表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/84

第50転 流血試合

「どうした、第六天魔王? 顔色が優れないが。余を本気にさせた事を後悔しているのか?」

「ハン。まさかだろ。勝つにしても負けるにしても、相手が全力を出していなかった時の方がよっぽど後悔する」

「武士道精神とやらか? 高潔なのは結構だが、果たして本当に負けた時にも同じ事が言えるかな?」


 攻防の合間に言葉を交わす波旬もニール。二人とも過度の全身駆動により汗は止めどなく落ち、息切れを起こしている。それでもなお双方共に手は緩めない。僅かにでも隙を見せれば、それが死に至ると理解しているからだ。


(――だからといって、ここで膠着していても仕方ねえだろッ!)


 波旬が斬り上げ――と見せ掛けて、ニールではなく地面を抉った。土塊と砂煙が巻き上がり、ニールの身を包む。土塊が当たった程度でダメージを受ける魔王ではないが、砂が目に入れば敵を見失う。目潰しと追撃を回避する為に後方に跳ぶ。

 だが、波旬の追撃はニールの跳躍をも上回っていた。


「【変生(ヘンジョウ)銃触土(ガンブレード)】最大出力――【他化自在天斬(タケジザイテンザン)】!」


 火剣が更に猛々しく燃え上がり、三倍もの大きさになる。噴出する火を推進力として波旬が加速、瞬きの間にニールに肉薄し、剣を唐竹割に振るった。瞬間、直感が悪寒となってニールの背骨を貫き、脊髄が両の手刀での防御態勢を選ぶ。


 火剣が【闇魔法・双狼を宿す手ブラックセイバー・スコルハティ】の両の手刀を打ち砕いた。手刀を繰っていた十指も伴って一息に()し折られる。更に火剣は【闇魔法・影鎧(シャドウアーマー)】をも打ち破り、ニールの額を割った。脳を揺さぶられた上、多量の出血と共に力が抜け、ニールが膝を屈する。


「がっ……あああっ……!」

「……ちったぁ効いたか、小僧!」


 一方、波旬の銃からは炎が消えていた。今の一撃は銃の全火力を叩き込む彼の奥の手だった。銃は魔力を装填すればまた撃てるようになるが、すぐにとはいかない。ここからでは波旬も追撃も防御も叶わない。

 その隙をニールが見逃さない筈がなかった。


「舐めるな、人間! ――【闇魔法・血十字(ブラッディクロス)】!」


 波旬の足元に魔法陣が瞬時に描かれる。波旬は咄嗟に飛び退くが、判断が遅かった。魔法陣から現れた漆黒の杭が波旬の左肩を貫く。直後、杭と肩の交点から左右に杭が伸びた。左肩から鮮血が杭に沿って十字に飛び散る。


「っっっ……! て、めぇ……っ!」


 波旬の左腕が千切れて宙を舞った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ