第33転 世界を決める十四人
「魔法っていったらさ、異世界転生軍の選手には『魔法使い』っているのか? イゴロウは『盗賊』だったけどよ」
「『戦士』とか『武闘家』とかRPGにありがちな職業って事? いえ、いないわね。見てみる?」
「何を?」
「異世界転生軍七将と輪廻転生軍七人の面子。私のスマホに情報が載っているわ」
竹にスマホを覗かせて貰う吉備之介。そこには竹の言う通り、十四人と一人の人間の名前が記載されていた。地球と魔法世界。二つの世界の運命を決める十四人だ。
異世界転生軍七将
・序列一位、『魔王』ニール・L・ホテップ
・序列二位、『勇者』アーザー
・序列三位、『神』ザダホグラ
・序列四位、『聖女』ヌトセ・メイヤーズ
・序列五位、『盗賊』イゴロウ
・序列六位、『戦士』タウィル・アトウムル
・序列七位、『悪役令嬢』イシュニ・G・シュプニクラート
輪廻転生軍名簿
・首領、『武聖仙』パラシュラーマ
・副首領、『暴君』ネロ
・戦闘員、『魔縁』第六天魔王波旬
・戦闘員、『妖怪』白面金毛九尾狐
・戦闘員、『道士』哪吒太子
・戦闘員、『詩人』オルフェウス
・戦闘員、『英雄』桃太郎
番外
・協賛者、『月読』かぐや姫
「序列五位!? あのイゴロウがあいつらの中だと下の順位だってのか!?」
吉備之介が驚愕する。常人の五〇〇倍の幸運を持ち、機関銃並みの槍術を扱い、摂氏三〇〇〇度の炎熱をも無力化してみせる。超人も超人、怪物の領域だ。そんなイゴロウよりも上が四人もいるというのが俄かには信じ難かった。
「そうね。連中の層の厚さが窺えるわね。いわゆる『奴は四天王の中でも最弱……』って奴よ。七人いるし最弱でもないけど。つまり、あんたはあのイゴロウよりも強い奴と戦う可能性が六〇パーセントって訳」
「マジかよ……。ちなみにクリト・ルリトールは何位なんだ?」
「七将以外の序列は決めていないらしいけど。序列三位までは自分の部隊を持たず、四位以下から各隊長を務めているって話で、あいつは八番隊長だから……まあ、序列七位よりも格段に弱いのは確実でしょうね」
「……帰りてえ」
頭を抱える吉備之介。
正直、イゴロウ相手にすら彼は勝てる気がしなかった。クリトをも上回る相手――否、たとえイゴロウより弱かろうと異世界の怪物達だ。そんなのと闘うなんて想像したくもない。やはり自分には荷が重い案件だと吉備之介は改めて戦慄した。
「ていうか、輪廻転生軍にも気になる名前がちょいちょいあるな。オルフェウスとかネロとか。確かに有名人なんだろうけど、戦えるのか? こいつら」
「戦えるから戦闘員に数えられているんでしょ。まあ、確かに『詩人』はちょっと分からないけど」
「実は俺、お前以外の転生者って首領以外だと会った事ないんだよな。地元から飛行機で直に闘技場まで来たもんだから」
「そうだったわね。ま、機会があればその内に顔を合わせるでしょ。今は他人の事よりも自分の事を心配していなさいよ」
「……それもそうだな。あー……怖ぇー……」
再度頭を抱える吉備之介。先の戦いで戦士の魂が揺り起こされたものの、一流の戦士として目覚めるのはまだまだ先の様子だった。