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でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
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最終話 魔法少女託します


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 元魔法少女になる予定の、現魔法老女よ。


 ――ん?魔法老女の時点で、元魔法少女なんじゃないかって?

 …細かいことはいいのよ、そういう意味で言ってるんじゃないの。

 じゃあ、どういう意味なのかって?

 それはつまり――。

 近々、私の可愛い孫娘に、何十年と連れ添ってきた魔法を受け渡そうと思うのよ、――昔、ニカがくれた魔法と一緒に。

 ――昔、ニカが私に受け渡してくれたように。

 そうしたら、ほら。

 いつなんどき、私がいなくなったとしても、寂しくないでしょ?

 私がかつてそうだったように、ね。

 それで、私の魔法少女としての物語はおしまい。 

 ――どう?

 最終回の内容として、これ以上のものはないんじゃない?

「――まあ、たしかにね。というかコレ、日記、まだ書いてたのね。」

 ううん、書くの40年ぶりくらいよ。

 社会人になってから、全然書いてなかったわ。

「あー、確かに書いてるの見たことなかったわね。じゃあ、なんで今更…。ちょっと読んでみてもいい?」

 どうせ、私の返事なんて関係なく、読むんでしょ?

 ちょっとまってて、お茶用意するから、せーのっ、よっこいしょっ。

 …はぁ、やだやだ。

 いちいち気合を口から(こぼ)さないと、ソファから立ちあがるのもしんどいわね。

 ふぅ。

 えーとじゃあ、まずはお湯を――と、それとマキちゃん専用マグカップ。

 そして沸かしてる間に茶葉を――なんだけど、うーん、何を淹れよう。

 ――あ。

 確かナユが本場から送ってくれた、ニルギリの茶葉がまだ残ってたはず。

 香りが強すぎるのが得意じゃないマキちゃんには、ちょうどいいわね。

 マキちゃん、おくびにも出さない――は言い過ぎか、号泣するときは全然隠せてないし。

 まあとにかく、マキちゃんはかなり繊細なのよ。

 タートルネックも、実はチクチクして苦手とか言ってたわ。

 昔、あんな胸の空いたエッチな服着てたのにね。

「腋の下見せるのと、大差ないわよ。」

 脇ぐらいしか見せるとこなかったのよ、誰かさんの胸と違ってね!

 似合ってるならいいの!

「…まあ、たしかに似合ってたわ。」

 ――ったくもお。

 わざわざ大声だしてまで、私の脳内へツッコミ入れなくてもいいのに。

 というか、本読んでるんじゃないの?

 なんで無駄に私の心読んでるのよ、まったく。

 はぁ…私たちの中で、一番魔法が成長したのは間違いなくマキちゃんね。

 ま、別に今更、マキちゃんに隠し事なんてないから、いくらでも覗いてくれていいけどね。

 ――あ。

 そういえば、エッチな服で思い出したけど――。

 ずいぶんと昔、ふと気になって、マキちゃんに聞いてみたことあるのよね。

 心読んだ時、その人がエッチなこと考えてることないのかって。

 そしたら――。

 『つぐみで慣れた』って、一言。

 …。

 ……。

 はぁああ?

 はぁああ、よね、まったく。

 なによ、慣れたって。

 なんで私が常に発情期みたいに言われてるのよ。

 そもそも私と会う前はどうだったのよって話よ!まったくもう!

 思い出したら、また腹立ってきちゃうわ。

 お茶請けに、今日はマリトッツォ用意してたけど、私が昨日焼いたスコーン(習作)に変更。

 マリトッツォはあとでニカにでも持って行ってあげよ。

 あ、一応ちなみにだけど。

 『必要な時に、必要な人の心を読むんだから、そんな劣情を催してる心を読んじゃうとか、基本ないわ』だって。

 …。

 じゃあ『つぐみで慣れた』のさっきの掛け合いは何だってのよ!

 そもそも今さっきだって、私の心を無駄に読んだじゃない!まったくもう!

 はい、ツーアウト。

 これはもう、ニルギリじゃなくてアールグレイに変更ね。

 ベルガモットの香りに酔いしれるがいいわ、マキちゃん。

 はい、どうぞ。

「…あれ?つぐみ、なんか怒ってない?」

 別に怒ってないわよ。

 マキちゃんに怒るとかないもの、あり得ないもの。

 どうせ勝てないもの。

 知ってるんだもの。

「まあ、いいけど…。アールグレイは久しぶりに飲むわ、ありがとつぐみ。」

 ええ、どういたしまして。

 で、なんだっけ。

 今更なんで、小説(もど)の日記を書いてるか、だっけ?

「うん、そう。あれ、このスコーン、もしかして手作り?」

 え?スコーン割っただけで分かるの?

「ううん、見た目で。割ったのは関係ない。口に入れるにちょうどいい大きさにしたかっただけ。」

 あ、…そう。

 えーとね、この前、ニカと喫茶店にいったとき、スコーンをすごく美味しそうに食べてたのよ。

 だから、ちょと挑戦を…。

「へぇ…あのつぐみがねぇ、お菓子手作り…。娘が出来た時でも、作らなかったのにねぇ。…ふーん、ニカちゃんのこと、相変わらず溺愛して――あっ。…なるほど、そういうこと。ニカちゃんに読ませたいのね、コレ。」

 …相変わらず察しがいい。

 マキちゃんとの会話は、ほんと説明が少なく済んで楽だわ。

 というか、パラパラと文字を読みながらこんな会話するマキちゃんが恐ろしいわ。

「ニカちゃんに魔法をあげたいんだっけ?」

 そういうこと。

「でもほんと。まさか、孫が()()って名前になるとはねぇ…。」

 境遇も似てるし、なんだか重ねちゃって。

「運命感じちゃったと。」

 うん…そういうこと。

 マキちゃんは誰かにあげなくていいの?

 魔法をニカにあげる前に頼んでくれれば、よろこんで引き受けるわよ?

「私はいいわ。この魔法、便利だけど人にお勧めできるものじゃないもの。知ってるでしょ?」

 …そうね。

 聞きたくないものまで、聞いちゃうもんね。

「それに、つぐみみたいに、この本のようなちょうどいい説明書なんてないし。」

 でしょ?

 教材としてちょうどいいわよね、この小説(もど)き。

「擬き擬きって、そんなに卑下しなくても、ちゃんと書けてるわよ、コレ。スコーンも、初めてにしては上出来。」

 ホント?

 スコーンは…まあ、ホットケーキミックス使えば簡単だから、不味いわけないけど、小説擬きはほんと自信ないわよ?

「ほんとほんと。身内びいきかもしれないけど、普通、素人の文章ってもっと読みにくいものよ。そりゃ、赤ペン入れろって言われれば、それなりに入れられるけど――。でも、こういう自伝的なお話って、この不器用さが()なのよ。」

 いーの?

 国語の先生にそう言われたら私、調子乗っちゃうわよ?

「いいわよ、乗っちゃって、乗っちゃって。…つぐみの場合は、理系に進んだからこそ、逆に、それなりに文が書けてるのかもね。合理的に文章が構成されてるわ。」

 ふ、ふふ~ん。

 マキちゃんに褒められると、こう、背中をかいかいしたくなるわ。

 冥途への土産に、今日のこの日を覚えておかなきゃ。

「はぁ、まったく、縁起でもない。――まあ、その話はもう終わったからいいけどね、どうしようもないし。」

 それはほんとに申し訳ない。

「ほんとよ。ノノとナユも――あ、ノノと言えば、来週こっち来るって聞いた?」

 聞いた聞いた、というかメッセージ来てた。

「そう。それに合わせて、ナユも帰ってくるって。」

 え?

 それは初耳、3か月ぶりくらい?

 今どこにいるんだっけ?

 インド――にはもう住んでないって、話だったような。

「私も知らない。まあ、連絡はマメにくれるから心配はしてないけど。」

 というかあの子、してる仕事も謎なのよね。

 海外を飛び回ってるくらいしか知らないのよ。

 そのせいで、数年会えないとかしょっちゅうよ、でも――。

 前帰ってきてから、まだ一か月とちょっとじゃない、珍しいわね、ナユ。

「誰のためだと思ってんのよ。」

 ――あ。

 うん、ごめん。

「それは本人に言いなさい。謝罪じゃなくて、感謝の言葉をね。」

 はい、分かりました、マキ先生。

「うん、よろしい。」

 ご指導ご鞭撻頂いたマキ先生に、おかわりのお茶を淹れに行かなきゃ。

 驚異のスピードで本を読み進めてるけど、読了にはあとしばらくかかりそうだしね。

 あ、ちなみにだけど、マキちゃんとは社会人になってからずーっと頻繁に会ってるのよ。

 住んでる場所が近いってのもあるけど、社会人になってから数年、ルームシェアしてた名残で、たまに会わないと調子出ないのよ、お互い。

 マキちゃんに言わせれば、私のノノのルームシェアは()()だったらしいけど――。

 ノノに言わせれば、私とマキちゃんのルームシェアはS()M()()()()だったって言われたわ。

 …むぅ。

 例えが酷いけど、まあ、ノノだし仕方ない。

 それに、言い得て妙な気がするのよ、それ。

 マキちゃんの()()()には、愛があるというかなんというか――。

 あー…、そうそう、こういったタレコミがあったわね。

 『こっそり教えるっすけど、マキ様、つぐみん先輩が麻芽市で働くって決まった時に教師になるって決めたらしいっす。免許は取れたけど、どうしようかずっと悩んでたんすよ。でも、つぐみん先輩が地元から出ないなら私も――って感じっす。だから、マキ様の事よろしくお願いするっす。』

 ってな感じの、タレコミが。

 誰からか、とは言わないけど、海外を飛び回り始めるちょっと前に、そう教えてもらったわ。

 ふふっ、嬉しい事この上ないわね。

 まあつまり、よ。

 マキちゃんは、ずっとそばに居てくれてるのよ。

 だから――。

 ニカの事、お願いできる?

「……………………………………………………………泣くわよ?それでもいーの?」

 うん、いい。

 こんなこと、マキちゃんにしか頼めないし。

 ニカの事心配だし。

 私も出来る限り頑張るけど、ね。

 だからお願い。

「はぁ…、分かったわよ。じゃあ、もう涙腺限界だから、後の私をよろしくね、つぐみ。」

 ありがと、マキちゃん。


 ――それから三日後。

 私は無事、魔法少女を卒業することが出来たわ。

 『物の数秒止められる魔法』と『物を少しだけ動かせる魔法』をニカに託して、無事に。

 私がその魔法で世界を救う事は、ついぞなかったけど――。

 私は魔法に救われたのは、間違いない。

 パパが死んで、己を殺すしかなかった小学生のあの日々から――。

 紺野ニカとお別れさせられて、世界がタールのように溶け崩れた、中学生最後のあの日々から――。

 私は確かに救われた。

 正確に言えば、救われたのではなく、魔法はただの()()()()で、実際は友達みんなに救われたのだろうけど。

 それでも、今まで私と共にいてくれてありがとう。

 そして、ニカをよろしくね。


 それと、ニカ。

 大好きな、そして大切な私の可愛い新米魔法少女。

 私たちの魔法を、よろしくね。

                                      ―完―

お疲れ様でした。

最終話と書いてありますが、最終話ではありません。

つまり、最終話なのは劇中劇、つぐみちゃんの小説が終わりになります。

なので、お話自体はもう少しだけ続きます。

…あと、2話か3話?ほど。

完結までお付き合い頂けると嬉しいです。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


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めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

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