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第19転 神命豪運

窃盗(スティール)】とは使うと数メートル範囲内にいる敵から所有物を一つランダムに盗む技だ。【盗神の手(ヘルメス)】はその【窃盗(スティール)】系スキルの最上級であり、視界内にいる敵から好きな所有物を一つ、距離も遮蔽物も無視して奪い()る。成否判定は筋力も魔力も関係なく、ただ()()であるかどうかによって決定する。


「さすが剣と魔法の世界だな……色んなのがあるんだな」

「イゴロウのチートはそこじゃないけどね」


 竹がスマホから目を離さずに答える。


「イゴロウに与えられたチートスキルは【神命豪運(テュケー)】――精神強化スキル【命運(ツキ)】の最上級。幸運値を異常増幅させる常時発動型(パッシブ)スキルよ」

「幸運値……ゲームじゃあるまいし」


 地球と異世界カールフターランドに相違は数多くあれど、特筆するならば、まず挙げられるのはステータスとパラメーターの存在だ。

 異世界では魂の存在が証明されている。その魂を観測する事でパラメーターを数値化する事ができる。一般的には体力(HP)魔力(MP)筋力値(STR)生命値(VIT)魔法値(MAG)敏捷値(AGI)器用値(DEX)幸運値(LUC)、レベルの九種類だ。

 この九種類のパラメーターに加えて習得したスキルや資格を纏めてステータスと呼び、異世界人はこれを自由に閲覧できる。吉備之介が言った通り、まさにゲーム的システムだ。


「筋力値や敏捷値なんかは地球人でも計ろうと思えば計れるわ。握力測定とか反復横跳びとかでいいと考えればね。でも本来、数値には表せないパラメーターを視覚化して、その上、操作できるっていうのが異世界人の強みなのよ」

「確かに……レベルとか運の良さとか計れるもんじゃねえからな」


神命豪運(テュケー)】はその計測不可能な筈の幸運値を強化するスキルだ。この能力によってイゴロウの幸運値は今や常人の五〇〇倍を優に超えている。運が絡む要素において失敗する事はまずない。


「でも、幸運だけって聞くと強そうじゃねえよな。……なのに」

「ええ、そうね。実際はそうじゃないわ」


 竹が言う。


「イゴロウが身に纏っている装飾品は全部、特殊効果があるそうよ。『一定確率で相手を即死させる』、『一定確率で相手の急所を突く』、『一定確率で筋力値の倍のダメージを与える』、『一定確率で敏捷値の倍の速度で攻撃する』、『一定確率で相手の攻撃を無効化する』、『一定確率で相手の攻撃を回避する』、『一定確率で即死する攻撃を回避する』、エトセトラエトセトラ。その全てを一〇〇パーセント発動できるっていうんだからそりゃ厄介よね」

「それが幸運値極高の強みか……!」


 それに、と吉備之介が付け加える。

 眼下ではイゴロウが哪吒を攻め立てていた。突きを繰り出すだけの単調な攻撃だが、とにかく(はや)い。至近距離で機関銃を撃っているのと相違ない威力だ。運だけに頼ってきた人間ができる動きではない。運を味方にした上で自らを鍛えてきた者だけが得られる技量だ。


「……でも、哪吒も負けてねえぞ」


 機関銃の如き刺突。しかし、その殆どは哪吒には届いていなかった。腰に下げていた双剣を抜き、その悉くを叩き落していたのだ。

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