第42転 剣劇
「【変生・魔針銃】!」
視界を埋め尽くす黒。迫る刃を波旬は機関銃モードの【火魔々羅】で迎え撃つ。刃が自身に届く前に高速で弾幕を散らす波旬。火弾が刃と乱れ合い、砕き合う。試合場に火の粉と黒の破片が舞い散る。
その時既に、ニールは波旬の左後方に回り込んでいた。
「!」
「はああっ!」
ニールの両手には【闇魔法・黒剣十指】が発動していた。四十九本もの黒剣弾雨は目くらましだったのだ。大量の黒剣に隠れて接近し、波旬の背後を取るのがニールの目的だった。
「【変生・処徒銃】ッ!」
黒爪に斬り伏せられる前に銃の変質を間に合わせる波旬。だが、背後を取られたロスを挽回するまでには至らない。右から左から上から下から斜めからと息つく間もなく振るわれる黒爪。波旬も散弾銃で黒爪を弾き返すが、初手の出遅れから徐々に押されていく。
やがて黒爪はとうとう波旬を捉え、その肉体を切り裂いた。
「ぐっ……!」
右の黒爪による逆袈裟斬り。波旬の右腰から左肩までに五線の斬り傷が入る。血飛沫が飛び散る程に深い傷だ。
「――【闇魔法・双狼を宿す手】」
だが、そこで攻撃の手を緩める程ニールは甘くなかった。間髪入れず左の黒爪を波旬に繰り出す。指を揃えての五爪を一刃に固めた手刀だ。受ければ心臓はおろうか肺も肋骨も纏めて貫かれるだろう。
「っ、【変生・銃触土】!」
銃身から炎が迸る。炎は銃身を峰として片刃の剣と化し、ニールの手刀を受け流した。遠距離武器である銃と近距離武器である剣を組み合わせた両用武器――銃剣だ。
迫撃が始まる。黒爪が奔る。銃剣が滑る。二人の攻防の余波で地面が抉られ、巻き込まれた大気がヒステリックに渦を巻いた。火の粉と黒の破片の散り具合がますます激しくなり、戦いのボルテージが上がっていく。
二人の戦いの盛り上がりに観客席が沸いた。
◇
輪廻転生軍側観客席にて、吉備之介が歓声を上げる。
「うおおお、剣になった! あの銃めっちゃ面白ぇ!」
彼が夢中になっているのは【火魔々羅】だ。多種多様な機能を見せる魔銃に強い魅力を感じているのだ。
「……男の子ってああいうの好きよね」
「まあな! 可変武器には男の浪漫を感じるぜ。もう少しガシャンガシャンって変形するともっといいんだけどな」
呆れる竹にも何のそのといった態度だ。これ以上は追及しても無意味と判断して、竹は小さく溜息を吐いた。
「それにしても、異世界の魔王が使っているあの黒いの、結局何なんだ?」




