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第20転 激闘

 哪吒の双剣は刃渡り四〇センチメートル程の直剣であり、鍔には陰陽を表す太極図が埋め込まれている。刃は片方が黒色で、もう片方が白色だ。

 超高速の攻防が火花を散らす。鋼と鋼が激突する音は絢爛たるオーケストラのようだ。刺突を繰り返すイゴロウも、それを防ぎ切る哪吒も、どちらも人の限界を超えた出鱈目な動きだった。


(――ったく、信じられねえ。こんなに苦戦したのは魔王以来だわ。昔の地球ってこんな奴がうようよいたのかよ。おーおー、おっかねぇ~)


 内心でイゴロウが愚痴る。

 装飾品のスキル『一定確率で相手を即死させる』、『急所を突く』、『倍のダメージを与える』、『倍の速度で攻撃する』は実際に使うと自動追尾攻撃に、『攻撃を無効化する』は自動防御、『攻撃を回避する』、『即死する攻撃を回避する』は自動回避となって表れる。つまりスキルによってイゴロウの動きは最適化されているのだ。

 最善を選び続ける無駄のない戦闘技術。それを鍛え上げたイゴロウの肉体――高い筋力値(STR)敏捷値(AGI)――で振るっているのだ。だというのに、それを哪吒は封殺している。信じ(がた)い技量の高さだ。


(つーか、なんで無事なんだよ、こいつ)


 イゴロウの短剣は【バジリスクの血剣】という。この短剣には『斬り付けた相手に猛毒を付与する』、『麻痺を付与する』、『石化を付与する』といった相手を弱体化させる機能がある。傷を負わせなくても斬り結んだだけで相手に付与する理不尽な仕様だ。しかし、眼前の哪吒はピンピンしている。何らかの異常に蝕まれている様子はない。


(あー。『封神演義』や『西遊記』によると哪吒は蓮の花を肉体にしているって話だったか。成程、人間やそこらの魔物よりも弱体化(デバフ)に対して耐性があっても不思議じゃねえのか)


 蓮の花――蓮華はヒンドゥー教や仏教において清浄さや聖性の象徴とされている。泥水から生じて美しい花を咲かせる姿に人々は、俗世の欲に塗れずに生きるイメージを見たのだ。

 清らかで聖なるもの。その性質が猛毒や石化を寄せ付けない能力に繋がっていてもおかしくはない。


弱体化(デバフ)を期待するだけ無駄って事だな。となると、この【盗神の手(ヘルメス)】と()()()()で戦うしかねえって事か。ハッ、面倒くせえな)


 戦闘の手を休めずに苦笑を交えるイゴロウ。元はただの不運な一般人だった彼も、異世界転生後の経験で戦闘中に笑える程の度胸を得た。


「よっと!」


 タイミングを見計らって攻防から一歩退く。一歩といっても超人である彼が踏めば十数メートルもの移動だ。哪吒がテンポを崩すが、僅かでしかない。すぐさま離れたイゴロウを追う。

 その哪吒に向けてイゴロウは渾身の力で槍を投げた。着地と同時に地面を蹴り、膂力に推進力を加算した投擲だ。強化(バフ)された身体能力による槍投げは小型ミサイルに匹敵する威力だ。防御などすれば粉々に砕け散る。それを直感した哪吒は左半身を傾げて槍を躱す。

 目標を失った槍はそのまま壁際の地面に激突し、凄まじい爆音と共に五メートル級のクレーターを作った。


 イゴロウが哪吒の目と鼻の先に迫っていた。


「【盗神の手(ヘルメス)】!」


 イゴロウの魔法が発動する。直後、哪吒の右手に持っていた白剣がイゴロウの右手に渡った。

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