シン仟話とされるだろう記念日
「クロテッドクリーム、クロテッドクリーム~…、じゃ~んっ!」
これこれ~、過保護なくらい大事に梱包されちゃって、まるでご貴族様じゃんクロテッドクリーム!
さすが、イギリス!紳士の国イギリス出身!!
まあ…思ったよりちっちゃいビンだけど――そんなことより、あとジャム!
ジャム~ジャム~…うーん、つぐみんは顔に似合わずイチゴが好きって言ってたから、イチゴかなぁ。
「いっちごー、いっちごーは確かあったはず~。」
冷蔵庫のドアポケットの真ん中に――よし、これで準備オッケー。
普段は、クロテッドクリームなんて用意してない――というか、そもそも高くて買えないんだけど…。
今朝、数日前にネットで頼んでたやつがギリギリ届いたんだよね。
ほんと間に合ってよかった。
せっかくのつぐみんのお誕生日なのに、素のままのスコーンだけじゃ味気ないもん。
高校生にもなって未だに私と二人だけのお誕生日を過ごしてる、そんなぼっちのつぐみんが可哀そうだから、なるべく盛大にお祝いしないと。
――ん?
盛大に祝うなら、スコーンよりケーキじゃないのかって?
う、うるさいなあ。
スコーンしか作れなかったんだもん、仕方ないじゃん!
それしかおばあちゃんに習ってないし、おかーさんはそういうの全然だし!
でもでも、これが――えっと、スコーンくらいが私たちにはちょうどいいのよ。
思い出の味――って言うほどの思い入れは、たぶんつぐみんにはないけど、それでもクロテッドクリームを乗っけたスコーンは特別感あるもん。
と、とにかく、なにか手作りのものでお祝いしてあげたかったの!
それにほら、ぶっちゃけケーキ買うよりクロテッドクリームの方が高いし!
きっと喜んでくれるはず。
――ふふふふふふふ、ぐふふ。
ちょーっと照れながら、ぶっきらぼうに『ありがと』っていうつぐみんが目に浮かぶ、ふふふ。
ふふふふ。
…。
――あっと、こんなとこで一人でほくそ笑んでる場合じゃないや。
紅茶…も、ちょうど蒸らし終わるし、さっさとカップに注いでお部屋に持っていこう。
アッサムの香りがクロテッドクリームと融合して、きっと美味しいに違いないもん。
だから早く持ってこ。
…あ、アッサムって何か分かってないのは、内緒――って、クリームとジャムを皿によそうの忘れるとこだった、あぶないあぶない。
じゃあ、お部屋にしゅっぱーっつ!
――あ。
二階まで運んできたはいいけど、ドア開けれないじゃん。
「つーぐみーん、あーけてー、なーのよ。」
「えー。もぉ、しかたないわねぇ…。」
ふぅ…うっかりうっかり。
つぐみんが中にいてよかった、…まあ、いったんお盆置けばよかったわけだけど、そんな細かいことはいいじゃん。
だって、つぐみんがいるんだもん。
「はいどーぞって、あ、スコーン。」
「そうなのよ。一緒に食べるなの――ああああああっ!」
「もぉニカ、うるさい。いきなり真横で大声ださないで!いったい何!?」
いったい何!?もなにも、テーブルの上のソレ!
今まさにスコーンと紅茶を置こうとしたテーブルの上に、先に鎮座しておられちゃったそのルーズリーフバインダー!
「ちょっとつぐみん!!!!!!!なんで、それ読んでるなのよ!!!!!」
「ニカがなんでも読んでいいって言ったから。」
「言ってな――。言…言って――、…言ったけども。…むぅ。」
でもよりにもよって、まさかソレを読むなんて思わないじゃん。
だってだって、選択肢は他にいっぱいあるんだもん、私が集めたものからおばあちゃんから譲り受けたものまで、ありとあらゆる選択肢が!!
小説…は、言うほど多くないけど、大きめのそこの本棚には、漫画やラノベと選び放題なのに――。
「なんで、よりによってソレ…、しょぼーんなのよ。」
「なんで、と言われると…、机の上に懐かしい本見つけたから、だから、その横にあったやつを手に取ってみたのよ。」
「!?なにそれっ!」
その『だから』は、日本語としておかしくない!?
『だから』その見つけた、懐かしい本を手に取った――で、いいじゃん!そうすべきじゃん!じゃんじゃんじゃじゃん!!
「わけわかんないなのよ!!!」
「いや、あのね。その懐かしいおばあさんの本見つけたら、ふと思ったのよ。――もしかしたらニカも書いてるかもって。だから、いかにも怪しい物をヒョイっと。」
「確信犯っ!!!」
「確信犯?んー…確かにニカの物は私の物って神様に認められてるから、間違っちゃいない?」
「わけわかんないなのよっっ!!!」
せめて日本語でしゃべってほしい、意味わかんない!神って何!?わけも分かんないっ!!
それに、私は何も間違ってないもん!
「まあまあ、とにかくよ。スコーン食べましょ?ね?」
「むぅ…。」
納得いかない。
…納得いかないけど、このままお盆持ってたら腕が明日いたいいたいになる。
…。
むぅ、仕方ない、座るか。
「うん、いい匂い。ありがとニカ。もしかして手作り?」
むっす~。
ぷんっ。
ぷんぷん。
めがぷん、ぎがぷん、てらぷん、ペタ・エクサ・ゼタを通り越して、よたぷんっ!
「よたぷん?そんなに、拗ねちゃった?ごめんって。」
「べっつにぃなのよ。拗ねてないなのよ。スコーン手作りだけど、全部自分のものなのよ。」
「あ、美味しく出来てる、すごい。」
「あー、なんでもう食べてるなのよ!!!」
「ん?美味しそうだったから?」
んんんーっ、もぉずるい!
つぐみんは相変わらずズルいぃっ!
「…仕方ないから、きろぷんくらいにまけてあげるなのよ。」
「やっぱり拗ねてたんじゃない。ヨタとか言うの初めて聞いたわよ。最高にぷんぷんしてた人でも、エクサまでしか使ってなかったわよ?」
「私賢いもん。」
「はいはい、知ってるわ。大学こそ同じとこ入ってくれるって、信じてるし。」
「…ん。」
もお、やっぱりズルい。
つぐみんを照れさせるつもりが、いつの間にか逆の立場なっちゃってるし。
もちろん、こんなのはいつものじゃれ合いなんだけど――でも、なんというか、最近つぐみん変わったと思う。
昔から、それこそ中学で初めて会った時から優しかったのは変わりないけど、なんかあの頃は――というか、ほんの最近まで、少しトゲがある感じだったもん。
近寄りがたいというか、なんというか…。
あ、もちろん私にだけはそんなことなかったと思うけどね、それでもなんか斜に構えてる感があったもん。
それがこの頃――あー…、例の友達が出来た、って聞いた後くらいからかな?
つぐみんの物腰が、なんとなく柔らかくなった気がする。
おそらく、世間ではこれを成長って言うんだろうけど、私にしたら少し寂しいというかなんというか…。
って、そんなわがまま言っても仕方ない、飲み込んどこ、こんな感情、邪魔なだけだもん。
「…で、つぐみん、どこまで読んだなのよ?」
「ん?なにを?」
「なにを?って、それに決まってるなのよ。」
もお、わざわざ指ささせなくても、分かってよつぐみん。
今のさっきじゃん!
まだ横に置いてあるじゃん!!
「ああ、えーっと、零話と参什話と玖佰話と参佰話?だったかな。最初と適当に開いた順に4話ほど。」
「ふーん。」
…なのよ。
話数で言われてもどの話か分からないけど、大して読まれてないわけね。
「まあ、いいなのよ。言ってなかっただけで、内緒にしてたわけじゃないし。」
「そお?それならよかった。あ、それと、上手く書けてると思うわよ?参佰話とか感情移入して泣きそうだったし。…まあ、登場人物本人なんだから、そう思うのかもしれないけど。」
「そ、それなら…よ、よかったなのよ。ちょっと照れるなのよ――ん?」
あれ?
泣きそうな話――って、もしかして屋上でのあの話!?
…。
…よ、よりにもよって、あの話を読まれるとは…流石にそれは、ちょっと照れるじゃ済まない――けど。
でも、あの時のつぐみんには感謝してるし、べ、べつに見られてもいい…もん。
「ってか、ニカ。九百以上も話数あるけど、そんなに書いてるの、これ。」
…人の心の内も知らないで、パラパラとページ捲っちゃって、もう。
ま・あ・い・い・ん・だ・け・ど・!
「――さすがにそれは無理なのよ。その話数は零話からの大体の日数できめてるだけ、だから実際の日数と結構ずれてたりもするんだけど…、細かいことは気にしないなのよ。」
つまり、印象深い日だけ書いてあるってこと。
多くて一か月に二つか三つくらい?かな。
「ちなみに、どれくらい創作なの?」
「ん?ほとんど創作してるつもりないなのよ。軽く盛るくらいはするけど、なのよ。」
「嘘。参什話はほとんど創作でしょ。」
へ?参什話?
「ちょ、ちょっと貸すなのよ。」
えーっと?さんじゅう、さんじゅう…。
あ。
…あー、これ。
「事実そのままなのよ。」
「うそうそ、こんなの私知らない。こんなの私じゃない。」
「知らないってのは、さすがに酷いなのよ、つぐみん。つぐみんをおばあちゃんのとこ連れてくきっかけの日なのよ。だいぶ昔だけど、ちゃんと私は覚えてるなのよ。」
…まあ、さすがに細かいところまでは覚えてないけど。
ツンツンしてた頃から、つぐみんに可愛いとこあったってのは、ちゃんと覚えてる。
あの時のつぐみんは――そう、つまりヨタ可愛かった、うん。
「むむむ…。」
「って、その顔。絶対覚えてるよなのよ、つぐみん。そもそも、書き始めた頃だから、創作とかできないなのよ、今の私ならまだしも。」
「むむむむ。」
今も、もちろん可愛いけど、ふふーん。
「誰にも見せない?」
「へ?」
なにを?
「――これを?ってこと?」
つまりはこの小説まがいの日記の事?
「うん、出版社に持ってったり…とか。」
「ないないないない、あるわけないなのよ。ただの日記兼趣味なのよ。なんでそんな飛躍するなのよ!」
そんなの、私だって恥ずか死んじゃうよ。
「そう、だったら…誕生日プレゼントくれたら、書いた事許してあげる。」
「許してあげる…って。あげなかったら、どうなるなのよ?」
もちろん用意はしてあるけど。
このタイミングで上げるのは…なんか負けた気がする、なんか違う。
許される前にそもそも何も悪いことしてないもん。
「え?…えーっとぉ。…で。」
「で?」
「…デコピン?」
デコピンって…。
つぐみんのデコピンの威力じゃ、罰にもならない。
わざわざ魔法で体止められなくても、普通におでこ差し出すって…はぁ。
あいかわらず、こういう時はポンコツだ。
「…しかたないなのよ。はい、誕生日おめでとうなのよ、つぐみん。」
「あ。…うん、ありがと。えっと、動物園のチケット?大願山の?」
「そ。最近出来たっていう友達と、言ってくるなのよ。――と言っても、私のお小遣いじゃ二人分しか用意できなかったけど。開園30周年イベントやってるらしいなのよ。」
ちょっと、クサかったかな。
でも、一生懸命考えたプレゼントだから、喜んでくれるといいんだけど。
「…ねぇ、ニカ。」
「ん?」
あ、…あれ?
やっぱり、物として残るものの方が良かった?
外しちゃったかな?
「ううん、泣くほど嬉しい。って、そうじゃなくて、えーと、だからこそなんだけど――。」
うん?
喜んでくれたのは良かったけど――。
『だからこそ』って、どういうこと?
「し、親友のニカに皆を紹介したいから…、動物園、一緒に来てくれ…る?」
ふふ。
なんだそんなことか。
やっぱり相も変わらず、こういうところは可愛いんだから。
気が付けば、いつの間にか下向いてもじもじしちゃってるし、ふふ。
プレゼントを悩みに悩んで、悩みぬいた甲斐があったってもんだ、ふふふ。
「もちろん!私もつぐみんの友達に会ってみたいと、ずっと思ってたなのよ!!」
―続―
お疲れ様でした。
37話の途中ですが、ニカのお話です。
ホントは37話の前にいれるつもりだったのを、順番間違えたとか、そんなことはありません。
急遽さし挟んだとか、そんなことはきっとありません。
ええ、ありませんとも、うん。
さておき、次回は37話の続きになります。
4人でどこに向かってるのでしょうか、おたのしみに。
では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
次回もお待ちしています。
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すると次回は少し早く上がるかもしれません。




