第三十七話・下 魔法少女会いに行きます
――と言うわけで、大岩墓地公園前のバス停に到着ね。
あ、読み方は『おおいわぼち』よ。
元々、この山の名前が大岩山だったのが、最近――といって私が生まれる前くらいらしいんだけど、まあそれくらいの時期に観光産業に力を入れるって名目で、大願山にこっそり名前を変えられたっぽいわ。
でも、いろいろと問題があったのかどうかは知らないけど、墓地公園の名前はそのまま残った――ってわけらしい。
政治的なあれやこれやは分からないけど、墓地の名前を変えるなんて忍びない気がするから――とか、そんなありきたりな理由で、墓地に名前を残したんじゃないかな。
――と、昨日の夜、ベッドで携帯に移ったウィキの画面をスワイプしながら思ったわね。
もしくは面倒だったか、ただ単に忘れてただけか…。
まあともかく、この大願山の山頂公園にある謎の物体――いかにも、取って付けました感が否めない、金属製のハート形っぽいような違うようなオブジェ――が飾られた高台の上で、文字通り拝みながら夕日にお願いをすれば願いが叶う…とかなんとか、そんな謳い文句だったはずよ。
観光名所として売り出した頃はどうだったか知らないけど、今ではもう、少なくとも私が昨日の夜に初めて知ったくらいの、そんな知名度よ。
今でも誰かやってるのかしら。
まあそれは分からないんだけれど、そんな話を今日、バスの中で皆にする予定だったのよ。
だってほら、ノノちゃんとナユは昨日までアレだったし、マキちゃんともまだ会って間もないし――いや、間もなくはないんだけどそれは置いといて、そんな4人でバス乗るんだから、ね?
バスの中気まずい雰囲気で過ごすのは嫌だから、そんな話題を準備してたってわけ。
ま、その準備は無駄になったんだけど。
つまりは気の回し過ぎってやつよ。
でも杞憂で済んだのならそれが一番よね、みんな仲良くニカのとこに行けるんだから。
私の浅い知識を、無駄に披露せずに済んで良かっ――ん?なに?
ユイちゃんとミナエちゃんはどうしたのかって?
ああ、うん…実は、二人にはニカの話をしたことないのよ。
というかそもそも、ノノちゃんに話したのだって、家に呼んだ時にあのぶちゃいくなぬいぐるみについて聞かれたから――だしね。
でも、なんでナユには話して、ノノちゃん達には話さなかったんだろう…。
んー…。
…。
私…とニカの関係を、魔法なしで語るのは難しかったから、かな?
…。
…たぶん。
たぶんよ、たぶん。
だって自分でもよく分からないもの、だから深く聞かないで。
でも、少なくともだけど、話すのが嫌だったからって事じゃないと思うのよ、だってほら、ナユには話してるもの。
…そーいうことにしておいて。
あ、ちなみに今回マキちゃんを誘ったのは、魔法使える仲間ってだけじゃなくて、中学の時ニカが仲良くしてたって言ってたのを思い出したからよ。
誘ってよかったと既にもう思ってるわ、まだニカのとこについてないけどね。
――っと。
じゃあ、バス降りるわよ?
バス停『山頂公園』の一つ手前の『大岩墓地公園前』のバス停に着いたし。
ふふ、このバスのステップをコンコンと鳴らして降りるのが楽しいのよね。
え?子供っぽいって?
そんなことないわよ――ほら、ノノちゃんもコンコン。
マキちゃんもコンコンって楽しそうに降りてるじゃない。
ほらね、バス降りる時のこのステップは、ちょっと楽しいのよ。
まぁ、背の高いナユは少し窮屈そうだったけど――そんなことより。
やっぱりちょっと街から遠いわね、ここ。
皆のおかげで、バスの移動時間はあっという間だったけど、でも距離が短くなったわけじゃないからね、バス代はちょっと嵩むのよ。
だから、皆のバス代は私が持つわって言ったんだけど――、全力で断られたわ、皆に。
『水臭い』だって。
マキちゃんに至っては『私も一度来たかったのよ』って言ってたわ。
そう言ってくれるんだったら仕方ない、それに甘える他ないわよね。
そんな甘えられる友達が出来たって、ちゃんとニカに報告しにいかないと。
――で、よ。
えーと、そのニカのお墓は――っと、…どれだっけ。
墓地公園だから、もちろんいろんな人のお墓が沢山あるのよ。
景色もいい場所だし、結構人気なのかもしれないわ、ここ。
――じゃなくて、地図、地図、地図。
地図で確認ーっと、おかーさんに貰った簡易の地図は確かカバンの隅に――あ、あった。
ん?
ああ、おかーさんはニカのお母さんから貰ってたらしいわ、地図。
私が世界を呪ってたあの恥ずかしい期間に、いろいろとニカのお母さんとやり取りしてくれたらしいのよ、うちのおかーさん。
頭が上がらないわ、ほんと。
ま、そんなことはいいのよ今は――うん、ニカのお墓はあっちね。
じゃあみんな、行くわ――。
「あれ?もしかして、つぐみちゃん?」
ん?誰か呼んだ?
――って、3人の誰かじゃないわよね、声が違うし、聞こえた方向も違う。
じゃあ誰なのか確認しないと、確か駐車場の方から声が聞こえ――あっ!
…。
……。
ニカの…、―――お母さん。
「やっぱり!久しぶり、つぐみちゃん。大きくなったわね、来てくれて嬉しいわ。」
…。
どうしよう、言葉が出ない。
急いで駆け寄ってきてくれたのは有難いけれど、嬉しいとか言いながら、泣きそうな顔するのは反則すぎると思う。
だって、3人のおかげで意識から外れてた、今朝のあの感情がせり上がってくるんだもん。
で、でも、つられて私も泣きそうになってる場合じゃない。
ニカのお母さんには、ちゃんと言わないといけないことがあるから。
だから――。
――。
ご、ごめんなさいっ!
わ、私!…私、ほんとはもっと、もっと早く、早く来るつもりで――、来なきゃダメで――っ。
「いいのよ、つぐみちゃん。つぐみちゃんも大変だったんだから、私たちと違っていきなりで――。とにかく、先にあの子のところに行ってあげてくれる?…きっと、つぐみちゃんのこと待ってるから。」
…。
…はい。
「うん、じゃあ案内させてもらうから、ついてきてね。その――お友達みんなも。」
そう言いながら、やっぱり寂しそうに笑うニカのお母さん。
そして、そのお友達3人はというと…、さすがのマキちゃんですら言葉が出てこないようで、みんなして会釈するのが精一杯の様子。
そうよね、私だってニカのお母さんと会うとは、想定外だもの。
今思うと、十分予想できた出来事だとは思うけど――まあ、そこまで気を回せるほど、私自身に余裕が無かったと言い訳させて欲しい。
とにかくそんなわけで――皆、面くらってるって理由で、無言でニカのお母さんの後をヒタヒタとついて行く。
私と、ニカのお母さんも含めて、無言で。
ニカのお母さんの表情――は、後ろからは窺えないけど、あの聡明で人当たりの良いニカのお母さんが無言ってことから察するに、複雑な感情が渦巻いてるんだと思う。
私には到底推し量れない、膨大な感情の渦が。
――いや、いろいろと考えても仕方ない、とりあえずニカに挨拶ね。
ニカのお母さんとは、またあとでお話すればいいし。
えーとまずは、お墓の前で用意したお線香とろうそくと――、あ!
…お花、買ってくるの忘れちゃった。
「ふふ――いいのよ、そんなの気にしないで。つぐみちゃんが来てくれるのが一番に決まってるんだから。」
そう、ですか?
ニカもそんなことじゃ怒らないと思いますけど、バカにはされそうです。
つぐみんも、まだまだ子供なのよって。
「ふふ、まあそうかもね、確かにそう言いそう。つぐみちゃんがあの子の友達で良かったわ。じゃあ、あの角のお墓がそうだから。わたしはお邪魔にならないよう、ココで待ってるわね。」
邪魔だなんてそんな――。
「まあ、いいからいいから、いってきて。あ、帰りは私の車で皆を送るから。」
あ、ありがとうございます。
皆も同じようにお礼を言って、私についてきてくれる。
それにしても、突然の私との邂逅からまだ数分しか経ってないのに、目の前のニカのお母さんは、もう私の記憶どおりの明るいお母さんだ。
少なくとも、私には――、見た目的にはそう見える。
私なんて、声を出すのすら、いちいち自分に活を入れないと上手く出来ないのに。
――これが経験の差、なんだろうか。
今までニカから逃げてた私との、その差。
少なくとも、ニカのお母さんだって心穏やかでいるはずがないのに、それだけは絶対なのに。
だってほら、この隅々まできれいに磨かれたお墓を見れば…、それが一目瞭然でしょ?
…きっと、私には想像も出来ない積み重ねがあって、あんな笑顔を見せられてる違いない、それだけは絶対に言える。
今の私にはそんな振る舞い、全くもって真似できない芸当だけど…。
でも、ニカと久々に会うこの時――手を合わせる時くらいは、せめて笑顔でいたいと思う。
だから、心を落ち着かせるためにも、そっと火を灯そう。
私が――、私たちがニカに会いに来たよっていう、お知らせの灯を。
そして、そっと手を合わせて――、皆も私と一緒に手を合わせてくれて――よし。
――。
ニカ、会いに来たよ。
…来るのに、三年もかかっちゃった、ごめんねニカ。
でも、ちゃんと友達作ってきたから、約束通り作ってきたから。
こんな時でも傍にいてくれる素敵な友達が、ほら後ろ――うし、…うしろに――う…、うわああああぁぁあああああん!
――ダメだった。
大方の予想通りだとは思うけど、号泣よ。
自分でもこんなに泣くなんて思わなかった、生まれて一番泣いたと思う。
ニカのお通夜ですら、こんなに泣かなかったのに。
あ、ちなみに葬式には出られなかったわ、理由は――まあ、想像通りよ、これ以上は聞かないで。
とにかく、そんな私が泣き止むまで皆はゆっくり待っててくれたわ。
かける言葉が見つからない代わりに、背中撫でてくれたり、手握ってくれたり――。
あ、でもマキちゃんだけは別よ?
だって、私と一緒に号泣してたもの。
あとで聞いたところによると、ニカとの想い出ももちろんあるけど、それ以上に貰い泣きしたんだって言ってた。
おそらく心が読めるマキちゃんだからこそ――いや、そんなマキちゃんだからこそ心を読める魔法が使えるのかもしれないわね。
号泣しながら、二人に『つぐみのそばに居てあげて』って頼んだらしいわ。
ほんとすごくいい子よね、マキちゃん。
――あぁ、それと、号泣してた人がもう一人いたわ。
その光景を目撃したわけじゃないけど、あとで合流した時に目が真っ赤だったもの。
そう、つまりニカのお母さん。
その心情は、相も変わらず私には推し量れなかったけど、少なくとも私たちを待ってる間に泣いてたんだと思う。
もちろん、合流した時はいつものニカのお母さんだったけどね、両目の下以外は、だけど。
――まあ。
そんなこんなで、私の三年越しのニカとの再会は無事に終えることが出来ました。
みんなのおかげでなんとか、って感じだったけどね。
また改めてニカのお家にも行かないとね、帰りの車内でニカのお母さんと約束したもの。
『辛かったら、無理にとは言わないけど』って言ってくれたけど、『よかったらお友達みんなで』とも言ってくれたし、また誰かについてきてもらおう。
もちろん辛くないと言えば噓になるけど――。
それが、三年も待たせてしまった私の責任だし、私を気遣ってくれてたニカのお母さんと、うちのおかーさんへの罪滅ぼしにもなるかもだから。
だから、私は元気だよアピールを今日みたいに、ニカにまたカマしてやろうじゃない!
ふんだんに、今の楽しい生活をアピってやらないとねっ!
―続―
お疲れ様でした。
第三十七話が完結するのに2か月もかかりました。
その間に、コロナにかかったりと色々ありましたが、それでもなんとかここまでたどり着けて一安心です。
私はコロナ以来、咳が収まらなくて正直しんどいですが
私が執筆活動とは別に行っているゲーム実況活動と違い、執筆は咳が出ても出来ますので、終わりに向けてまた少しずつ書いていきたいと思います。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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すると次回は少し早く上がるかもしれません。




