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第11転 大義

 クリトの連続拳撃が吉備之介を襲う。至近距離で繰り出される拳は最早弾幕だ。吉備之介は反撃も忘れて回避に徹する。腕の長さよりも間合いを取れば拳撃は届かなくなるので、どうにか避け続けていられるが、吉備之介から近付く事ができない。


「おらよっ!」


 クリトの足払いが炸裂する。拳に専念していた吉備之介は足元の攻撃に反応できない。転倒する吉備之介。クリトはすかさず吉備之介の上に跳び、拳を突き落とす。


「ひえっ!」


 横転して拳を躱す吉備之介。目標を逃した拳が路面を叩く。道路が粉砕され、十メートル級のクレーターとなる。逃げ遅れていたら吉備之介がどうなっていたか、想像するまでもない。


「くっ、クソ!」


 蒼褪めながらも吉備之介は路面を手で突き押し、素早く身を起こす。そのまま間髪入れず後方に跳躍した。少しでもクリトから距離を確保しようという怯懦だ。


「ちょこまかと。さっさと殺されろ、地球人」


 クリトは悠然と吉備之介を目で追う。余裕を隠そうともしない態度だ。握り締めた拳が発する威圧感に吉備之介は息を呑む。恐怖で足が竦みそうになる。


「…………。お前、異世界転生者って事は元地球人だろ。それなのに、なんでそう簡単に人類滅亡なんて真似ができるんだ?」


 威圧された自分を誤魔化すように吉備之介は問いを口にする。


「決まっている。大義の為だ」


 対するクリトは余裕からあっさりと答えた。


「おれ達異世界転生者の殆どは地球で酷い目に遭ってきた。その一方で異世界では仲間に恵まれた。だから、地球に対して容赦はしないし、異世界に対しては同情する。異世界を守る為には地球を犠牲にしても構わないと考えている」

「それが分からねえ。地球と異世界に一体どんな関係があるんだ? どうして地球人を滅ぼす事が異世界人を守る事になる?」

「何だ? 貴様、そんな事まで知らされてないのか?」

「何だって?」


 困惑する吉備之介にクリトは嘲笑を浮かべる。


「それもそうか。神々にとって貴様はただの尖兵。駒にあれこれと丁寧に教える必要もないな。それにどの道、貴様はここで死ぬのだから神々の事情など関係はあるまい」

「くっ……!」


 クリトが歩を進める。迫りくる殺意に吉備之介はどうしても及び腰になってしまう。クリトがゆっくりと近付く度に一歩ずつ後退する吉備之介。そんな彼の無様さにクリトは口角を歪めつつ、一息に仕留めようと地を蹴ろうとした。

 その直前だった。


「百地!」


 竹が吉備之介の名を呼んだ。


 振り返れば刀が円を描きつつ飛んできていた。難なく受け取る吉備之介。刀が飛んできた方向を見れば、そこには粉砕されたリムジンと竹がいた。服も肌も全身が切り傷だらけだが、ひとまずは五体満足だ。

 視線を横に動かせば、鉱物の樹木が幾つも生い茂る中、甲冑の兵士達が倒れ伏していた。竹はクリトに弾き飛ばされたあの状態からどうにか復帰して、見事に兵士達に打ち勝ってみせたのだ。


「刀を抜きなさい、百地!」


 あちこちから流血し、息も絶え絶えになりながらも竹が吉備之介に訴える。

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