第三十七話・中 魔法少女会いに行きます
「つぐみん先輩、このバスどこに向かってるんすか?」
「あー、ののも!それ、ののも知りたいの!」
ん?目的地?えーっと…。
――てか、あれ?
なんか二人、少し仲良くなってない?
つい最近まで、というか昨日まで――だけど、結構ギスギスしてたわよね?
と言っても、ノノちゃんからの一方的なものだったけど。
それが昨日の今日で………なんで?
うーん…そういえば、合流した時から既にちょっと雰囲気がやわらかかった気もする。
私たちと合流した時には、大人しく二人で並んで待ってたし――今だってほら、バスの一番後ろの座席で二人並んでるし。
右から、ナユ、ノノちゃん、私、マキちゃんの順で。
昨日までだったら、あり得ない席順じゃないの。
…。
うんこ像前で私たちを待ってる間に――なにかあったのかしら。
例えば――ほら、私とマキちゃんみたいに、うんこのおかげで少し距離が縮まってたり?
――っていやいやいや、ないないないない。
なによ、うんこのおかげって、私たちが仲良くなれたのはうんこ像の話したからじゃなくて、マキちゃんのおかげよ、全く。
それともなに?これぞホントの臭い仲、とでも言いたいの?
そんな仲になっちゃう様な悪巧みなんてしてないわよ、マキちゃんも、私も。
だから全然臭くな――オホン。
…何、一人でボケツッコミしてるのよ、私。
まあでも、ノノちゃんとナユだったら、臭い仲もあり得なくもなくなくなくない…のかも。
だって、うんこ像の命名者が何を隠そう、このナユなんだし。
二人とも、悪だくみとか好きそうだし?
…。
…いや、考えても仕方ないわね。
どんな理由であれ、親友二人が仲良くしてくれるのは願ってもない事よ。
今後もこうあってほしいわ。
――で、なんだっけ。
あ、バスの行き先ね。
んーと……内緒?
「いや、内緒って、バスに乗ってるんだから行先だいたい分かるじゃないの、つぐみ。大願山じゃないの?」
あー!マキちゃん、何で言っちゃうのよ!
「あと30分もしたら分かるんだから、いいじゃない。」
いいけど、よくないの!
せっかくノノちゃんと少し戯れようと思ったのに、ついでにナユとも。
「ついでって…ひどくないっすか?」
「つぐみ、意外と子供っぽいのね。」
マキちゃんに言われるとなん――。
「ちょーーーっっと待つのっ!!」
どどど、どうしたのノノちゃん!?そんなおっきな声で。
私の膝にダイブしてまで、話止める必要あった?
今は私が喋るターンなんだけど!?
「ターンって何なの!ノノは説明を要求――って、そうじゃないの!!なんでつぐみちゃんとかいちょー、こんなに距離縮まってるの?」
ん?
「ん?」
いや、そんなこと聞かれても…ねぇ?
「うん、元から仲いいわね。中学からの同級生だし。」
「そーーーーぉぉおかもしれないけど、そぉーーーんなわけないのと、ののは断言するのっ!高1の秋まで、つぐみちゃんはぼっちだったはずなの、ののは知ってるの!つぐみちゃんに聞いたの!」
事実だけど、そんなこと大声で言わないでほしい。
私の膝に穴なんて掘れないんだからね?
ましてや葦なんて生えてこないわよ?耳だってロバのソレじゃないわよ。
というか!数少ないバスの乗客が、挙って振り向いたらどうするのよ、ノノちゃん!
私は顔から火が出そうよ!
「それに、2年もつぐみちゃんと一緒にいたけど、かいちょーの『か』の字もつぐみちゃんの口から聞いたことないの!ののは自信あるの!」
なんの自信っ!?
マキちゃんが生徒会長だったのは半年だけなんだから、会長の『か』の字を聞いた事なくたって全然おかしくないじゃない。
そもそもの話、マキちゃんの事をかいちょーだなんて呼んだことないし。
いや、というかそんなこと言ったら、私だってノノちゃんとナユの仲についてすごく気になってるんだけど――。
…あとで絶対ナユを問い詰めよう、そうしよう。
「ふふ、なるほど。琴野さんと戯れるってこういう事。納得。邪魔してごめんね、つぐみ。」
いーのいーの、分かってもらえれば。
それに結果として、ノノちゃんと戯れられたことに変わりないし。
「つぐみちゃん、それくらいにしとかないと、ののは激昂するの。」
ごめんごめん、ノノちゃん。
ちょっとやり過ぎちゃったわ、ノノちゃんが難しい言葉使っちゃってるし、反省。
今度なんでも言う事聞くから許して?
「む、内容考えておくの、覚悟しておくの、とののは忠告するの。なんでもって言ったの、後悔するの。」
そう凄まれると怖いわね。
凄まれるって言っても、私の膝の上からなんだけど、ノノちゃんかわいい。
何でも聞く、何でも聞いちゃう、後悔なんてしないわ、ふふ。
「ごめんね、琴乃さん。あ、いい機会だから、私もノノって呼んでいい?」
「むぅ、いいの。かいちょーの好きにするの。それに…まあ、かいちょーならつぐみちゃんを少しくらい貸してあげるの。」
「ありがと、ノノ。」
ん?あれ?
もしかして、ノノちゃんとマキちゃん、面識あった?
「あったと、ののは肯定するの。」
「ミナエ経由でね。」
あ、なるほど。
そっかそっか、だからノノちゃんの人見知りが今日発動してないのか、納得納得。
「あ、あのー…っす。」
さっきまで窓に、はぁ…と息を吐いて『つぐみ―のの―まき』と三角形の落書きをしてたナユがおずおずと――って!
いや、なに書いてるの!?そんなんじゃないわよ?
「わたしも仲間に入れて欲しいっす。」
「ええ、もちろん、ナユ。――だったわよね?未来が読めるって聞いたわ。」
「そんな大したもんじゃないっすけど、人の心が読める方が凄いと思うっすけど――まあそうっす、よろしくっす、マキ先輩。」
「そお?未来が読める方が凄いと思うんだけど…ノノもそう思わない?」
「ののも同意するの。」
「それがそうでもないんっすよ。だって――」
ナユとマキちゃんは、さすがに初対面だったらしいわね。
でも、この二人ならコミュ力高いし問題ないでしょう。
マキちゃんなんかコミュ力モンスターよ?マジヤバよ?
だって、さりげなくノノちゃんを会話に混ぜてるんだから、さすが元生徒会長って感じよ。
当のノノちゃんは、未だ私の膝の上にダイブしたままなのに。
まあそれにしても――懐かしい会話してるわ。
やっぱりすごいと思うわよね、未来読める魔法。
…まあ実際はあまり凄くないんだけど、それを今ナユが一生懸命に説明してるけど、ね。
ちなみに、言うまでもないかもだけど、ノノちゃんが魔法のことを知ってるのは二人とも了承済み。
そして、二人は他の人に魔法の事を喋ったことはないって言ってたわ。
二人の魔法は目に見えるものじゃないし、バレることはほぼないものね。
ああ、もちろん私の魔法だって些細な魔法だから、基本バレないのよ。
ノノちゃんにバレたのは、バレたというより、わざとバレるように仕向けたと言っても過言じゃないでもないし、ねぇ?
「いや、過言なの、とののは呆れ果てるの。」
へ?いや、ちょっと!?
「つぐみ、それは過言よ。迂闊にもほどがある。」
「過言っすね。」
ナユまで!?
私の信者なのに!?
「信者でも擁護できない、失態もあるっす。」
失態…って、いやいやいや、なんで私の考えてること皆読めてるの?
マキちゃんは今日、もう既に魔法使ったんじゃないの!?
「ん?使ったけど?」
「つぐみちゃん、何言ってるの、とののは不思議がるの。」
「今ノノ先輩が、つぐみん先輩の魔法を知ることになった時の話をしてくれてたんじゃないっすか。」
へ?いつの間に?
さっきまでナユの魔法の話してたのに。
「全然聞いてなかったの?のの、ビックリなの。」
「クリスマスパーティーでノノにバレた後、数日後にあと出しで『ノノちゃんにだけバレるように、うまく魔法使ったと言っても過言じゃないわ』って言ったんでしょ?」
「そりゃ、過言っすよ…。」
言った記憶はないんだけど、あれ?記憶違い?
ねえノノちゃん、ほんとに私それ言ったの?
「さあ?言ったかどうかはさておき、ののは真実を話しただけなの。」
かわいく舌をちろっと、ノノちゃん――ああ、つまりはさっきの意趣返しってことね。
何でも言う事聞く、で許してくれたんじゃなかったの?
「まだ、言う事聞いてもらってないの。」
むう――。
「――で?なんで大願山なんて、ちょっと遠い場所?」
ん、えーっと…、昔そこでニカと流星群を見たから…かも?たぶん。
詳しい事情は分からないのよ、そうだといいなと私が勝手に思ってるだけ。
「ふーん?」
「あー、出てきたの、ずっと気になってた子、ニカ。ぼっちだったつぐみんの、唯一の親友!今日、会わせてくれるって話なの。」
会わせる――とは言ってないんだけど、連れてくって言っただけで。
…まあでも、ハニかんでおこう。
「つぐみん先輩の、物を動かす方の魔法をくれた親友っすよね。話にはよく出てきてたんすけど、それ以上はなんかずっと聞きづらかったんすよね、今朝ノン先輩に聞いてもやっぱり詳しく聞いたことないって言ってたっすし…。」
「ののはそんなにいっぱい聞いてないの、数回なの!」
「なんか、魔法少女仲間ってことらしいっすから、魔法の話するときに聞いたんす。ノン先輩、どうどう。」
話の成り行き上、ニカの名前を出しはしても、それ以上は確かに言ってないわね。
上手くはぐらかしてたつもり――というか、単に避けてたのよ、その先の話題とうか結末。
だから、二人が知らなくて当たり前――あ。
そうかなるほど、二人は朝、そんな話してたんだ、うんこ像前で。
そんな話で、なんで二人の距離が縮まるのかってのは、ちょっとよく分からないけども。
でも、うーん…少なくともそのきっかけは、二人ともが『ニカ』を気にしてたから…よね?
うん、じゃあニカのおかげって事にしておこう、ありがと、ニカ。
「じゃあつまりなの、そのニカがそこで待ってるの、とののは確認するの。」
待ってる…、うん、待ってる。
待ってると思うわ。
待っててくれてる――わよね?
「あー…、ね、ねえ、つぐみ!そんなことより、流星群見たって話だけど、もしかして流れ星を魔法で止めたりした?」
へ?えーと…。
どうしたの、マキちゃん、いきなり――ああ、なるほど、ほんと凄い子ねマキちゃんは。
そのまばたき2回、伝わったわ。
だから私も2回で返事しておこう、あ・り・が・と・う。
――まあつまり、私への助け舟ってこと。
今日この後二人に知ってもらう事だけど、それを口にするのはどうしても出来ない、私への助け舟。
だから私も喜んで、その話題に乗らせてもらうわ。
せっかくだけどマキちゃん、流れ星は止められないのよ。
たぶん魔法が間に合わないし、仮に間に合ったとしても、流れ星って何年も前の光でしょ?
「あれ?そうだっけ?」
おそらくだけど、1秒以上時間差あると効かないのよ、私の魔法。
「いや、違うっすよ。」
「うん、違うの、とノノも否定するの。」
違う?なにが?
あれ、ノノちゃんいつの間にか普通に座りなおしてる。
というか、マキちゃんにあんなに強引に話変えられたのに、二人何も言わないのね――それどころか、普通に会話に混ざってきてるし。
「流れ星って、宇宙にあった小さな塵が、大気圏に突入したときに発生する断熱圧縮の熱によって気化した光っすから、距離にして大体100キロっす。」
断熱圧縮!?100キロ!?
「大気圏で発生するのは知ってたけど、そこまで詳しくは知らなかったの。断熱圧縮…そう言われるとなっとくなの、なかなかやるのナユ公、ののは褒めて遣わすの。」
「あはは…、あ、ありがたきしあわせっす?」
ノノちゃんとナユの不思議な関係はさておいて、えーと――。
100キロだから、時間にしておおよそ…一万分の三秒?
「計算はすぐにできないっすけど、まあそうっす、一瞬っすね。ちょっと大きな塵が大気圏に入ったときなら、流れ星の流れる距離が長いっすから、もしかしたらつぐみん先輩の魔法も間に合うかもっす。」
へ、へー…知らなかった。
そうなんだ、間に合うかもなんだ…。
――あ、一応私も理系の受験生なわけで、断熱圧縮は分かるわよ?
文系のマキちゃんは、ぽへぇ~ってなってるけど、まあ仕方ないわよね、習わないもの。
えーとつまり…そうね、注射器のおもちゃを想像してみて。
その注射器の先を塞いで、ピストンの方をぎゅうううううって押すと空気が圧縮されるんだけど、それと同時に熱が発生するってわけ。
人間の力だと厳しいけど、ハンマーでドスんとピストンを叩けば、一瞬だけなら紙が発火できるくらいの温度にできるわ。
それの凄い版って思ってくれればいいと思う。
「よく分からないけど…それはつまり、流れ星は止められるって事?」
よく分からないなりに、結論出そうとしてくれたマキちゃんには悪いけど――それは、うーん…。
「うーん…っす。」
「うーんなの。」
「ちょっと、三人とも!?どうしたの?」
どうしたのと言われても…うーん。
「流れ星を止めるという事は、大気圏に突入した塵を止めることっすから…。」
「塵を止めると、断熱圧縮がとまるの。」
断熱圧縮を止めると加熱が終わるわけで、でも余熱で塵自体は燃え続けるはずで…。
「でもその塵を魔法で止めるわけっすから、もしかしたら燃焼自体とまるのかもしれないっすよね。」
「でもでも、仮に塵と一緒に燃焼が止まったとしても、再び動いた時はほぼ重力のみの自由落下になるの。」
そうよね、そしてその自由落下の運動が、魔法で止める前の流れ星の軌道と同じかと言われると、それもまた微妙な話よね。
「でも少なくとも、塵が再び燃え始めはしそうっす。」
「えーと…つまり?」
わからない。
「わかんないっす。」
「わかんないの。」
あー…でも、光って流れてた流れ星が、魔法で光ったまま止まって、一秒後同じ軌道でまた流れて消えるって事は、たぶんないと思う?
「そっすね。」
「たぶんなの。」
そもそも光は止まらないしね。
「うーん…でも、つぐみん先輩の魔法自体あやふやなんすよね。」
あー…そう言われればそうね、車は止められるけど、中の人は止まらくて…。
「でも、車自体もいろんなパーツで出来てるの。」
よね。
うーん…。
「うーん…っす。」
「うーんなの。」
…。
…。
「えっと、あの…うん、なんかごめん。変な事聞いちゃったわ。」
へ?
全然そんなことないわよ?
「ないっすね。」
「ないの。」
むしろ、楽しかったわ。
「楽しかった?なにが?」
思考するの――というか、この思考実験じみた何かが?
「楽しかったっす。」
「楽しかったの。」
理系組、一致団結。
今なら何でもできそう、ふふ。
「あぁ…そう。やっぱり理系って少し変わってるのね。ま、楽しかったなら良かったわ。」
変わってるとは失礼な、ノノちゃんとナユよりはマシだと思うんだけど――って、あ。
二人の顔見ると、私と同じこと思ってそう、口がへの字に曲がってる。
「――あ、それより、つぐみ。ここじゃないの?」
ん?もう?
あ、ほんとだ。
考えこんでたら、こんなに時間経ってたのね。
ナユ、ボタン押してくれる?
「それはいいっすけど、次のバス停って――。」
「やっぱりなの。」
「っすね。」
二人が小声で、なんか納得してる。
…そっか、気づいてたか。
そういえば、二人ともマキちゃんと同じで、服が暗めだもんね。
お疲れ様でした。
まさかの前中後編になりました。
途中で別の話が割り込んだり、主がコロナにかかったりして、一か月以上ぶりの続きになってしまい、前編の話なんて覚えてないかもですが。
それでも、物語的には前中後編は、同じ日の内容になります。
後編はちゃんと次回上げますので、ゆっくりお待ちください。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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