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第35転 次鋒戦選手入場/Side:輪廻転生軍

 輪廻転生軍側の観客席にて。


「序列一位!?」


 吉備之介が愕然とする。『魔王』ニール・L・ホテップ。先刻、竹に見せられたスマホにあった名前だ。異世界転生軍の中で最も地位が高いとされている人物である。


「驚いたわね……まさか第二試合に『魔王』を出してくるなんて」


 さすがの竹もこの展開には目を丸くしていた。


「あいつって向こうの総大将だろ? そのカードをここで切ってくるのか?」

「一手目で落ちた士気を総大将の自分が勝つ事で上げようって魂胆なんでしょうけど……博打よね。これで負けたら士気なんてガタガタよ。もう持ち直しようがないわ」


 だがしかし、


「こうして出てきたからにはそんなの承知の上で、しかも勝つ自信があるって事なんでしょうね」

「大胆さこそ王の故か……」


 固唾を呑む吉備之介。眼下に立つ闇を纏う少年。子供の外見でありながら、その威容はまさしく魔の王を名乗るに相応しいものだった。





 エルが観客席の歓声に負けないくらい声を張り上げる。


『さあ! そんな我らが魔王陛下に真正面からぶつかろうという蛮勇なる者は、こいつだ!』


 西方の入場口をエルが示す。悠然と歩み出てきたのは長身の男性だ。


『そもさん。輪廻転生とはそもそも何か』


 年齢は三十歳前後。服装はエナメル系のライダースジャケット。金髪だが地毛ではなく、染めた色だ。目にはサングラスを掛けている。


『仏教はこう答える。せっぱ。輪廻転生とは魂の旅である』


 右手に持っているのはマッチロック式のマスケット銃。日本人に馴染み深い名称でいうなら火縄銃だ。


『生命は肉体が死ねば魂が残る。魂は別の生命を新たな器として再び戻ってくる。あらゆる事象、あらゆる存在は全て繋がっていて周期的で、永劫に流転する』


 輪廻とは繰り返しを、転生とは生まれ変わりを意味する。仏教において世界とは生と死を繰り返すものであり、この繰り返しから解放される事を目的としている。


『また、仏教は世界を六つに分類している。天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道。これらを併せて六道と称す。人道こそが人間のいる世界――地球だ。生命は死ねばこの六道のいずれかに生まれ落ちる。そして、そこで生を終えれば、また六道の一つに赴く』


 天道は更に三つに分かたれ、その三つの最下層も更に六つに分かれている。その六つの中で最上層の世界を他化自在天(たけじざいてん)――通称、第六天と呼ぶ。


『地球において原則、神々は地上に干渉できない。しかし、第六天の支配者は裏技を使った。かつて己の名を冠した戦国武将を依代(よりしろ)にする事でそれを押し通した。()の者を己が分霊として扱う事で、人道に降臨したのだ』


 男性がサングラスを放り捨てる。露になった両瞳は炎の如き橙色だった。


織田上総介信長おだかずさのすけのぶなが改め――「魔縁(まえん)」第六天魔王波旬(はじゅん)!』


 歓声にどよめきが混ざる。さもありなん。織田信長といえば日本で知らない者はいないとまでされる有名人だ。海外でもサブカルチャーなどを通じて名を売っている。その転生者がここにこうして現れたのだから、驚き戸惑うのは当然だった。


『さあさあ盛り上がってきた所で、試合開始の宣言をさせて貰いますよ! それじゃあレディー・ファイッッッ!』


 かくして、第二試合は『魔王』と『魔王』の対決と相成った。

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