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第55転 次鋒戦決着

「負けるか……! 負けてたまるか!」


 奥歯を噛み砕く程に力を入れてニールは闇を放出し続ける。守りたいものを守る為、殺したいものを殺す為、腹の底から負の感情を吐き出して闇に乗せる。ジャクリン・ガードナーを殺し、ンガイ村を滅ぼした元凶である地球を彼は絶対に許さない。


 火弾と闇がぶつかりあっては吹き荒ぶ。まるで猛吹雪の只中にいるかのような激しさだ。

 しかし、その猛吹雪もやがて終わる。闇の勢いがみるみる内に弱まり、そして消えた。ニールの魔力が底を突いたのだ。同時に【火魔々羅煩悩連環銃カママラボンノウレンカンガン】も砕けて炎の粒子となって散る。残ったのは元の火縄銃が一丁だけだ。


「はあ……はあ……はあ……」

「ハッ……ハッ……ハッ……」


 互いに片膝を地に擦り付け、呼吸を乱す。どちらも全精力を使い果たした直後だ。すぐには動けない。だが、それでも動かなくてはならない。先に動いた方が相手にトドメを刺せるからだ。


「お……ぉおおおおおっ!」


 先に復帰したのは波旬だった。外見通りではないとはいえ、そこは大人と子供の体格の差。波旬の体力の方が利に恵まれていたのだ。ふらつきながらも立ち上がり、火縄銃の先をニールに向ける。


「これで――(しま)いだ!」


 最後の一発を撃たんと引き金に指を掛ける波旬。揺らめく照準はニールの眉間だ。このまま銃口が火を噴けば、魔力の尽きたニールは為す術なく死ぬだろう。

 だが、銃口が火弾を放つ事はなかった。


「らあっ――!」


 ニールが跪いた状態から地を蹴り、波旬に肉薄する。それはまさしく座位より技を放つ抜刀術――居合の如き動きだった。

 繰り出されるは左の手刀。闇を纏わず、しかし渾身の指先は波旬の胸部を貫いた。


「……勝ったぞ、ジャクリン……!」


 波旬の背から生えたニールの薬指には、あの地属性の指輪が嵌められていた。まだンガイ村が健在だった頃、ジャクリンがニールに贈った装飾品。傷を徐々に治癒する効果がある装備品だ。

 先に復帰したのは波旬だった。体力に恵まれていたのも波旬だった。だが、傷と体力を回復していたのはニールの方が早かったのだ。回復して、刹那の隙を見切らんと座位を保っていたのだ。

 先に動いた方が相手にトドメを刺せる。その認識を罠とした一撃――後の先の判断だった。


「かっ、はっ……!」


 波旬が致死の血を吐いた。

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