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第49転 闇黒の支配者

「本当に彼の事は応援しているんだよ。人類への報復心を抑えて僕達に協力してくれているんだから。有難い事さ。そうでなくても魔族は全員、人類への敵意を抱えているというのに」


 魔族の人類蹂躙(じゅうりん)の衝動は欲求というよりも生態に近い。鳥が空を飛んで移動するように、魚が泳ぎ方を知っているように、ごく自然に「どうすれば人間を殺せるか」と考えてしまう。

 鳥や魚と違って魔族には理性があり、衝動の抑制は不可能ではない。しかし、それは決して楽な所業ではない。ニール曰く、「人間を前にして手を出さないのは息苦しさを感じる。鳥や魚が無理して歩いているみたいだ」との事だ。魔王軍はそれを堪えて異世界転生軍と結託してくれているのだから、アーザーとしては感謝の念に堪えない。


「まあ、だからといって彼は人類からの応援なんて不快なだけだろうけどね」


 だから応援を声に出す事はできないんだよ、とアーザーは溜息を吐いた。





 ニールと波旬との戦いはどこまでも激化した。

 黒剣と火剣。剣閃は幾つもの残像となり、残像が重なって見る者の網膜に焼き付く。激突の度に爆発音を奏で、巻き込まれた地面が掘り散らされ、試合場(アリーナ)の大気がヒステリックな悲鳴を上げる。


 戦況は互角だった。力も技も波旬が上だが、ニールは手数が違う。両の手刀という時点で波旬よりも得物が一本多いというのに、本来は十爪だ。ニールが指を開き、突き出せばそれだけで五刃の一斉刺突となる。それを一本の火剣で防ぐのは至難の業だ。

 更には、


(しっ)――!」


 僅かな隙を突いて波旬が火剣を薙ぐ。ニールの胸部に刃が横一文字に入る。だが、傷は付かない。ローブすら破れていない。ニールの全身を覆う闇――【闇魔法・影鎧(シャドウアーマー)】の防御力が高すぎるのだ。火剣の攻撃力では黒剣こそ押し返せても、影鎧を突破できない。敵の攻撃を無視して動けるのはかなりの強みだ。

 折角膂力で上回ってもダメージを与えられないのでは手の打ちようがない。むしろその状態で互角に戦えている波旬の剣技が並外れていると言える。


「無駄だ」

「っ……であるか」


 この攻防一体の戦闘力こそがニールのチートスキルだ。名を【闇黒の支配者ドゥエラー・イン・ダークネス】――闇属性強化スキル【宵闇(イブニング)】の最上級である。その内容は至って単純明快。闇属性のスキル全般に対して異常なまでの出力を発揮する事、それのみである。


 闇魔法の使用に限り、同じ魔法値(MAG)であっても他人の十倍以上の燃費の良さを得る。防御においては闇属性の攻撃は完全無効化。その気になれば反射も可能とする。実際にこのスキルで【呪い返し】を成した事もあった。

 単純、故に隙がない。魔族は全員が闇属性なので多かれ少なかれ闇に適性があるものだが、ニールの破格さには誰もついてこられなかった。故の『東方魔王』就任、故の異世界転生軍序列一位だ。


 闇の元素――呪いに対する親和性の高さ。転生の女神が見込んだ通りの才能だった。

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