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第36転 闇vs炎

 異世界の魔王と仏教の魔王が対峙する。互いにすぐには動かず、相手を値踏みする視線が交わしていた。


「貴様、KIP(キップ)だな」


 最初に口火を切ったのは異世界の魔王ニールだ。


「へえ、俺の事を知ってんのか? 小僧」

「うむ。――メタルバンド『WOWARI(ヲワリ)』のヴォーカル兼リーダー、KIP。余は別にメタル愛好家ではないが、全く聴かん訳でもない。貴様の曲も幾つか知っている」

「充分だ。聴いてくれているだけ有難い。サインやろうか?」

「結構だ。今は試合中故、余裕がないのでな」

「であるか。じゃあ……()()()()()()()()()()()()()()()。その頬にでもな」


 仏教の魔王波旬が歯を剥き出しにして嗤う。

 試合終了後にサインをする――つまり自分が勝つという挑発だ。サインは生きている人間が書くものだ。この試合を終えて生きていられるのは勝者になる以外にはありえない。死ぬまで戦うのがこの試合のルールだからだ。即ち、「死ぬのは俺ではなくニールの方だ」と波旬は宣言しているのだ。


「ふん、是非とも頼もう。できるものならな」


 波旬の挑発を受けて、ニールは顔を歪めて嗤い返す。


「よもやKIPが織田信長だとは夢にも思わなかったぞ。戦国の世の生まれで現代人よりは屈強ではあろうが、神代(かみよ)程ではあるまい。身体能力は人間を超えぬ筈だ。そんな様で余と闘うつもりか?」

「是非もなし。生憎と今は信長としてじゃなく波旬としてここにいるんでな。その心配は無用だ」

「第六天魔王、煩悩を司る神か……」


 ニールが目を細める。


「ならば、その実力を見せて貰おう」


 ニールが右手の人差し指を立てると、彼の纏う黒が応じて動いた。黒の一部が細く長く伸び、平たく鋭くなる。両刃の剣だ。剣を模した黒はその切っ先を波旬に向けた。


「――【闇魔法・黒剣(ブラックセイバー)】」


 黒剣が射出する。弾丸の速度で波旬を刺さんと空を貫く。それを、


「魔銃【火魔々羅(カママラ)】――」


 波旬は文字通り正面から迎え撃った。

 手に持った火縄銃で早撃ちを行う。火縄銃の先より出たのは鉛弾ではなく火の弾だ。火弾は黒剣と正面から激突し、粉砕した。代償に火の玉も砕け、相殺の結果となる。


「炎使いか。余は火が嫌いなのだがな」


 波旬の火の玉を見てニールが嫌悪感を露にする。


「正確に撃ち落とすとは()()。しかし、火縄銃か。マスケット銃は連射が利かない銃だという事くらいは知っているが……まさか本当に連射できん代物を試合に持ち出してくる訳があるまい。何を仕掛けているか……」


 闇が動き、黒剣が生まれる。今度は七本もの刃がニールから突き出ていた。

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