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第43転 闇属性と闇の元素

「ああ。あれは『闇』よ」

「『闇』って言われてもな……具体的に何だよ?」


 そうね、と竹はどう説明をしたものかと少し考える。するとそこへ、


「それを話すにはまず『四元素』の説明から始めなくちゃネ」


 第三者の声が割って入ってきた。二人が視線を向けると、観客席の階段を一人の少女が下りてきていた。年齢は十代半ば。金髪碧眼の美少女だ。フリルとレースをふんだんにあしらった真っ赤なドレスを纏っている。


「チャオ! ボクはネロ。よろしくネ、モモ」


 少女は二人に愛嬌たっぷりに挨拶をする。根が純朴な男子高校生である吉備之介はそれだけでドキリと心拍数が上がってしまう。隣の竹は逆にテンションが落ち、半眼で彼女を見返した。


「ネロって、『暴君』ネロ? 輪廻転生軍の副首領の?」

「そーそー。キミ達と同じ神々の使いっ(ぱし)りだよ」

「……女の子とは思わなかったな」

「残念。女装男子(おとこのこ)なんだな、これが」

「えええええ!?」


 少女は少女ではなく少年だった。どこからどう見ても美少女にしか見えない彼に吉備之介は目を丸くする。


「で、どうしたのよ。あんた? VIP席にいたんじゃないの?」

「首領に頼まれてね、タケ。『前世の記憶が目覚めたばかりで不安がっている子がいるから、元気付けて欲しい』って。それで様子を見に来たんだ」

「俺の事か……。そりゃわざわざ悪かったな」


 吉備之介が眉にしわを寄せる。自分の情けなさが他人に迷惑を掛けたと思うと居た堪れない気持ちだった。


「竹。お前、首領に俺をチクったな?」

「メンバーの不調をリーダーに報告するのは当たり前でしょ。あんたは貴重な戦力なんだし」

「ぐぬぬ……」

「まあまあ。それで、『四元素』なんだけどネ」


 元素とは物質を構成する基本的な成分の事だ。この世の全ては元素によって作られており、現在では一二〇種類近くも発見・命名されている。水素や酸素、炭素や窒素などがそうだ。

 しかし、それは化学の領分での話だ。魔法の領分では元素はたったの四つしかない。地の元素、水の元素、火の元素、風の元素だ。この四つを併せて『四元素』と呼ぶ。

 十九世紀頃までは実際に存在すると信じられ、哲学や医学、錬金術の発展の要とされてきた。化学が常識となった以降はオカルトとして忘れられた概念だ。最近では分析心理学との深い関わりが指摘され、再評価されている。

 魔法世界カールフターランドはこの四元素を基盤として成り立っている。


「地水火風か。ゲームとかでよく見掛けるな」

「地属性、水属性、火属性、風属性だね。うん、その元ネタだよ。ゲームだと雷属性や氷属性なんかも追加されているね」

「闇属性とかもな。ひょっとして、それがアレなのか?」

「その通り。四元素はあくまで基礎。魔法世界(カールフターランド)には希少(レア)元素として『闇の元素』、『光の元素』がある。その『闇の元素』こそがニールが操るアレさ」


 ニールが発している漆黒の流体。炎のように猛々しくも冷たく暗いもの。あれこそが『闇の元素』であり、ゲーム風にいうと闇属性だ。


「で、結局あれは何なんだ?」

「第六元素。精神物質。蝕み。『魔界孔』より湧き出るもの。陰り。異世界人が『地球の澱み』と呼ぶもの。その正体は人間が最も慣れ親しんできた災厄」


 つまり、


「物質化した負の感情――いわゆる『呪い』よ」

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