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第62転 序列

 輪廻転生軍観客席。


「序列六位か……イゴロウよりも下なんだな」


 試合を見下ろして吉備之介が言う。イゴロウの序列は五位。対するタウィル・アトウムルは六位だ。イゴロウよりもワンランク下に位置する。最下位ではないが、見劣りは否めない地位だ。


「そもそも序列ってどういう順番なんだ? 強さ順なのか?」

「概ねはそうだネ。基本、下の人間は上の人間には敵わないとされている。例外は一位と二位だネ。あいつらの拠点であるこの城が魔王の所有物(もの)だから、勇者が一位の座を譲ったって話だよ」

「じゃあ何だ。本当はタツ――アーザーは魔王よりも強いってのか?」

「そう聞いているわ。本人達は表立っては認めないでしょうけど」

「マジかよ……」


 幼馴染の意外な実力に渋い顔をする吉備之介。ただでさえ闘いたくない相手だというのに、敵軍最強ともなれば余計に厭戦意識が増す。運よく対戦相手にならないで欲しいと願ってしまう程だ。


「序列が低いからといって油断しない方がいいわよ。特にタウィル・アトウムルは異世界転生軍の中でも最も重要な位置にいるらしいわ」

「最も重要な位置?」


 ええ、と竹が頷き、目線を試合場に落とす。そこには試合開始の宣言を受けても静止したままのタウィルの姿があった。その額には玉のような汗が浮かんでいた。まだ闘っていないにも拘らず、どういう事だろうと吉備之介は訝しがる。


「どうしたんだい? そんなに汗を掻いて。暑いのかい?」

「…………」


 オルフェウスが尋ねるが、タウィルは何も返さない。無言のままオルフェウスの動きに身構えている。


「答えてくれないか。つれないね。……仕方ない。それじゃあ、そろそろ開演(はじめ)ようか」


 オルフェウスの指が弦を弾く。奏でられた音が魔力によって矢と化し、見えざる攻撃となってタウィルを襲った。速度は当然に音速だ。


(音使いか!)


 上から見ていた吉備之介がオルフェウスの技を見極める。『桃太郎』の超感覚は不可視の矢を確かに認識していた。音を媒介とした魔力の矢がタウィルに飛んでいく様を研ぎ澄まされた視力で追う。


「ふっ――」


 その常人には不可避なる攻撃をタウィルは一歩動くだけで躱してみせた。音矢が起こした風がタウィルの前髪を煽る。オルフェウスの眉がピクリと動いた。

 オルフェウスが本格的に曲を奏で始める。彼の指が弦を震わせる度に音矢が飛ぶ。何十という透明な(やじり)はまるで嵐の真っ只中の如き暴威だ。その悉くを正確にタウィルは避け、盾で防いだ。防御と回避を絶え間なく行い、オルフェウスへと近付いていく。

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