第四十話(前編) 魔法少女結論付けます
私はつぐみ。星河つぐみ。
たった一つ…いえ、二つしか魔法が使えない、魔法少女よ。
そもそも、私以外の二人は一つしか魔法が使えないんだし、私の方が異端よね。
あーでも、ご存じのとおりだけど、二つの内の一つはニカから受け継いだ魔法で、元から二つ使えてたわけじゃないか。
――で、えーと、それはともかく、何が言いたいのかと言うとね。
私たちの世界は、10万3000冊の魔導書が存在するでもなく、『魔法』という概念が共通認識として存在するわけでもないんだから、私たちが使えるこのささやかな魔法は、もしかしたら『科学』で証明できるんじゃないかって、そんな話がしたいの。
まあ、証明とまではいかなくても、この魔法という不思議な力に、何かしらの説明がつけられないかって話ね。
で、高校3年の時に私たち魔法少女3人とプラス1名は、証明を目指して、進学先は魔法に関係しそうな学問のある学科を選択することにしたの。
私とノノは理工学部を専攻をして物理現象の研究をし、ナユは理学部の脳神経科学を学び、マキちゃんはひとりだけ文系だから、文化人類学の分野から魔法少女の謎にアプローチするという形でね。
もちろんナユは一年遅れにはなるけど。
えーとつまり――ね、そんな私たちが定期的に開催していた、大学で得た知識を持ち合って報告し、議論し合う会議――題して、『魔法を科学で解析しようの回』の最後の会議が、本日開催されるってわけ。
なんで今回で最後かと言えば…そう、私たちがもうすぐ社会人になっちゃうから。
加えて――そうね、結論から先に言っちゃうと…、あまり芳しい成果が得られなかったから、といった所かしら。
4年の間、いろいろと実験したり調べたりとやってきたけど、特に得られた情報はないの。
だから、今回で最後にしましょう、となったわけよ。
――よし。
じゃあ集合場所のドトールに行きましょうか。
あのお店の雰囲気は、JDが長時間井戸端会議するのに丁度いいのよ。
――あ、いたいた、揃ってる揃ってる。
やっぱり、その席がいいわよね。
2階席におっきな窓がついてるだけあって、フロア角のその席は見晴らしがいいもんね。
って、あ!
ちょっと!なんで二人とも、そっちに座ってるの!
普通、向かい合って座って待ってるもんでしょ!?
「そりゃ、こっち側の方が見晴らし良いからに決まってるでしょ。」
「そっす、ソファ席に座ったら窓の外見えないっすからね。」
私が外見れないじゃない。
「早い者勝ちっす。」
むぅ、別に遅れてきたわけじゃないのに。
むしろ時間通りなのに。
…まあ、仕方ないからそっちに座るけども、むぅ。
「10分前行動を心がけて行動した私たちへのご褒美ね。」
「マキ様の言う通りっす。」
「むしろ私たち二人の顔が常に見えるんだから、つぐみにとってはご褒美でしょ。」
むむむ…そうだけども。
「…少しは否定してほしかったわ。――で、ノノは?」
今日はパスだって。
大学の卒論と動画の編集がたまってるって言ってたわ。
「ふーん。了解。ってかつぐみ、その量のミラノサンド食べられるの?」
――あ。
…やっちゃった、つい癖で。
余ったらいつもノノが食べてくれるから、量なんて最近気にしてなかった。
…ま、まあ、大丈夫よ。
食べられないことはないわ、そもそもが一人分の量でつくられてるんだし――ナユもいるし。
「さっきそれ2個食べたっすから、さすがにもう無理っすよ。」
う゛…が、がんばるわ。
あ、マキちゃん、そのミルクレープの残りとミラノサンド半分――。
「嫌よ。」
まだ全部言ってないじゃん!もうっ!
わかったわよ、食べるわよ、一人で全部。
欲しいって言っても上げないんだからね、ぷくぅ。
「そんな子供みたいに頬ふくらまされても。」
「あ、なんか昔はベーグルサンド売ってたらしいっすよ、ここ。」
「え?いきなり何、ナユ。」
「お父さんが言ってたんですよ、マキ様。サーモンの入ったベーグルサンドが凄く美味かったって、ドヤ顔しながら。食べてみたくないですか?」
「そう言われると食べてみたいけど、…もうないんでしょ?」
「ないですね、残念ながら。すみませんです、マキ様。かわりにオレンジジュース上げるっす。」
「謝らなくてもいいけど――ってかいらないわよ、コーヒーあるし。それにそれもう、ほとんどないじゃない。」
ベーグルサンドねぇ…、もぐもぐ、このミラノサンドより美味しいのかしら。
あ、そういえばベーグルって、そもそもあまり食べたことないわね。
今度買ってみようかな、なんか女子力高そうな感じするし、ベーグル。
いい…、すごく…いいと思わない?ベーグルっていう響き。
…というかナユ、前も似たような事言ってたわね。
あの時は確か――ああそうそう、オレンジジュースの生絞りマシンの話だったわ。
「あー、なんかお父さんが学生の頃、よく通ってたらしいっす。『俺の青春はドトールから始まった、ドトールは俺の青春の全てと言っても過言ではない、いや、もう俺自身がドトールだった』…とか、訳の分からないことを決め顔で言ってたっす。あほっすよね、うちの父親、似なくてよかったっす。」
…話を聞いてる限り、ナユはだいぶその血を受け継いでそうだけど。
「そうね、よかったじゃない、そっくりで。」
「なっ!マキ様までっ!そっくりって…えー、まさかそんな…。」
あらら。
だいぶショック受けちゃってるわね。
正直、私には分からない感情だけど、父親へのコンプレックスって。
まあでも――私の家庭は特殊だけれど、それでも今は、これはこれで満足してるのよ。
家のお父さん、いい人だし、空太は相変わらず可愛いしね。
「ねえ、つぐみ?」
ん?どうしたの?
ナユとの会話はもういいの?
「ああ、ほら。なんか戻ってこないし、いいかなって。」
まぁ…確かに。
「こんな事聞いていいのか分からないけど…、つぐみの星河って姓は再婚してから?」
…ナユ並みに、突拍子もないこと聞いてくるわね、マキちゃん。
――ん?
あ、ああ、もしかしてナユが父親の話したから?
「ん、まあ、そんなところ。」
とか言いながら、斜め上に目を遣って恥ずかしそうにしてるけど、私も恥ずかしいって。
つまりは、私の心を読んで問題なさそうだったから、この話題を振ったって事でしょ?
ん-もう。
いや、マキちゃんの魔法の使いどころとしては、感謝しかないのよ。
私の心中を慮って、魔法使ってくれたわけだしね。
さすがマキちゃん、としか言葉が出てこないわ――でも。
でも、それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいのよ。
正直、今更マキちゃんに見られて恥ずかしいものなんてないから、そこまででもないんだけど、でもそれでも恥ずかしいものは恥ずかしい、何か分かんないけど!
「で?どうなの?正直、前から気になってたのよ。」
それほど気にすることでもない気はするけど…んー。
…まあいいわ、生まれた時から、よ。
生まれた時から私は、星河つぐみ。
「ん?んん?…そんなことってあるの?」
あるのよ、現に私がそうだし。
えーっと、私の母親の再婚は死別からの再婚だからね。
パパ…あー、私の本当のお父さんが亡くなっても、おかーさんはその姓を名乗り続けられたのよ。
で、そのあと再婚した今のお父さんは、私に気を遣って姓を星河に合わせてくれたってわけ。
――そんなお父さんだからこそ、今私はこうして、元気に育てたんだと思う。
ま、いろいろあったけどね、中三の時とか特に。
だから、いろいろと感謝しかないわ、お父さんには。
あ、あと一応おかーさんにもね。
「へー、なるほどなるほど。だからつぐみの日記小説も、初めから違和感なく『星河』って名乗ってたのね、納得。」
え、ちょっ!なんで知ってんの、それ!
コーヒー溢しそうだったじゃないの!
「え?ノノから聞いた。」
「っすね。」
あ、ナユ戻ってきた――っじゃなくって!!
何言ってくれちゃってるの、ノノ!
誰にも話さないで…って…、――言ってないけども!
「『裸で添い寝してあげる代わりに、つぐみんの秘密一つ教えるの』って交換条件付き付けたら、照れながら教えてくれたって言ってたわ。」
「え…つぐみん先輩、それはさすがにつぐみん信徒のあたしでも引くっすよ?」
ないないないない!
そんな事実ない――とは、微妙に言いにくいけど、真実ではないってそれ!
実際は、裸で添い寝なんてしてもらってないし、半…分だけしか脱いでなかったし!
――って、それはさておきよ、どうでもいいのよ、そんなことは!
とにかく、秘密なんだから人に言っちゃダメじゃないノノ!!
「『秘密を二人に話したって、かいちょーからつぐみんに言っておいてほしいの。そうじゃないとフェアじゃないの。お詫びに帰ったら、チューしてあげるの。』…だって。相変わらずね、あなたたち。フェアじゃないって、何がよ。私たちを巻き込まないでほしいわ。」
なーーーっ!
なにそれ!!秘密を話したお詫びにチューって!!
そんなもんいらな――、いらな…、…、い、いるけども!貰うけど!
ねっとりたっぷり貰うけど!
あー!もう!仕方ないから、許してあげるわよ!もおっ!
別に隠してたわけじゃないし、二人になら、聞かれれば答えてたと思うし。
「あたしの唇はあげないっすよ、つぐみん先輩。」
「もちろん私もよ。」
い、いらないわよ!
ノノの言う事真に受けちゃダメだからね、もう!
帰ったらチューするってのも冗談なんだから、本気にしたらダメだからね、みんなも!
「はいはい、まあそんなつぐみとノノの同棲生活なんてどうでもいいのよ。とにかく、最後の会議始めましょ。だから、ソレ早く食べきっちゃって。」
…なんか酷い。
またマキちゃんにいじめられた気がするけど…、マキちゃんだから仕方ない。
これくらいは笑って許せるくらい、マキちゃんにはお世話になってるし、マキちゃんの事大好きだし。
――で、それより。
あ、あと4分の1…、大丈夫、まだ入るわ。
正直なところ全然まだ食べられるんだけど、これ以上食べると、お腹の周りに防寒対策が施されちゃうから、あまり気が進まない、ってのが本音。
「今から寒くなるんだから、ちょうどいいじゃない。アザラシみたいで可愛いし。」
むぅ。
なんか今日はいつもより、マキちゃんがいじめてくる。
なんかミラノサンドがショッパイ気がするわ。
「…なんか。…マキ様って、ノン先輩に負けず劣らず、つぐみん先輩のこと大好きですよね。」
「はあ!?」
――え?
こんなにいじめられてるのに?
「ノン先輩とつぐみん先輩の仲について話す時はいつも、いつも以上につぐみん先輩いじめてますもんね。」
あ、あー…確かにそう言われれば、そんな気もする。
まさか、嫉妬だったとは。
嬉しすぎて、ちょっと尿管が緩みそう――というのは流石に下品に過ぎるけど、それくらい嬉しい。
「な、な…。っ!」
あら、珍しい、マキちゃんが言葉に詰まってらっしゃる。
その目を見開いた顔もSSRね。
マイ・マキちゃん写真フォルダに収めておきたいわ。
ふふ、じゃあその素敵な顔も拝めたことだし、助け舟でも出してあげましょう。
えーっと、マキちゃん。
社会人になったら、私とルームシェアする?
「しないわよっ!なに顔赤らめて言ってんのよ、つぐみっ!もおっ!」
「えー、せっかくのお誘いなんですから、マキ様素直になって受ければいいじゃないですか。」
ほんとよねぇ。
「私は素直よ!」
「せっかく、内定先の職場も近いんですから、ちょうどいいじゃないですか。」
私もノノの職場が遠くになりそうだから寂しかった所だし、いつでも歓迎するわ、マキちゃん。
「……。――もうっ!考えとくっ!!でも、別に二人の同棲が羨ましいと思ってたからってわけじゃないんだからねっ!!」
はいはい、わかってるわかってる。
「わかってますよ、マキ様。」
「絶対わかってないじゃない!もおっ!」
「そんな暴れるとコーヒー倒れますよ、危ないです、マキ様。」
――あ。
たぶんだけど、今さり気なくナユ魔法使ったわね。
マキちゃんのコーヒーのグラス押さえる直前に、きっと。
…ふむ。
…。
ねえ、ふたりとも、私たちの魔法って、結局何もわからずじまいだったじゃない?
「うん?――そうっすね。魔法使用時の脳派は、特段変わったことはなかったっすし。」
私とノノも、物理法則では魔法の現象を説明するには至れなかったし。
私の時を数秒止める魔法も、やっぱり完全に物理法則無視してるし。
ニカの、物を少しだけワープさせる魔法も、私の魔法以上に物理法則では説明がつかないし。
ナユの少し先の未来が見える魔法なんて、アインシュタインもお手上げだろうし。
――でも、だからこそ。
半分素人の私たちだけど、それでも手をいろいろと尽くしたからこそ、大手を振ってこの謎の力を『魔法』って呼称していいんじゃないかって思うのよ。
「うーん、言いたいことは分かるっす。」
「う、うん。まあ確かにね。」
――あ、マキちゃん戻ってきた。
って、それはおいといて、えーと。
でね、じゃあ魔法ってなんだって話なんだけど、前にマキちゃん面白いこと言ってたわよね。
「うん?面白い事?」
あ、マキちゃん、まだ落ち着いてないのね。
カランと音を立てて、グラスを頬に充てて顔冷やしてるし。
――オホン。
そう、歴史上の人物にそれっぽい人がいるって話。
「ああ、あれ。信じがたいことをした偉人たちの話ね。有名どころで言うと、エジプトを統一したクレオパトラや、神の声を聴いたというジャンヌダルク。ああ、あと日本にもそれほど有名じゃないけど、御船 千鶴子っていう透視能力を持ってた人がいたとか、そんな話もしたっけ。」
そうそう、それ。
それって、もう魔法じゃない?
特に透視能力なんて、もしかしたら、ナユと同じ力だったかもしれないし。
「ん-、そうっすね。そういわれればそうっす。言ってることはわかるっすけど、でも…言いたいことが分からないっすね。」
つまり。
…えーとつまり、魔法って誰でも持ってる能力なんじゃないかって、私思うのよ。
「というと?」
喋りやすい相槌、ありがと二人とも、じゃあ続けるわ。
誰でも些細な能力を持ってるけど、それに気づいていないんじゃないかって。
そもそも些細過ぎて気づけないほど、ほんとに小さな力を誰もが持ってるのかもって。
そんな中、私たちはたまたま、ちょっと強めの力を持ってた。
だからこそ、自分の力に気づけたんじゃないかなって事。
「うーん…。とすると、歴史の偉人たちはさらに強力な魔法が使えてたってことっすか?」
もしくは、今のわたしたちみたいに、些細な能力を鍛えて昇華させてきた。
それこそ、ナユが今さっきマキちゃんのグラスが倒れるのをさりげなく魔法を使って予知して、未然に防いだように。
「え?あれ、気づいてたんすか、やばいっす、さすがつぐみん先輩っす。だから大好きっす。」
ふふ、ありがと。
じゃあナユもルームシェアする?
「それは遠慮するっす。あたしの好きは先輩方と違うんで。」
「ちょっと、なんで私も入ってるのよ!」
「それは自分の胸に聞いてみるといいですよ、マキ様。」
「~~~~~~っ!!!」
あはは、今のうちにミラノサンド、最後の一口食べとこ。
ふぅ、美味しかった。
でも今日は家まで遠回りして帰らないとね。
じゃあ――。
あの、話し続けるわよ?
「どうぞ!!」
あはは、マキちゃんが今日面白い、かわいい。
「そんなこといいから、早く続けてつぐみ!!」
はいはい、ふふ。
で、だけど。
あー…いや、言いたいことは大体全部言ってたわ。
私にしたら、さっきのナユの魔法の使い方なんて――あんな一瞬でさりげなく魔法使って事故を防止するなんて、有り得ないのよ。
もし私が今ナユの魔法を借りたとしても、同じことは絶対できないもの。
グラスが倒れる未来を防ぐどころか、未来を見ることすらできないと思う。
でも、ナユはそれを10年近く魔法とお付き合いしてきたことで、当たり前のように魔法を使って、その未来を防いだ。
これって、自分の能力を使いこなしてるって事じゃない。
最近じゃ、数秒先まで見えるって話だし。
それに、私の魔法も最初は一秒しか物を止められないと思ってたけど、どうやらもうちょっと止めれるっぽいし、ニカの方の魔法だって1センチ以上動かせるようになってるし。
ん-、ちょっと話ずれちゃったけど、とにかく私が言いたいことは、魔法は誰でも使えるもので、人間の能力なんじゃないかってこと。
でもそれに気づけないくらい些細な能力で、だからこそ、その能力を練習で伸ばすこともできない。
私たちは、たまたま気づけて、能力を使用し続けてこれたから、どんどん力が強くなってきたんじゃない?
あーほら、マキちゃんも最初自分で言ってたけど、マキちゃんは私たちが魔法と呼んでる力を『魔法』だと思ってなかった、って言ってたでしょ?
少しだけ心を読める魔法のことね。
あれなんて、人間の共感能力の延長線上にある力と言っても過言じゃなくない?
そもそも私から見ると、マキちゃんは魔法を使わなかくても、人の心をある程度呼んで行動してるようにも見えるしね。
…えーと、だから、なんて言ったらいいか――。
「いや、もういいわつぐみ。言いたいことは十分わかった。」
「っすね。たしかに、つぐみん先輩の言ってる通りかもしれないっす。」
ほんと?
でも、これだと一日一回しか使えない制限の謎は、まったくもって解けてないけど。
「いいんじゃない?べつに全部が分からなくたって。そもそもほとんど素人の学生が3人寄っただけで、こんな謎の力の解明なんて出来るわけないし。かといって、公にして話を大きくなんてしたく無いし。今の仮説で十分納得いくわよ。少なくとも私はね。」
「ん-、そっすね。特殊な脳派がでてなかったのも、魔法の力がただの日常の延長だからとすれば、特段不思議ではないっすしね。あたしもマキ様と一緒で、納得できたっす。」
ほんとにほんと?
自分で言ってて、ちょっと無理あるかもって思ってるんだけど?
「一番説明がつかない魔法を、2つも持ってるつぐみが納得できるなら、それでいいんじゃない?あれなんて、ジャンヌダルクすら超える超常能力じゃない。特に物を1秒止めるやつ。最近は車止めたら、中の人も一緒に止められるようになってきたんだっけ?」
ま、まあ一応。
絶対じゃないけど――、もちろん実際に車には使ったことないけど、でもまあ一応。
ノノに、ニカの魔法で1センチ以上ものを動かせたって聞いてから、意識して魔法の練習してたんだけど…。
ほんとに魔法が成長してるっぽくて、嬉しいやら、怖いやら、複雑な感情が渦巻いてるのよ。
「ほんと凄い魔法よね。そんな魔法を使うつぐみが納得できるなら――うん、それでいいと思う。」
ん、ありがと、マキちゃん。
「『魔法を科学で解析しようの回』の最後の会議で、一応の結論が出てよかったっす。この数年間が、無駄にならなくてよかったっす。」
「私は別に結論なんて出なくてよかったけど。それに、結果が伴わなくても無駄じゃないでしょ、おかげで大学生活楽しかったし。」
ふふ、マキちゃんって、いつも顔赤らめながらいいこと言うわよね、かわいい。
――じゃあ、このことをノノとそれと…ニカに報告しに行かないとね。
「あ、紺野さんと言えば。そういえばもう一つつぐみに聞きたいことがあったんだったわ。」
ん?何?
あ、ちょっとまって、豆乳ラテ飲んじゃうから。
――ん。
うん、で?
「ここ数年間、聞くタイミングがなくて聞けなかったんだけど…。あの…紺野さんが亡くなって、つぐみはあんな状態になって…、それでどうやって今みたいに元気になれたの?」
あれ、そういえば言ってなかったっけ。
別に隠してたつもりじゃないんだけど――うん、確かに言ってなかったわ。
んー…。
じゃあ、二人とも今から家に来る?
ノノがパソコンとにらめっこしてるけど、その傍らでなら、教えるわ。
そういえば、ノノにも言ってなかったし。
「わかったわ、今からおじゃまする。」
「つぐみん先輩の行くとこなら、どこまでもお供するっす。」
うん、じゃあ食器返却して、向かうとしましょう。
私とノノのアパートに。
――ふふん、ちゃんと実家から持ってきてるのよ。
何しろ私のお守りだからね。
例の高校1年の入学式に届いたニカからの手紙と、それとポルテ。
それらをちゃんと私のアパートの部屋にちょこんと置いてあるのよ。
って、あ、ノノに連絡しないとね。
えーっと…『今から二人を家に連れてくわ』――送信っと。
よし、じゃあ帰るとしますか。
遠回りして家に帰る分の運動は…明日に回すしかないわね。
秘密をばらした罰として、ノノにも付き合わせよう、そうしよう。
―続―




