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繰り返す


[...ANDROID-YEN-02R PLAY MEMORY:REPEAT = HUMAN RIN...2th]



 ピピッ、ピピッ、ピピッ。

 キッチンに備え付けられたアラームが時刻を告げる。

 空中のディスプレイに表示された時刻は午前七時。

 目下には盛り付け段階のお皿が並んでいる。

 今までは定刻通り完了していた朝食の支度も、今日はまだ終わってはいない。

 ……あれから意識せずに出来ていたことが、出来なくなってきている。

 これが心を持った影響なのかどうかは分からない。演算しようにも分析材料が足らないと自分の脳に言われる始末だ。心が宿ったアンドロイドなど世界で私しかいないのだから当り前といえば当り前だが。

 私は定刻を過ぎながらも支度を済ますと、早足で寝室へと向かった。

 そしてドアの認証が終わるとすぐに室内に入り、連動して暗かった寝室が徐々に明るくなる中でベッドに近づく。

 ベッドの上には、就寝時と同じ直立の姿勢でリンが眠っている。


 ……ここにいるのは、リンの生前の記憶を埋め込まれた、アンドロイドでしかない。


 リンの姿形をした、

 心を持たない私しか知らない、

 心を持たない私にしか反応しない、

 新しいことは何も言わない、ただの、人形。

 それでも、私は――。


 片膝をついて声を掛ける。


「おはようございます。リン」


 私の声に反応して、リン型アンドロイドはゆっくりと瞼を開けた。

 まだ、まどろみの中にいるような焦点の定まらない目で私を確認すると、左手を伸ばしてきた。私は顔を近づけ、それを迎え入れる。

 左頬に温かい手の平の感触。

 リン型アンドロイドは優しい手つきで頬を撫でると、青い瞳を細めて微笑んだ。


「おはよう。ケイ」


 私は彼女が信じた奇跡こころを、殺しつづける

 貴女と過ごした日々(きおく)を繰り返すために


 ただ、貴女と一緒にいるために――――。



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