表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
9/63

第八話 魔法少女支えます


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 魔法の国からやって来てない、日本生まれの魔法少女よ。


 もちろん全然チャームでも、なんでもない。

 あ、サリーちゃんと言えばだけど、どうやら彼女が日本最古の魔法少女らしいわ。

 私は全く世代じゃないけどね。

 だからもちろん見たこともないわ。

 でも、ちょっと調べたところによると、その魔法で結構なんでもできるらしいのよ、彼女。

 最後には大雨を降らせたとか、なんとか――え。

 なにそれ、スゴい。

 そんなのと比べたら、私の「物を一秒止める魔法」なんて、魔法じゃなくない?

 ミジンコよ、ミジンコ。

 「勘違い」の一言で済まされるレベルの、魔法とも呼べない何か。

 …まあでも、それはニカも一緒か。

 私たちの魔法は、気のせいレベルのささやかな魔法。

 それでもニカの魔法は、私のよりは凄いと思う。

 だってあの子の魔法って――あ! 

 ちょっと待って!

 もしかしてニカって、実在する魔法少女の『第一号』なんじゃない!?

 それってなんか…、なんか釈然としないわね。

 …。

 あー、いや。

 人間って何万年も前から存在するんだから、私たちの他にもきっと居た…はずよね?

 ほら、魔女狩りって聞いたことあるし。

 もしかしたら、彼女らも魔法少女だったのかもしれないわ。

 うん、きっとそうよ。

 現にここに、2人の魔法少女が現存してるし。

 だから、たとえ()()じゃなくても、()()思っておきましょう。

 うん、それがいいわ。

 よし、じゃあ気分が晴れたところで――。

 今日は、そのニカと約束があるんだったわね。

 約束って言っても、最近始めたいつものアレよ、見回りデート。

 場所は…公園ね。

 ニカん()の近くの運動公園。

 あ、そういえば、隣町に大きな森林公園があるけど、いつかそこにも行ってみたいわね。

 まあ、それはともかく。

 お昼ご飯食べたら出発しましょう。

 ニカん家はちょっと遠いから、自転車よ。

 それでも20分くらいかかるんだけど…。

 だ・か・ら。

 おかーさーん、今日のお昼はガッツりめでお願ーいっ。


 ――ふう、ふう、はぁ。

 やっぱり、地味にっ、遠いっ、わねっ。

 だからガッツリしたものっ、食べたいって、言ったの、にっ!。

 それなのに、親子丼って!

 せめてカツがよかった!

 『無いもんは仕方ないでしょ!』――って、いや仕方ないけど!

 無いもんは仕方ないんだけど!

 『高タンパク低カロリーでいいじゃない。』――いや、いいのかもしれないけど!

 なんか違う、というか!コレじゃ無い、というかっ!

 …。

 まあ、過ぎた事をとやかく言っても仕方ないわ。

 ふぅ。

 あー、やっと見えてきた、もうすぐよ。

 ニカはもう着いてるかしら――。

「…ーん、つぐみーん!」

 あ、居たわ――って、いやいや。

 そんな大きな声で呼ばなくても、手振ってくれるだけで分かるわよ。

 恥ずかしいじゃないの、もぉ。

 ちょっと今すぐそれ止めてーーっ!

「近くに誰もいないなのよ。」

 ハァ、ハァ…。

 ハァ、そんなのっ、分からっ、ハァ、ないじゃない。

「別に悪いことしてるわけじゃないなのよ。堂々としてるなのよ。」

 いや、まぁ、そうっ、だけど。

 ――ふぅ。

 目立つの好きじゃないのよ。

「いうほど皆、他人に興味ないなのよ。」

 そうかもしれないけど、理屈じゃないのよ、こういうのは! 

「だからって、息切れるほど走ってくることもないなのよ。」

 私にはそれほどの事だったの!

「ふーん。まあ、次から気を付けるなのよ。」

 そうしてくれると、助かるわ。

 あー…走り過ぎて胸がつらい。

 喉もつらい。

 足もつらい。

 自転車20分漕いだ後の、全力疾走、ほんと死ぬる…。

 まぁでも、ニカが分かってくれてよかったわ。

「そういえば、自転車で来たんじゃなっかったなのよ?」

 え?来たわよ?おかげで、足パンパンよ?

 ちなみに自転車は駐輪場ね。

「なるほどなのよ。じゃあ、駐輪場に向かうなのよ。」

 はあ?

 何言ってるの?

 今私、着いたところよ?

 足パンパンって言ったわよね?

「わたし自転車乗れないなのよ。」

 へぇ、そうなんだ。

 …。

 …ん?

 だから?

「だから、乗り方、教えて欲しいなのよ。」


 ――相変わらず唐突なんだから、もう。

 少しは休ませて欲しいわ。

 で、えーと?鍵、どこだっけ?

 たしか、バッグの内ポケットに――あ、あった。

 それでだけど、ニカ、パトロールの予定はどうすんのよ。

「いいなのよ。パトロールは別にやらなくてもいい事なのよ。勝手にやってるだけなんだからなのよ。」

 なんだからなのよ、って。

 ニカ、無理やりその語尾つけてない?

 元気に言っても、違和感しかないわよ?

「そんなことないなのよ。口癖、なのよ。嘘じゃないなのよ。」 

 言えば言うほど怪しいけど、…まあいいわ。

 それで?

 この私の自転車で練習したいって?

「そうなのよ。後ろで支えてもらう、あれ。あれやって欲しいなのよ。」

 はぁ…。

 ゆっくり散歩としゃれこむはずが、まさか自転車の練習に付き合うことになるなんて。

 …まあ別に、いいんだけどさ。

 そんな荷台バンバン叩くほどやって欲しいなら、付き合うのもやぶさかじゃないけどさ、でも――。

 でも、自転車の練習くらい、家の人にしてもらえばいいんじゃないの?

「うちに自転車無いなのよ。」

 買ってもらえばいいじゃない、どうせいつか必要になるんだし。

「たぶん、買ってくれないなのよ。」

 え?なんで?

 別に貧乏って訳じゃないんでしょ?

「普通なのよ。でも無理なもんは無理なのよ。」

 うん?

 なんか釈然としないわね。

 珍しく、ニカ、しおらしくなってるし。

「と、とにかく、練習付き合ってなのよ!つぐみん、お願いなのよー。」

 …あー、まあ、考えても仕方ないか。

 よそのおうちのことだし――。

 なにか特殊な事情があるのかもしれないし――。

 このままニカに脳みそ揺らされたら、脳震盪(のうしんとう)になっちゃうし――。

 はいはい、わかったわかった、分かったわよ、付き合うわ。

「やったなのよ!つぐみん、大好きなのよ。」

 はいはい、私も大好き、なのよ。


 ――じゃあ、とりあえず横に立って。

「はいっ、なのよっ。」

 サドルは…これくらいね。

 自転車、全く乗ったことないの?

「うんと小さいころに、補助輪つけて乗ってたなのよ。」

 ふーん。

 じゃあ、問題はなさそうね――あ。

 プロテクター!

「そんなものいらないなのよ!転んでも泣かないなのよ。」

 泣かないために付けるわけじゃないんだけど。

「そもそも、昔は皆、そんなの付けずに練習してたなのよ。最近の子供は軟弱なのよ!」

 それを最近の子供が言うのか――じゃなくて。

 それって、どっちかというと親が過保護になったんじゃない?

「そうなのよ!」

 いや、どっちなのよ…。

「最近の親御さんは過保護すぎるなのよ。」

 うん?

 …相変わらず無茶苦茶言ってるわ。

 最近、親と何かあったのかしら。

「つぐみん!早くはーじーめーる、なーのーよっ!」

 あー、もう、分かったわよ!

 分かったから、これ以上脳を揺らさないで!


 ――あー、暑い。

 ニカ、私疲れちゃったわ、ちょっとベンチで休憩させて。

「わかったなのよ。」

 あら、素直。

 それはさておき、後ろで支えるのって、大変だわ。

 全国の親御さん、苦労してたのね。

「全国の親御さんは、もっと子供が小さい時にやってるから、つぐみん程大変じゃないなのよ。」

 むっ、苦労掛けてる本人が言うセリフじゃないわね。

 一人だけ、涼しそうな顔しちゃって。

 デコピンしてもいい?

「ダメに決まってるなのよ!ごめんなさいなのよっ!前された時、超痛かったなのよ!あれは女子中学生が出していい威力じゃないなのよ!女子力の欠けらも無いなのよっ!」

 なんだ、残念。

 じゃあ、またあっち向いてホイっ、しましょう。

 ほら、ニカもベンチに座って、座って。

 負けたほうがデコピンよ、じゃあ、最初はグー。

「いやなのよ!待つなのよ!前回学んだなのよ!もう二度とつぐみんとデコピン賭けて勝負しないなのよっ!!」

 …むぅ。

 あの時、力いっぱいやり過ぎたわね。

 女子力込めすぎたかしら。

「つぐみんに女子力は皆無なのよっ!今日だって、オシャレとは程遠い恰好なのよっ!」

 ひどい言われよう。

 確かに、ニカに横に並ばれると、その差にちょっと恥ずかしいけども。

 今日だって、月とすっぽんみたいになってるけども!

 で、でもっ!

 私にだって女子力の一つや二つあるんだから。

 た、たぶん…。

 えーっと…、ほ、ほら!カバンに、絆創膏が入ってるわ、かわいいの。

「ばんそーこー持ってたら、女子力高いとか、わけわかんないなのよ。誰がそんなこと言ったなのよ。…とにかく、もう一回やってなのよ。あと少しで乗れそうなのよ!」

 むぅ。

「むくれないなのよ、つぐみん。帰りにお礼として、女子力のバフアイテム『マカロン』を奢ってあげるなのよ。だから、もう少し付き合ってほしいなのよ。」

 マカロン?

 マカロン食べると、女子力上がるの?

 えー…と?

 マカロン、と、女の子…。

 マカロン、…女の子。

 マカロンを、食べる…、女の子―。

 た!たしかに!

 たしかに食べてる子って、だいたい女子女子(じょしじょし)してる!気がする!

()()()()()()してるって、初めて聞いたなのよ…。」 

 わかったわ、ニカ。

 もう少し、後ろ支えてあげるわよ。

「つぐみんって意外と、げんきんなのよ…。」


「――う、うわっっと。ととと。お、おおーっ!」

 やかましいくらいに、声上げて乗ってるわね、ニカ。

 でも、それなりに走れるようになってきてるわ――まだ、ふらついてるけど。

 で、えーと…確かどっかに時計あったわよね、この公園。

 どこだっけ――、…あ、あった。

 駐輪場(ここ)の真上にあったのね、そりゃ逆に見つからないわ。

 まぁそれはともかく、1時間…か。

 思ったよりかかったわね。

 ニカって、こういうのはすぐ出来そうなイメージだったんけど――、勉強と違って。

 中二で初めて自転車乗るのは、やっぱり難しいのかしら。

「おおお?おー。」

 あ、でもちゃんと曲がれてる、もう大丈夫そうじゃない。

 後は漕ぎ出しさえできれば問題ないかな。

 それにしても、あまり転ばなかったわね。

 ニカの事だし、勢いに任せて転びまくると思ってたんだけど。

 倒れそうになるとすぐ足ついてたし、あれでも意外と慎重派なのかもしれないわ。

 まだまだ知らない事だらけね、ニカのこと。

「つぐみーん!どいてどいてーなのよっ!いや、止めてー、なのよっ!!!」

 ――へ?

 って、なんでこっち向かってきてんのよ!

 ねえっ!ブレーキは!?

「へ?」

 なんでポカーンって顔してんのよ!

 あああ!もうすぐそこじゃない!

 避ける暇なくなっちゃったじゃないっ!

 あー、もうっ!


 自転車、一秒だけ止まれ――っ!!


「うっ!?ふにゃーーーああああっ!」 

 えーーーっ!?うそ―っ!?

 ――。

 ―――()たたたたた。

「ちょー怖かったなのよぉ。痛いなのよー!」

 私も超怖かったわ、一緒に泣きたいもん。

 でも、そんな場合じゃないのよ。

 何が起こったの?あれ。

 なんで、()()なるの?

「でも、助かったなのよー!!」

 そうね、とりあえず助かったわね。

 ほらニカ、涙拭いて。

 転んでも泣かないんじゃなかったの?

「今のは転ぶとかいうレベルじゃなかったなのよ!!」

 あはははは。

 まあ、そうね、そんなレベルじゃなかったわね。

 ほんと乾いた笑いしか出てこないわ、思い出すだけで冷や汗出ちゃう。

「受け止めてくれて、ありがとうなのよーーー。」

 ホントは避けようとしたんだけど、間に合わなかっただけよ。

「でもおかげで助かったなのよー!」

 ホント、無事でよかったわ。

 それと、ニカ、ごめんね、私のせいで。


 ――さて、お決まりの後日談ね。

 後日談と言うか、同日の夜なんだけど。

 細かいことはいいのよ、それでだけど。

 あの後、自転車が多少トラウマになったニカは、『今日はもうやめるなのよ!』って泣いたまま練習の中止を宣言したわ。

 まあ、仕方ないわね。

 まさかたまたま持ってた可愛い絆創膏が、ニカの膝小僧に貼られるなんて思ってっもなかったし。

 あれは私でもトラウマになる――というか、すでに私も若干トラウマなってるもの。

 だからあの後、ニカがよく行くっていう、近くの喫茶店で恐怖と疲れを癒したのち、解散したわ。

 ほんとニカが落ち着いてくれてよかった、ずっと頭撫でてた甲斐があったてもんよ。

 約束のマカロンは食べられなかったけどね。

 ――で。

 みんなが気になってる『何が起こったか』だけど。

 えーと…。

 …。

 うん、また起きた現象だけ伝えるわね、その方がいいと思うわ。

 じゃあ、あの時起こったことだけど…。

 ニカが私に突っ込んできた時、お察しのとおり自転車に『一秒止まれ!』って魔法を使ったのよ。

 するとニカが、()()()()が、私の方に吹っ飛んできました。

 ………。

 え?

 それだけよ?

 ――ん?なに?それだけじゃ分からないって?

 いや、でもほんとにそれだけなのよ。

 そもそも私もよく分かってないのよ。

 じゃあ、もう少し細かく言うわね。

 えーと…魔法を使った自転車はしっかり止まったのよ。

 一秒どころか、魔法使った後ずっと。

 これは野球ボールを止めた時と一緒ね。

 でも、それに乗ってたニカは止まらなかったの。

 ちょうど自転車から投げ出される感じになったわ。

 だから避ける暇もなくて、投げ出されたニカを受け止めることにしたの。

 …いや、ホント無事に済んでよかったわ。

 運が悪かったら大事故よ、あんなの。

 受け止める私も相当怖かったけど、投げ出されたニカはそんなレベルじゃなかったでしょうね。

 ほんとごめんね、ニカ、私のせいで。

 …。

 いや、ちょっと待って。

 それって私のせい?

 よくよく考えると、巻き込まれたのは私のほうじゃない?

 うー…ん?。

 まあ百歩譲って、私のせいにしておきましょう。

 魔法が無かったら、自転車の籠を手で受けてめてただろうし。

 それだったら投げ出されることもたぶん無かっただろうから。

 ――まあ、とにかく。

 理由はわからないけど、ああいうときに魔法を使うと大惨事になる事が分かっただけでも、今日は良しとしときましょう。

 ほら、もしこれが自動車だったらって考えると…。

 肝が冷えるでしょ?

 車に使う前で良かったわよ、心の底から。

 だから、しっかりその肝に銘じておきましょう。

 それと、日を改めて魔法の研究もした方がいいわね。

 他にもこういう、分かってないことあるかもしれないし

 …といっても、一日一回しか使えないんだけどね。

 まあともかく、今日はもう寝ましょう。

 無事でよかったわ、二人とも。

 ほんとに。

 じゃあ、今日は疲れたわ、おやすみなさい。

 …。

 …あれ?

 今日は…、ニカの魔法について話すつもりじゃなかったっけ?

 まあ、いいか。

 それどころじゃなかったし。

 また次の機会にしましょう。

 今度こそ、おやすみなさい。


                              ―続―

はい、お疲れ様でした。

行ったり来たりで、今どこの時間軸なのか分かりにくいですね。

実は最初の予定では、もう少し暗いお話シリーズになる予定でした。

でも、お友達2人のおかげでそうならずに済んでますね。

ありがとう、ふたりとも。

では、今回も最後までありがとうございました。

次回は…また一秒で出来るネタが思いついた頃に上げます。


是非とも評価、いいね、コメントをお寄せください。ブックマークもお願いします。

このページを下にスクロールして頂くと出来ると思います。

めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ