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第60転 苦渋

挿絵(By みてみん)

「ふーん……私がいない間にそんな面白イベントがあったとはね」


 輪廻転生軍側観客席にて。トイレから戻ってきた竹は吉備之介とネロからアーザー遭遇の話を聞いて、そう感想を述べた。


「面白イベントとは何だ面白いとは。こっちは感情ぐちゃぐちゃになってんだぞ」

「その割にはアーザーと普通に会話していたらしいけど?」

「……隣にネロがいたからだよ。そうじゃなきゃもっと混乱(パニク)っている」


 第三者がいるというのは精神面において重要だ。客観的な視点が得られるし、理性が見栄を張ろうとする。ネロの存在が期せずして吉備之介の動揺を抑え込んだのだ。


「へえ、ボクが役に立ったんだ? 悪い気はしないネ」

「ああ、あんがとな」

「ふーん……で、どうなのよ?」


 竹が目を鋭くして吉備之介を見やる。


「アーザーと戦えるの、あんた?」

「……さあな」


 竹の視線から逃げるように――あるいは、現実から目を背けるように吉備之介が俯く。


「まだ心の整理がついてねえよ。あいつが異世界転生軍にいる事すら受け入れられてねえ」

「そう。まあ、無理もないでしょうね」


 竹が軽く溜息を吐く。

 元より『覚悟の決まっていない少年兵』だったのが吉備之介だ。二つの試合を観戦してそれなりに感化されてきた様子だが、まだ英雄と呼ぶには足りない。そこに死んだ筈の幼馴染が生きて敵として現れ、ともすれば自分と殺し合わなくてはならないとなったのだ。受け入れ(がた)いのは当然だ。

 とはいえ、ゆっくりと悩んでいる暇はない。試合の数には限りがあるのだ。


「時間は待ってくれないわよ。ほら、もう第三試合が始まるわ」


 竹が試合場(アリーナ)に目を向ける。綺麗に均されたその場所には審判エルが参上していた。





 試合場の中央にて、エルは高らかと声を上げる。


『長らくお待たせしましたァ! それではこれより「二ヶ界(にかかい)決戦武祭」の第三試合を始めまァす!』


 歓声が沸騰する。まだ二試合だけとはいえ勝敗同数(イーブン)。互角の戦いを魅せられて観客達も大盛り上がりだ。


『それでは、早速選手に入場して貰いましょう! まずは異世界転生軍代表、カモン!』


 エルに促され、東の入場口から人影が現れる。


『「死に戻り」――そう呼ばれるシステムがある。多くのゲームに存在する、死んだらプレイヤーの位置や時間がセーブポイントに移動するというシステムだ』


 現れたのはくすんだ黒髪灰眼の少年だ。髪型はウニのようにあちこちに尖っている。服装は黒のノースリーブ。細身ながらも筋肉質であり、剥き出しの肩は力を入れずとも膨れ上がっている。

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