げろ!」、「お願いします助けて下さい何でもします何でもしますから」、「いやだぁああああああああああ!」、「畜生、死んでたまるかよ!」、「……ぁ……ぁ……」、「ふざけんな! 逆にブッ殺してやる!」、「痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ」、「死にたくない……死にたくないよぉ……」、「タウィル、助けて……!」
タウィル達十三人も全員殺された。兄同然と思っていた者も死んだ。弟同然と思っていた者も死んだ。姉同然と思っていた者も死んだ。妹同然と思っていた者も死んだ。皆が死んだ。剣で槍で魔法で無造作に命を奪われた。
タウィルもまた殺され、無念の内に意識が消滅する――筈だった。
死んだ直後、異空間に彼は飛ばされた。過去の記憶が写真となり、モザイク模様に切り貼りされた謎の場所だ。体が何かに引っ張られ、写真が彼方へと過ぎ去っていく。そして、気付いた時にはベッドの上にいた。空き家から盗んできた壊れかけのベッドだ。
「おれは一体……?」




