表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
でぃあ魔法少女【完結】  作者: 煮木 倫太郎
42/63

第三十三話 魔法少女飲みます


 私はつぐみ。星河つぐみ。

 百種類もの妖精なんて逃がしちゃってないけど、魔法少女よ。


 それにナユもマキちゃんも、大人になれない魔法なんてかけられてないし。

 ――かけられてない、わよね?

「ねぇ、つぐみ?なんか失礼なこと考えてない?」

 か、考えてない、考えてない!

 マキちゃんは今日もちっちゃくてかわいいな、としか考えてないわ。

「ちっちゃいは余計でしょ。私もつぐみとおなじで、もう二十歳なんだけど。」

 そうだけど…。

 そうなんだけど――。

 たとえそう言われても、全人類に寵愛されそうなタイニーなそのフォルムで、オリーブから垂れるマティーニをそっと舐めとる姿は、流石に犯罪チックに見えるのよ。

 いかにもエロチシズムを感じそうな所作なのに、マキちゃんにかかれば、ただ子供がさくらんぼを舐めてるみたいになってるもの。

 さっきだって店員さんにマイナンバーカード見せてたし、…黄門様の印籠の如く、ドンっと。

 …。

 ねぇ、マキちゃん。

 幼いころに、大人になれない魔法かけられたりしてない?

「はぁ。やっぱり変なこと考えてたじゃない。…はいはい、かけられてるかけられてる。ロリコンのつぐみには、好都合でしょ?」

 ろ、ロリコっ!

「ほらほら、小さなバーなんだから、大声出さない。素敵な雰囲気がぶち壊しになるでしょ。」

 むぐ…。

 肘をついた左手でひらひらと、見た目子供のマキちゃんに子供の様にあしらわれるなんて。

 確かに、この静かな――まるで純文学が現実に飛び出したような、素敵な空間を壊すのはいただけないと思う。

 思うけど――、思うけども!

 ロリコン呼ばわりは、さすがに聞き流せないわ。

「じゃあショタコン?ペド?」

 ちょちょちょ、ちょっとまってよ。

 え?マキちゃんから見た私って、そんなイメージなの?

「うーん…()()、というか――『朝から晩までののにべったりなの、言葉通りにべたべたしてくるの』だって。ナユも――『つぐみん先輩は、ノノ先輩とマキさんにだけかなり甘いですよ』って言ってたわよ。私にしてみれば、ナユが一番つぐみに甘やかされてるとは思うけど。」

 え、じゃあなに?

 みんなにそう思われてる…ってこと?

「共通認識?」

 んなっ――!!

 そんな馬鹿な。

 私はただ、マキちゃん含めてみんなが好きなだ――。

「モヒートとアヒージョ、お待たせしました。ご注文は以上で?」

「はい、ありがとうございます。」

「いえ。では、ごゆっくりお楽しみください。」

 …なんてタイミングで運んでくるのよ、まったく。

 マキちゃんが応対してくれたからよかったけども。

「…それにしても、モヒートなんてシャレたもの飲むのね、つぐみ。」

 いや、聞いたことあるの適当に選んだだけで、ライムとミントのカクテルだなんて知らなかったわよ。

 それこそ、最近読んだ小説に出てきたから、たまたま覚えてたってだけ。

 何しろ、つい数日前に成人したばかりなんだから私、知ってる通りね。

「そうね。早く一緒に来たかったのよ、このバーに。前に来た時、とても気に入ったから。だから、つぐみの誕生日を首長くして待ってたの、ノノはまだちょっと誕生日先だし。まぁとにかく、大人の世界へようこそ、つぐみ、今日は言った通り私のおごりよ。」

 うん、ありがと、マキちゃん。

 正直、二十歳になって数日でバーに入るなんて、冒険しすぎな気がしてちょっと怖かったんだけど――、でも来て良かった。

 これが大人の世界――か、知らないことって世の中にまだまだいっぱいあるんだって実感させられるわ。

 ついさっきだって、店に入ってすぐに驚かされたんだもの、今座ってるこのカウンター横の足の長い丸テーブルに。

 こんな背の高いテーブルと椅子がこの世に存在したのか、ってね。

 そんな大人な丸テーブルに2人で腰かけて、その上には丸いグラス2つと丸い鉄板――。

 …大人の世界というより別の国に来た感覚の方が近いわ、カルチャーショックよ、こんなの。

 絶対私、今この店で浮いてる存在だと思うもん。

 うん、間違いない。

 とにかく、早く周りに溶け込めるように、モヒートに口を付けておこう――、ん。 

 あ、…美味しい。

「ほんと?私も少し貰っていい?はい、かわりにコレ。あ、私が口を付けた場所から飲むのは…まあ別にいいけど、グラスを舐めまわすのはやめてね。」 

 しないわよ、そんなことっ!

 まったく、いったい私をなんだと思てるのかしら、ノノもマキちゃんも、…それにナユも。

「ん?しないのはどっち?間接キス?それとも、舐めまわす?」

 どっちもよ!!

 …いつの間にか変態のレッテルが張られてる気がする。

 私はどこで生き方を間違えたのだろうか――、全く持って事実無根なのに、ロリコンじゃないのに。

 このやるせなさはどこに持っていけばいいのかしら。

 マティーニで胃に流し込めばいいのかしらね、――んっ。

「ロリコンが変態とは、私はそこまで言ってないけど――あ。モヒート美味しい。」

 んんーーっ!げほっ!

 なにこれ、むちゃくちゃ度数強いじゃないっ!

 カクテルって、全部飲みやすいものかと思ってた。

 全然そんなことなかったわ、知らないことがいっぱいね、大人の世界!

 マキちゃん、よくこんな強いお酒飲めるわね。

「今日はつぐみがいるからね、ビックリさせるために無理して頼んでみたのよ。まあでも、飲めないことはないし、まあまあ美味しいと思ってるわ。モヒートの方が好きだったけどね。」

 ああ、そう…。

 そういえば、こういう子だったわ、マキちゃん。

 高校の生徒会室で初めて会ったあの時を思い出すわね、警戒しておくんだったわ。

 ――で、マキちゃんは、どういう経緯でこんなおしゃれな店知ったの?

「ん、大学の先輩からね。他にもいろいろと連れまわされたけど、一番気に入ったのはここね。なんてったって、この店はなんと――。」

 なんと?

 まだ何かビックリするようなことがあるの?

「なんと、椅子の高さが調節できるのよ。」

 ぷふっ、そうね、大事ね、それ。

「笑うとこじゃないのよ、私には死活問題よ。」

 ふふふっ。

 ――ね?

 かわいいでしょ?マキちゃん。

 こういうとこなのよ、だから皆から好かれるの。

 それに、こんないたずら好きな感じだけど、実はすごく優しいのよ。

 マキちゃん本人は否定するけどね、『そんなつもりはさらさらないわ』とか、何とか言って。

 でも、私は知ってる。

 高校三年7月のあの日、私の家に迎えに来てくれたのは、絶対私を慮ってのことだったって。

 もちろんマキちゃんは否定するけどね、『だから、違うって』とかなんとか、顔赤くして否定するけど。

 あの日、あの当時にそれに気づけなかったのがホント悔やまれるわ、すぐにありがとうって言えればよかったのに――。

 あ、話がそれたわね、まあ、つまり――よ。

 高校の時に生徒会長やれてたのも、きっとマキちゃんのこんな性格があってのことね。

「あ、つぐみ、また私の事子供っぽいって思った?」

 いやいや、思ってない思ってない。

 全然思ってないから、その大きな胸をこれ見よがしとテーブルに乗せるのやめて。

()()だからね、こうしてると楽なのよ。肩とか。つぐみは子供だからわかんないかもだけど。」

 む、確かにわかんないけど――というか、よ。

 今日会った時から思ってたけど、なにその服、胸だけガバっと開いた服。

 存在は知ってたけど、下品なだけの服かと思ってたわ。

 なんで胸開きタートルネックがそんなに似合うのよ、ってかそもそも、よくそれを着ようと思ったわね。

「うーん…、自慢じゃないけど、こんななりだからね。神すら見初める省スペースな体だからこそ、逆にってのもあるわ。最近、髪の色を抜いたのも良かったのかもね。でもそれより――。」

 確かにウェーブかけてまとめた淡い髪とその露出は、絶妙にバランス取れてるわね。

 それにマキちゃん個人の体形が、ちょうどこう上手い事、露出とファッションの緩衝材になってるとも思う、うん、実際かわいい――けど、ん?

 そんなことよりも、もっと大きな要因があるって?

「私の魔法、あるでしょ?」

 うん、心読めるやつね。

 私の魔法と違って、かなり曖昧な魔法らしいアレ。

 一日一回限定なのは変わらないけど、どれくらい読めるかは本人でもよく分かってないんだってさ。

 長くても10秒程らしいけど。

 おそらくだけど、ワンセンテンス分くらいって言うのが、マキちゃん本人の見解。

「そ、それ。その魔法を使って、周りの反応確かめてるだけよ。」

 ん?

 えーっと…つまり、どういう事?

「新しい服着るって、結構勇気いるでしょ?とくに、こんな服とか。」

 そう言って差したマキちゃんの指に目がつられると、おおきな谷間がそこにあって――。

 なんか腹立たしいわね、えいっ!

 ――あ、(かわ)された。

「あのさー。谷間に手を突っ込むとか、そんなことするから変態だって言われるのよ?つぐみ、分かってる?」

 なんで、今の躱せるのよ。

 心読んだにしても、ピンポイントすぎるでしょ。

「そのとおり、心読んだから躱せたのよ。ピンポイントだったのは、つぐみの日ごろの行いのせいね。…はぁ、大学入ったころまでは、あんなにまともだったのに。ノノと同棲し始めてからかしら、こうなっちゃったのは。」

 同棲じゃなくて、ルームシェアなんだけど。

「私の聞く限り、二人の生活はルームシェアとは言わないわ。()()よ。」

 むぅ。

 そんな力強く言わなくても…、そのオリーブが刺さってたマドラーは教鞭(きょうべん)じゃないのよ?

 他にもいろいろと反論したい所だらけだけど――。

 まあいいや、マキちゃんとはこういう関係が心地いいし。

 私が素直に甘えられる人って、マキちゃんくらいだしね。

 まあでも、やっぱりそれでも釈然としないのは確かだから、アヒージョのエビ、マキちゃんの分も食べちゃうけどねっ!

「はいはい、甘えてくれるのはいいけどさ、エビも別に食べてくれていいけどさ。それより、話戻してもいい?」

 じゃあ、遠慮なく頂きます。

 で、話――って、なんだっけ。

 童貞を殺すセーターの話だっけ?

「…つぐみが酔うのって新鮮ね、普段そんな言葉言わないのに。まあ、さっきマティーニを一気に半分流し込んだもんね、そりゃ酔うわよ。」

 酔ってる?

 半分飲んだって言っても、あのちっちゃい三角なグラスで半分なのに――。

 まあ、でもうん、気分はいいわね、うふふ。

 マキちゃん、かわいい。

「まあいいわ、童貞を殺すセーターじゃなくて、胸開きタートルネックね。こういう攻めたファッションする時って、やっぱり怖いのは周りの反応でしょ?」

 そうね、確かにそう。

 だから私は、相変わらず肌は出さない、外では極力。

 胸元開けるにも、そもそも胸ないし。

 似合ってなかったら、怖いし。

「でも、その反応を私は直接聞くことができるのよ。魔法のおかげで、掛け値なしに。」

 あ、なるほ…、…え――なんかズルくない?

 なにその、世界中の女子を敵に回しそうな魔法!

「だからこの服も、友達とその場のノリで買ったものだけど、皆の反応が良好だったから着続けてるのよ。もちろん初めて見る人は最初驚くけどね。でも最終的には悪くないって、むしろ似合ってるって思ってくれるてるから。ま、だからと言って、毎日こんな服着てるわけじゃないけどね。つぐみとここに来るから、今日は特別に着てきたのよ。」

 むぅ、マキちゃんはズルい。

 そんな言い方されたら、ズルくてもズルいって言えないじゃない、マキちゃんズルい!

「めちゃくちゃ、言ってんじゃん…。」

 ――んーでも、なんというか、そう言われるとちょっとした疑問が…あーうん、せっかくだから聞いてみよう。

 えーと…、マキちゃん。

「ん?」

 前々から思ってたんだけど、マキちゃんは私と違って友達多いじゃない?

 私たちと仲良くしてくれるのはすごく嬉しいけど、どうしてそこまで仲良くしてくれるの?

 大学の友達は置いておくとしても、高校の仲いい子も沢山いるじゃない、それこそミナエちゃんとか。

 でも、ミナエちゃんは高校卒業以降、マキちゃんと会ってないって言うし。

 …高校生活の最後に現れた、ポッと出のポッと野郎みたいな私たちを、どうしてこうも目にかけてくれるの?

「おおう。今日のつぐみはグイグイくるわね。」

 酔ってるからね。

「そうね、酔ってるわね、わかりやすく…。……あー、私も酔ってるってことで白状するけど、この魔法を知っても尚、仲良くしてくれてるのが嬉しいのよ、月並みな理由だけどね。いつ心読まれるか分からない人の隣に、普通いたくないでしょ?私ならそうだもの。気持ち悪い、怖いって思うし。」

 あー。

「それが、つぐみには――ノノとナユもそうだけど、特につぐみには無いのよ。そんな友達、そうそういないわよ。それに、他の仲いい友達が皆、軒並み県外に出ちゃったってのもあるし。」

 あー、それは…まあそうなのかもだけど。

 そう言われると聞いた私も照れるわね、ちょっと酔いが覚めそうよ、――モヒート飲み干しちゃおう。

 でも納得。

 なるほど、だからマキちゃんはずっと仲良くしてくれるのね、ありがたい。

 あ、マキちゃんもマティーニ飲み干してる、顔真っ赤、ふふ。

 で、えーと…色々良いように言ってくれたけど、魔法少女仲間が増えたのが嬉しくて、その可能性に思い至らなかったってだけだと思うわ、私は。

 ノノとナユは分からないけど――、でも私と違って細かいこと気にしないタイプの二人だしね。

 二人には甘えてばっかりだわ、私。

「自分自身を魔法少女だなんて一度も思ったことないけど――でも、秘密を共有できる仲間が増えたのは私も嬉しかったわよ。だからそれも一つの要因ではあるけど――、でもやっぱり一番の理由は、つぐみとあの二人を私は結構気に入ってるのよ。」

 いつの間にか手に取ってたメニューで、ちょっと顔を隠してるマキちゃんが、可愛すぎる。

 写真とっとこ、カシャっと。

 うん、盛る必要が全くないほどかわいい。

 あ、でもこれだと胸元見えないから、後でもう一枚一緒に取ってもらおうっと。

「写真ならいくらでも映ってあげるから、その代わり後で私にもつぐみと一緒の写真撮らせなさいよ。」

 うん、了解。

「じゃあ、私はもう少し飲むとするわ。すみませーん!モヒート1つお願いします。」

 あ、マキちゃん、私も。

「あ、やっぱり2つでー。」

 ん、ありがと。

「あ、それと、つぐみ。私にしたら、つぐみはポッと出のポッと野郎じゃないわよ。中学の頃から知ってるんだもの。つぐみは忘れてたけど。」

 あー…。

 ……うん。

 その件は、まことに申し訳なかったです。


 ――とまあ、いろいろあったけど、楽しい時間だったわ。

 ふふふ。

 帰ってからノノに報告したら、だいぶ羨ましがられたくらいに楽しかった。

 3人でルームシェアする?って聞いたら、冷たくあしらわれちゃったけどね。

 『私の胸は、つぐみに毎日揉まれるためにあるんじゃないの』だって、ひどくない?

 そんなこと毎日はしないわよ、まったく。

 ――まあそれはそれとして、よ。

 えーと…あとはナユの話ね。

 ナユとマキちゃんは実は同じ大学で、私とノノとは違う学校通ってるのよ。

 だから、意外とあの二人はよく会ってるみたい――というかナユが進学してから特に親しくなったみたい。

 私は双方から、そういう報告を受けるんだけど――。

 どうもナユのマキちゃんへの態度が高校の頃と違うのよね…、そもそも最初はマキ先輩って呼んでたはずだし。

 『マキさんは、なんかこう逆らったらダメみたいな雰囲気出してるっす』とかなんとか言ってたけど、最近はマキちゃんに対する言葉遣いも堅苦しくなってない?

 ――ま、二人には二人の独特な関係があるんでしょう、聞くのは野暮ってことで、しばらく様子見ね。

 それはさておき、よ。

 またあのお店行きたいわね、私も気にいったわ。

 ノノが二十歳になったら一緒に――って言いたいところだけど、それまでは待てないから、またマキちゃん誘って一緒に行こう。

 ふふ、また胸開きタートルネック着てくれるかしら、マキちゃん。


                                      ―続―

お疲れ様でした。

マキちゃん初出、まさかこんなところで。

私もビックリです、かわいいですね。

これからも彼女を応援お願いします。

では最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

次回もお待ちしています。


是非とも評価、いいね、コメントをお寄せください。ブックマークもお願いします。

このページを下にスクロールして頂くと出来ると思います。

めんどくさいかもしれませんが、助けると思って、ひとつお願いします

すると次回は少し早く上がるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ